【業界地図の再編】広告代理店売上ランキング2024年版!10年で何が変わった?

広告費・市場データ

広告業界は、常に変化し続けるダイナミックな世界です。

2015年から2024年に掛けての10年間で、その変化のスピードはさらに加速しました。

この記事では、日本の主要広告代理店の売上高ランキングを、【2023~2024年の最新版】と、10年前の【2015年版】で比較しながら、業界のトレンドと未来の展望を考えていきます。

  • 「どんな会社が成長し、どんな会社が姿を変えたのか?」
  • 「この10年で広告業界はどこへ向かったのか?」

これらの疑問を考えることで、「今の広告業界」を深く理解することができるようになります。

 

最新!2023~2024年度 広告代理店売上高ランキング

まずは、現在の広告代理店のランキング(上位20位)を見てみましょう。

順位 会社名 売上高(億円) 決算期 備考
1 電通グループ 13,045 2023年12月期 IFRS収益(媒体費含む総売上高)
2 博報堂DYホールディングス 9,467 2024年3月期 IFRS収益(媒体費含む総売上高)
3 サイバーエージェント 7,202 2023年9月期 連結売上高(インターネット広告中心)
4 トランスコスモス 3,738 2023年3月期 連結売上高
5 ADKホールディングス 3,528 2017年12月期 推定値・グループ連結売上高(旧データ)
6 セプテーニ・ホールディングス 1,697 2023年12月期 連結売上高
7 ジェイアール東日本企画(jeki) 1,186 2023年3月期 売上収益
8 東急エージェンシー 1,023 2023年3月期 売上収益
9 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) 985 2022~2023年 売上高
10 大広 741 2023年3月期 売上収益
11 Adways 590 2023年12月期 連結売上高
12 読売広告社 495 2023年3月期 売上収益
13 Macbee Planet 394 2024年4月期 売上高
14 日本経済社 354 2023年度 売上高
15 ValueCommerce 293 2023年12月期 売上高
16 CARTA HOLDINGS 241 2023年12月期 売上高
17 デジタルホールディングス 169 2023年12月期 売上高
18 GMOアドパートナーズ 149 2023年12月期 売上高
19 サイネックス 142 2023年3月期 売上高
20 インタースペース 72 2023年9月期 売上高

 

(備考解説)
ランキングを正しく読み解くためには、各社の「売上高」の定義を理解することが不可欠です。売上の定義が様々ですので、ランキングの考え方も非常に複雑になっています。しかし、大きな意味でのランキングとしては上記内容が参考になる数値です。

  • IFRS収益(Revenue):媒体費を含む総額売上高。電通グループ、博報堂DYが採用。
  • 連結売上高:グループ全体の広告関連事業の売上高。
  • 売上収益:契約に基づく収益。媒体費を除く純収益に近い。
  • 売上高:通常の総売上高。
  • 推定値・旧データ:非上場企業などで、最新の正確な数値が取得できない場合の参考値。

特に、電通グループと博報堂DYはIFRS収益を採用しており、媒体費を含むため、実際の利益や手数料収益とは異なる点に注意が必要です。

 

10年前の広告業界は?2015年当時のランキング

では、タイムスリップして2015年のランキングを見てみましょう。10年前の広告業界はどんな顔ぶれだったのでしょうか?

順位 会社名 売上高(億円) 備考
1 電通 15,351 総合広告代理店
2 博報堂 6,587 総合広告代理店
3 アサツー・デイ・ケイ(ADK) 3,520 総合広告代理店
4 サイバーエージェント 1,421 デジタルエージェンシー
5 大広 1,400 総合広告代理店
6 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) 1,174 デジタルエージェンシー
7 ジェイアール東日本企画(jeki) 1,052 交通系ハウスエージェンシー
8 東急エージェンシー 954 交通系ハウスエージェンシー
9 読売広告社 716 総合広告代理店
10 オプト 640 デジタルエージェンシー
11 セプテーニ 612 デジタルエージェンシー
12 アイレップ 580 デジタルエージェンシー
13 デルフィス 537 トヨタ系ハウスエージェンシー
14 電通東日本 471 電通子会社
15 クオラス 420 フジサンケイグループ
16 電通九州 410 電通子会社
17 朝日広告社 397 朝日新聞ハウスエージェンシー
18 日本経済社 364 日本経済新聞ハウスエージェンシー
19 日本経済広告社 315 日本経済新聞ハウスエージェンシー
20 フロンテッジ 294 ソニー系ハウスエージェンシー

 

この10年で広告業界に何が起きた?3つの大きな変化と未来

この10年間のランキングを見比べると、広告業界がどんな方向に進んできたのか、そしてこれからどこへ向かうのかが見えてきます。

1. デジタル専業代理店が「当たり前」に!その成長が止まらない

2015年にもサイバーエージェントやDAC、オプト、セプテーニといったデジタル専業の会社はランクインしていましたが、2023~2024年版ではその存在感が圧倒的に増しています。

サイバーエージェントが3位に食い込み、Adways、Macbee Planet、ValueCommerce、CARTA HOLDINGSなど、デジタルを主戦場とする新しい会社が続々とランキング入りしています。

 

この変化は、広告費がテレビや新聞などのマス媒体から、インターネット広告へと大きくシフトしたことをはっきりと示しています。

YouTubeやTikTok、InstagramなどのSNS、様々なウェブサイトやアプリ。広告を出せる場所が爆発的に増え、それに伴い、データ分析やテクノロジーを駆使して広告を最適化できるデジタル専業のニーズがさらに高まっています

将来、広告業界を目指すなら、デジタルマーケティングの知識やスキルは必須中の必須と言えるでしょう。単に広告を作るだけでなく、データを読み解き、効果を最大化する戦略を立てる力が求められます。

 

2. 伝統的総合代理店やハウスエージェンシーの「構造変化」と「専門性重視」の時代へ

2015年のランキングには、新聞社系や鉄道系、メーカー系など、特定の企業グループの広告を主に扱う「ハウスエージェンシー」が多く見られましたが、2023年版ではその多くがランク外になるか、順位を大きく下げています。

そして、特に注目すべきは、2015年には4位が定位置だった大手総合広告代理店である大広が、2023~2024年版では10位まで順位を落としている点です。これは、デジタル化の波と広告市場の構造変化が、既存の総合代理店にも大きな影響を与えていることを明確に示唆しています。

 

この変化は、広告活動がより専門的で複雑になったことを意味します。もはや単に広告枠を買い付けたり、社内だけで広告のすべてを完結させたりするのが難しくなっているんです。これからの広告業界は、特定の分野に特化した深い専門知識や、デジタル時代の新しい手法を柔軟に取り入れられるかが問われます。

伝統的な総合代理店やハウスエージェンシーも、これからは特定の領域での強みを活かしつつ、外部の専門家と連携したり、自らデジタル対応力を高めたりする変革と再構築が求められます。

 

3. 大手総合代理店は「広告会社」から「ビジネスパートナー」へ進化

電通グループと博報堂DYホールディングスは、10年経っても変わらず業界のトップ2に君臨しています。しかし、その中身は大きく変化しています。電通の売上高が数字上は減少しているように見えても、これは会計基準の変更や海外事業の拡大、そして事業領域の多様化が背景にあります。

大手総合代理店は、もはや単に「広告枠を売る」会社ではありません。クライアント企業のビジネス課題そのものを解決するためのコンサルティング、膨大なデータの分析、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援など、より幅広いサービスを提供する「ビジネスパートナー」へと進化しています。

グローバル展開も加速しており、日本国内だけでなく、世界を舞台に活躍するチャンスも広がっています。将来、大手総合代理店で働きたいなら、広告の知識に加え、経営視点やデータ分析力、そして語学力といった多様なスキルを磨くことが重要になるでしょう。

 

まとめ:未来の広告業界はどうなるのか?

この10年間の変化から見えてくるのは、広告業界が「デジタル化」「専門化」「グローバル化」という3つの大きな波に乗っているということです。もはや「広告=テレビCM」という時代ではありません。

デジタルマーケティングの知識はもちろん、データ活用力、専門領域での深い知識、そしてグローバルな視野が欠かせない時代が、すでに到来していると言えます。

もし、あなたが、これから広告業界を目指すのであれば、「広告を作ること」だけをゴールにせず、
「どうすれば広告がビジネス成果につながるか?」
「どんな価値を世の中に届けるべきか?」
を常に考えなければいけないでしょう。

未来の広告業界は、変化のスピードがさらに加速します。これからはAIとの共存も必須です。
だからこそ、この記事で得た“視野”をヒントに、
「今、どんなスキルを磨くべきか?」
「自分はどんなキャリアを描きたいのか?」
を考えることが、あなたのキャリアの第一歩になるはずです。

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