「広告代理店に入りたいけれど、何から始めればよいのか分からない」
「インターンやES、面接で、何が評価されているのか見えない」
「広告業界に興味はあるものの、自分に向いている職種が分からない」
広告代理店への就職を考え始めると、多くの学生がこうした不安を抱えます。
私も広告業界で長く働き、インターンで体験に訪れる学生と接してきました。また、中小の代理店に勤務しているときは面接も体験しました。
その経験から感じるのは、内定を得る学生には、学歴や華やかな経歴とは別の共通点があるということです。
それは、広告業界だけに通用する模範解答を暗記していることではありません。
内定に近づく学生は、選考が始まる前から、広告会社で働くための準備を始めています。
人や社会を観察し、自分の関心を深め、考えを言葉や企画として形にする。この積み重ねが、ESや面接で大きな差になります。
本記事では、電通、博報堂、ADK、サイバーエージェントなどの最新採用動向を踏まえ、広告代理店の内定者に共通しやすい5つの準備を、具体的な行動に落とし込んで解説します。
この記事の更新時点:2026年7月
主に2028年卒の就活生を想定しています。2027年卒でも専門職や追加募集が行われる場合があるため、各社の採用サイトを確認してください。
広告代理店の就活は、すでに夏から始まっている
政府が示す2028年3月卒業予定者の採用日程は、広報活動が2027年3月1日以降、採用選考が6月1日以降、正式な内定が10月1日以降です。
しかし、実際の準備は、その日程よりかなり早く始まっています。
2026年夏の時点で、電通や博報堂、ADK、サイバーエージェントなどは、2028年卒を対象とするインターンシップやワークショップ、採用イベントを実施しています。
| 時期 | 主な動き | 準備すること |
|---|---|---|
| 大学3年の春~夏 | サマーインターン、ワークショップ、会社説明会 | 業界研究、職種研究、ESの基礎づくり |
| 大学3年の秋~冬 | 冬インターン、早期選考、社員交流イベント | 志望企業の絞り込み、面接練習、成果物の改善 |
| 大学3年の1~3月 | 本選考エントリー、早期選考、追加プログラム | 企業別ES、志望動機、適性検査対策 |
| 大学4年の春以降 | 本選考、面接、追加募集 | 企業ごとの最終対策、選考の振り返り |
広告代理店の就活では、3月になってから会社説明会を見始めるのでは遅れる可能性があります。
インターンに参加できなかったから、本選考で不利になると決まっているわけではありません。しかし、仕事内容を理解し、自分の適性を確かめるという意味でも、早めに動く価値はあります。
現在の広告代理店は「会社名」より「職種」で選ぶ
以前の広告代理店就活では、「電通に入りたい」「博報堂に入りたい」という会社名から考える学生が多くいました。
しかし現在の広告会社には、営業やクリエイティブだけでなく、データ、AI、マーケティングサイエンス、事業開発、DX、メディア、コンテンツ、IPなど、数多くの仕事があります。
- 顧客と向き合い、プロジェクト全体を動かす仕事
- 生活者を調査し、ブランド戦略を考える仕事
- コピー、映像、デザインなどの表現を作る仕事
- 広告データを分析し、効果を改善する仕事
- AIやシステムをマーケティングに実装する仕事
- メディア、アニメ、ゲーム、スポーツなどを事業化する仕事
博報堂は複数の専門領域に分けて夏のインターンやワークショップを実施し、ADKもオープンコースとデータコースを設けています。サイバーエージェントもビジネス、エンジニア、クリエイターに分かれています。
企業研究の最初の質問は、「どの広告代理店に入りたいか」ではありません。
「広告会社の中で、どの仕事をしたいのか」です。
内定者が共通してやっていた5つのこと
1.会社ではなく「仕事」まで調べている
内定に近づく学生は、企業の知名度や広告作品だけでなく、入社後の仕事まで調べています。
「電通は大きな仕事ができる」「博報堂はクリエイティブに強い」といった業界イメージだけでは、企業研究として十分ではありません。
少なくとも、次の内容は確認しておきましょう。
- どのような職種や採用コースがあるか
- 入社後、最初に担当する可能性がある仕事
- 会社が今後伸ばそうとしている事業領域
- 若手社員が実際にどのような仕事を担当しているか
- 他社ではなく、その会社でなければならない理由
志望動機で求められるのは、企業サイトの言葉を繰り返すことではありません。
自分がやりたい仕事と、企業が持つ事業や環境が、どのようにつながっているかを説明することです。
今日からできること
志望企業を3社選び、それぞれについて「興味のある職種」「やりたい仕事」「その会社を選ぶ理由」を100字ずつ書いてみましょう。
2.街や人の行動を観察し、仮説まで考えている
広告代理店の選考では、最近気になった広告、好きな商品、注目している社会現象などを聞かれることがあります。
ここで重要なのは、有名な広告を知っていることではありません。
自分が何に注目し、なぜ気になり、そこから何を考えたのかを、自分の言葉で説明できることです。
例えば、次のような身近な変化も観察の対象になります。
- コンビニで、特定の商品だけ陳列方法が変わった
- 駅の広告で、外国人向けの表現が増えた
- 友人が検索よりもSNSや生成AIで商品を調べるようになった
- 人気店なのに、公式SNSの更新頻度は低い
- 若者に人気だったサービスを、親世代も使い始めた
観察した事実だけで終わらず、「なぜ起きたのか」「企業にどのような機会があるのか」まで考えることが重要です。
観察メモの基本形
- 何が起きていたか
- なぜ気になったか
- なぜ起きていると考えるか
- 企業や広告にどう生かせるか
毎日3件を義務にする必要はありません。週に3件でも、3か月続ければ十分な面接材料になります。
3.自分の関心を、成果物として形にしている
広告代理店の選考では、何に興味があるのかだけでなく、その関心に対して実際に何をしたのかが見られます。
「地方創生に興味があります」と話すだけの学生と、実際に商店街を歩き、店主に話を聞き、集客案を1枚の企画書にした学生では、伝わり方がまったく異なります。
成果物は、大規模なものである必要はありません。
- 好きな商品について書いた記事
- 大学周辺の店舗を調査した簡単なレポート
- 社会課題をテーマにした1枚の企画書
- SNSアカウントを運営して得た分析結果
- 架空の商品を題材にした広告プラン
- 友人や店舗へのインタビュー記事
重要なのは、完成度の高さだけではありません。
自分で問いを立て、調べ、考え、誰かに伝わる形にした経験があることです。
自分のテーマが見つからない場合
「つい調べてしまうこと」「腹が立つこと」「長時間話せること」を、それぞれ3つずつ書き出してください。その重なる部分に、自分らしいテーマが見つかることがあります。
4.インターンや社員との対話を「適性確認」に使っている
インターンやOB・OG訪問は、企業の内部情報を集めるだけの場ではありません。
自分がその会社や仕事に合うかを確かめ、志望動機を具体化するための機会です。
現在は、採用直結型インターン、オンライン説明会、社員座談会、動画による職種紹介など、社員を知る方法が増えています。大学のOB・OGが見つからない場合でも、公式イベントや採用コンテンツを活用できます。
社員と話す際は、企業サイトに書かれている内容をそのまま質問するのではなく、実際の仕事に踏み込んで聞きます。
- 入社1~3年目は、どこまで仕事を任されるのか
- 成果を出している若手に共通する特徴は何か
- 入社前のイメージと実際の仕事で違ったことは何か
- 現在、会社が力を入れている領域は何か
- その職種で身につく専門性は何か
社員に会った人数が多ければ内定に近づくわけではありません。
重要なのは、対話を通じて、自分の企業理解や志望理由がどのように変わったかを言語化することです。
5.ESと面接を一度で完成させず、改善している
内定者も、最初から完成度の高いESを書き、すべての面接に通過しているわけではありません。
違いが生まれるのは、不合格や回答に詰まった経験を、次の選考に反映しているかどうかです。
選考後は、次の内容を記録しておきましょう。
- 聞かれた質問
- うまく答えられなかった質問
- 相手の反応がよかった話
- 説明が長くなった部分
- 次回までに調べ直す内容
広告代理店の面接では、用意した答えを正確に読み上げることよりも、質問に応じて考え、自分の言葉で会話できることが重要です。
生成AIでESを書いてもよいのか
現在の就活では、ChatGPTなどの生成AIを使って、企業研究やES作成を進める学生も増えています。
生成AIを使うこと自体を、すべて否定する必要はありません。
例えば、次のような使い方は有効です。
- 企業研究で確認すべき項目を整理する
- 自分の経験を掘り下げる質問を出してもらう
- 文章の分かりにくい部分を指摘してもらう
- 指定字数まで短くする案を出してもらう
- 面接官役として追加質問を出してもらう
問題になるのは、AIが作った文章を、自分の経験や考えを確認せず、そのまま提出することです。
文章だけが整っていても、面接で詳しく聞かれたときに、自分の言葉で説明できなければ、ESと本人の間に不自然な差が生まれます。
生成AIは、答えを作らせるためではなく、自分の考えを深め、伝わる形に整えるために使うのが基本です。
広告代理店のESでよくある4つの失敗
「人を笑顔にしたい」で終わっている
「人を笑顔にしたい」「世の中に影響を与えたい」という言葉だけでは、本人の経験や関心が伝わりません。
なぜそう思ったのか、誰にどのような変化を起こしたいのかまで具体化する必要があります。
有名な広告作品の感想だけを書いている
広告を見て感動した経験は、志望の入口としては使えます。
しかし、「自分も人を感動させたい」で終わると、広告会社で何をしたいのかが見えません。
その広告の何が人を動かしたのか、自分ならどのような課題を解決したいのかまで考えましょう。
企業を褒めるだけの志望動機になっている
企業理念や広告事例を褒めても、企業側はすでに知っています。
志望動機では、企業の特徴と自分の経験や将来像を結びつける必要があります。
一つの成功体験を大きく見せすぎている
派手な実績がなければ広告代理店に入れないわけではありません。
重要なのは、経験の規模よりも、その状況で何を考え、どう行動し、何を学んだのかです。
小さな経験でも、本人にしか話せない具体性があれば、十分に強いエピソードになります。
電通・博報堂・ADK・サイバーエージェントの対策の違い
| 会社 | 研究すべき点 | 準備の方向性 |
|---|---|---|
| 電通 | 広告以外の事業変革、メディア、コンテンツ、BX・DXまで扱う総合力 | 社会や企業の課題を大きな構想に変える力を示す |
| 博報堂 | 生活者発想、チームのクリエイティビティ、専門領域別の仕事 | 人への観察と、自分なりの視点を深く語る |
| ADK | ファングロース、IP、データ活用、コース別採用 | データとアイデアを結び、実行まで考える |
| サイバーエージェント | 広告、メディア、ゲーム、AI、DX、自社事業 | 自ら動いた経験、数字への意識、事業を作る姿勢を示す |
同じエピソードを、会社名だけ変えて提出しても、説得力のある志望動機にはなりません。
企業ごとの事業や採用コースを理解し、自分の経験のどの部分が、その会社の仕事につながるのかを考える必要があります。
今から始める30日間の就活準備
| 期間 | 取り組むこと |
|---|---|
| 1~7日目 | 広告会社の職種を調べ、興味のある仕事を3つ選ぶ |
| 8~14日目 | 毎日の観察メモを始め、自分の関心テーマを3つに絞る |
| 15~21日目 | テーマを基に、記事・調査・企画書のいずれかを一つ作る |
| 22~26日目 | 志望企業3社について、職種と志望理由を文章にする |
| 27~30日目 | 模擬面接を行い、回答を録音して改善する |
30日ですべてが完成するわけではありません。
しかし、この1か月を経験すれば、企業サイトを眺めているだけの状態から、自分の考えを持って選考に臨める状態へ進めます。
まとめ|就活を始めた時点から、広告の仕事は始まっている
広告代理店の選考には、一つの模範解答があるわけではありません。
企業によって事業も職種も異なり、求められる強みも変わります。
それでも、内定に近づく学生には、次の共通点があります。
- 会社名ではなく、仕事や職種まで調べている
- 街や人を観察し、自分なりの仮説を持っている
- 関心を文章や企画などの成果物にしている
- インターンや社員との対話で適性を確かめている
- ESや面接を振り返り、改善を続けている
これらは、選考を通過するためだけの技術ではありません。
人や社会を観察し、課題を見つけ、考えを形にし、相手に伝え、反応を見て改善する。これは、広告代理店に入社した後も続く仕事そのものです。
広告代理店の就活は、広告業界に入るための試験ではありません。
自分が何に関心を持ち、誰にどのような変化を起こしたいのかを、初めて仕事として考える機会です。

