広告代理店のランキングを調べようとすると、少し分かりにくい時代になりました。
昔は、もっと単純でした。
「売上高が大きい会社はどこか」 「広告取扱高が多い会社はどこか」 「電通、博報堂、ADKの順位はどうなっているのか」
このように見れば、広告代理店の勢力図はある程度つかめました。
しかし2026年現在、広告代理店のランキングは、単純な売上高だけでは判断しにくくなっています。
理由は大きく2つあります。
ひとつは、各社が公表している数字の基準が違うこと。
もうひとつは、広告代理店の仕事そのものが、昔の「広告枠を仕入れて売る仕事」から、デジタル広告、データ活用、AI、マーケティング支援、事業支援へ広がっていることです。
この記事では、できるだけ難しい会計用語を使わずに、2026年時点の広告代理店ランキングと、業界地図の変化を分かりやすく整理します。
まず知っておきたい「売上高」と「収益」の違い
広告代理店の数字を見るときに、最初に知っておきたいことがあります。
それは、「売上高」と「収益」は、同じ意味ではないということです。
たとえば、広告主が広告代理店に100万円の広告費を預けたとします。
そのうち80万円をテレビ局、新聞社、Web媒体、SNS広告などの媒体費として支払い、代理店に20万円が残るとします。
この場合、見方は大きく2つあります。
| 見方 | 金額のイメージ | 意味 |
|---|---|---|
| 広告取扱高・従来型の売上高に近い考え方 | 100万円 | 広告主から預かった広告費全体 |
| 収益・売上総利益に近い考え方 | 20万円 | 代理店に実際に残る取り分に近い数字 |
つまり、広告代理店の数字には、「広告主が支払った総額に近い数字」と、「代理店に残るお金に近い数字」があります。
ここを混同すると、ランキングの見方を間違えてしまいます。
特に現在は、会計基準の変更や各社の事業構造の違いにより、昔のように「売上高だけ」を並べても、実態を正しく比較できなくなっています。
2026年版 主要広告関連企業の業界地図
まず、2026年時点で確認できる主要広告関連企業の公表数字を整理します。
| 企業名 | 主な公表数字 | 見方のポイント |
|---|---|---|
| 電通グループ | 収益 約1兆4,352億円 | IFRSベース。グローバル事業を含む広告・マーケティンググループの収益 |
| 博報堂DYホールディングス | 売上高 約1兆6,131億円/収益 約9,533億円 | 売上高と収益を併記。国内に強い総合広告グループ |
| サイバーエージェント | 連結売上高 約8,740億円/インターネット広告事業 約4,612億円 | 広告以外にメディア・ゲーム事業も含む |
| ADKホールディングス | 非上場のため詳細比較が難しい | かつての国内3位。現在は同条件での比較が困難 |
ここで大事なのは、この表を単純な「売上高順位」として見ないことです。
電通グループの「収益」と、博報堂DYの「売上高」は、同じ物差しではありません。
また、サイバーエージェントの連結売上高には、広告事業だけでなく、メディア事業やゲーム事業も含まれます。
そのためこの記事では、厳密な売上高ランキングというより、広告業界の主要プレイヤーを比較するための業界地図として整理します(時代的にこの方法しかできなくなりました)。
電通グループは2025年12月期に収益約1兆4,352億円を公表しています。
一方、博報堂DYホールディングスは2025年3月期に売上高約1兆6,131億円、収益約9,533億円を公表しています。
サイバーエージェントは2025年9月期に連結売上高約8,740億円を公表し、インターネット広告事業の売上高は約4,612億円となっています。
電通グループ|規模は大きいが、数字の見方に注意
電通グループは、今も日本を代表する広告・マーケティンググループです。
テレビ、デジタル、イベント、スポーツ、コンテンツ、データ、DX支援など、広告主の幅広い課題に対応できる総合力があります。
ただし、電通グループの数字を見るときは注意が必要です。
現在の電通グループは、国際会計基準であるIFRSを採用しており、従来の広告取扱高に近い「売上高」ではなく、「収益」を中心に開示しています。
そのため、電通の収益1兆4,352億円を見て、単純に「広告取扱高は何兆円規模」と逆算する考え方は、現在の電通の事業実態には合いません。
この「収益」は、昔ながらの広告代理店手数料だけを表している数字ではなく、グローバル全体のさまざまなマーケティングサービスを含んだ会計上の数字だからです。
つまり、電通の数字は、単純な広告枠販売のマージンで逆算するものではありません。
電通の収益は、「広告主から預かった広告費全体」ではなく、電通グループが事業として計上している収益規模を示す数字である。
この違いを押さえておくことが重要です。
博報堂DY|売上高と収益を両方見る必要がある
博報堂DYホールディングスも、国内広告業界を代表する総合広告グループです。
博報堂、Hakuhodo DY ONEなどをグループに持ち、マスメディア、デジタル、データ、クリエイティブを横断した提案力を持っています(※2025年4月に大規模なグループ再編を実施。博報堂DYメディアパートナーズが博報堂に統合され、DACとアイレップは「Hakuhodo DY ONE」として統合されました)。
博報堂DYの場合は、売上高と収益の両方が開示されています。
2025年3月期では、売上高が約1兆6,131億円、収益が約9,533億円です。
ここだけを見ると、「売上高に対して収益が大きすぎるのではないか」と感じる読者もいるかもしれません。
しかし、これも単純な代理店マージン率として見るべきではありません。
現在の広告会社の収益には、媒体手数料だけでなく、クリエイティブ制作、マーケティング支援、データ活用、デジタル運用、コンサルティング的なサービスなど、さまざまな収益が含まれます。
そのため、昔ながらの「媒体費に対する15%、20%の手数料」という感覚だけで見ると、実態とズレてしまうのです。
サイバーエージェント|ネット広告時代の代表企業
サイバーエージェントは、2026年の広告業界を語るうえで欠かせない存在です。
同社は広告代理店専業ではありません。ABEMAなどのメディア事業、ゲーム事業も展開しています。
そのため、連結売上高8,740億円をそのまま「広告代理店としての売上高」と見ることはできません。
ただし、インターネット広告事業だけでも4,612億円規模があり、国内のネット広告市場における存在感は非常に大きいといえます。
サイバーエージェントの強みは、運用型広告、AI活用、データ分析、クリエイティブ改善を高速で回せる点です。
かつて広告代理店ランキングといえば、電通、博報堂、ADKという並びが中心でした。
しかし現在は、ネット広告の成長によって、サイバーエージェントのようなデジタルに強い企業が、広告業界の中心プレイヤーになっています。
ADKがランキングで見えにくくなった理由
ADKは、かつて電通、博報堂に続く国内3位の広告代理店として知られていました。
しかし現在は非上場企業のため、電通グループ、博報堂DYホールディングス、サイバーエージェントのように、最新の詳細な決算情報を同じ条件で比較することが難しくなっています。
もちろん、ADKが広告業界で存在感を失ったという意味ではありません。
アニメ、IP、コンテンツ、ブランドコミュニケーションなど、現在も強みを持つ領域があります。
ただし、ランキング記事として扱う場合は、上場企業と同じ土俵で数字を並べるのは難しくなりました。
なぜ昔のような売上高ランキングが難しくなったのか
昔の広告代理店ランキングは、広告取扱高や売上高を見れば、ある程度分かりやすく順位をつけることができました。
しかし現在は、次のような理由で単純比較が難しくなっています。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 会計基準が違う | 電通はIFRS、他社は日本基準など、数字の出し方が違う |
| 売上高と収益の意味が違う | 広告費全体なのか、代理店に残る収益なのかが異なる |
| 事業内容が広がった | 広告枠販売だけでなく、制作、データ、DX、AI支援などが含まれる |
| 非上場企業がある | ADKのように詳細な数字が見えにくい会社もある |
| デジタル企業が台頭した | サイバーエージェントのように広告以外の事業も持つ企業が増えた |
つまり、現在の広告代理店ランキングは、「売上高が一番大きい会社はどこか」だけではなく、「どの数字を見ているのか」まで確認しないと正しく読めないのです。
ネット広告が過半数を超えた意味
広告代理店ランキングが分かりにくくなった背景には、広告市場そのものの変化もあります。
電通の「2025年 日本の広告費」によると、2025年の日本の総広告費は8兆623億円。そのうちインターネット広告費は4兆459億円となり、総広告費に占める構成比は50.2%に達しました。インターネット広告費が総広告費の過半数を超えたのは初めてです。
これは、広告業界にとって非常に大きな転換点です。
テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったマスメディアが不要になったわけではありません。
しかし、広告費の中心がインターネット広告へ移ったことで、広告代理店に求められる役割は明らかに変わりました。
広告枠を仕入れて売るだけではなく、データを読み、広告効果を改善し、動画やSNSを活用し、AIも使いながら、広告主の売上や事業成長に貢献する力が求められています。
まとめ|これからのランキングは「売上高」だけでは読めない
2026年の広告代理店ランキングを見るときは、昔のように売上高だけを並べるのでは不十分です。
- 電通グループは「収益」を中心に開示しています。
- 博報堂DYホールディングスは「売上高」と「収益」を併記しています。
- サイバーエージェントは広告事業以外も含む連結売上高を公表しています。
- ADKは非上場のため、同じ条件での比較が難しくなっています。
つまり、現在の広告代理店ランキングは、単純な売上高順位ではなく、各社の数字の意味を理解したうえで見る必要があります。
その意味で、この記事の結論は下記のようになります。
昔のように、売上高だけで広告代理店ランキングを作る時代は終わりつつあります。
これから重要なのは、売上高、収益、売上総利益、事業領域、デジタル対応力、AI活用力、広告主への支援力を総合的に見ることです。
広告代理店の勢力図は、かつての「電通・博報堂・ADK」という分かりやすい構図から、総合代理店、デジタル企業、メディア企業、コンサルティング企業が入り混じる時代へ変わっています。
ランキングは、単なる順位表ではありません。
今の広告業界がどこへ向かっているのかを読み解くための、ひとつの地図として考える時代になったのです。
関連記事
過去から現在までの広告業界の変遷をたどると、今のランキングの意味がよりはっきり見えてきます。
出典・参考データ
- 電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日発表)
- 株式会社電通グループ 2025年12月期 決算短信(2026年2月13日発表)
- 株式会社博報堂DYホールディングス 2025年3月期 決算短信(2025年5月13日発表)
- 株式会社サイバーエージェント 2025年9月期 決算短信(2025年11月14日発表)
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