中国に「借金」という概念はあるのか?統計もお金も国家が動かす国の怖さ【コラム】

コラム

中国にとって、借金とは何なのでしょうか。

日本では、国債が増えると「国の借金が大変だ」と言われます。

では、中国はどうでしょうか。

不動産は冷え込み、地方政府の債務は膨らみ、若者の雇用も不安定になっている。

それでも中国は、公式統計上では成長を続けているように見えます。

ここに、多くの人が感じる違和感があります。

統計を国家が握っている。銀行も国家が動かせる。地方政府も国有企業も国家の影響下にある。資本移動も制限できる。

そういう国では、「借金が増えたから危ない」という日本や欧米の感覚が、そのまま通用しないのではないか。

極端に言えば、お金を刷り、銀行に貸させ、統計を整えれば、しばらくは問題が見えないようにできるのではないか。

この記事では、中国にとって借金とは何なのかを、統計、国債、地方政府債務、不動産、国有銀行、国家管理経済という視点から整理してみます。

中国では、借金の見え方そのものが違う

日本で国債が増えると、「政府の借金が増えている」と説明されます。

もちろん、中国にも国債はあります。

しかし、中国の債務問題は、中央政府の国債だけを見ても分かりません。

地方政府、国有企業、国有銀行、不動産会社、地方政府の関連会社。

借金のようなものが、さまざまな場所に分散しています。

しかも、それを国家が動かす金融システムの中で処理しようとします。

だから、中国では「国債がいくら増えたか」だけでは、借金の本当の姿が見えにくいのです。

日本の国債問題が「見える借金」だとすれば、中国の債務問題は「見えにくい借金」だと言えます。

統計は、現実よりも中央の目標に近づく

中国経済を見るうえで、最も分かりにくいのが統計です。

中国の公式統計を、すべて虚偽だと断定するのは言い過ぎかもしれません。

しかし、日本や欧米の統計と同じ感覚で受け止めるのは危険だと思います。

中国では、毎年、中央が経済成長率などの目標を掲げます。

日本でいう年度初めのようなタイミングで、「今年はこの程度の成長を目指す」という方向性が示されます。

すると、地方政府や関係部門には、その目標に沿った結果を出そうとする圧力がかかります。

本来、統計は現実を映すものです。

しかし、中国では、現実が統計になるというより、中央の目標に近づくように統計が整えられていくように見えます。

コロナ期の感染者数や死亡者数についても、公式発表と生活実感や海外の見方に大きな差があるように感じた人は多いはずです。

若年失業率のように、都合の悪い数字が出ると、発表の仕方そのものが変わることもあります。

つまり、中国の統計は「数字がいくつか」だけでなく、「その数字を誰が、何のために出しているのか」まで見ないと危ういのです。

お金を刷るより怖い、国家管理型の信用膨張

中国やロシアのような国を見ると、「国債発行というより、ただ紙幣を刷っているだけではないか」と感じるかもしれません。

生活者目線では、その感覚はかなり自然です。

ただ、厳密には、単純に中央銀行が紙幣を刷っているというより、国家が金融システム全体を使って信用を膨らませていると見る方が近いです。

政府が債務を増やす。

地方政府が投資をする。

国有銀行が融資をする。

中央銀行が流動性を供給する。

統計上は投資や成長として表れる。

こうして、実体経済が本当に強くなっているかどうかとは別に、お金と信用が膨らんでいきます。

これは、紙幣印刷より分かりにくく、ある意味ではもっと怖い仕組みです。

地方政府と不動産に、借金の痛みが隠れている

中国経済の借金を見るうえで、不動産と地方政府は外せません。

中国では長い間、不動産開発とインフラ投資が成長を支えてきました。

住宅を建てる。

道路を作る。

鉄道を延ばす。

新しい街を作る。

こうした投資によって、建設業、鉄鋼、セメント、金融、地方政府の収入が動きました。

しかし、不動産が売れなくなると、この流れが止まります。

不動産会社の資金繰りが悪化する。

土地収入が減る。

地方政府の財政が苦しくなる。

銀行の不良債権リスクが高まる。

不動産不況は、単なる住宅価格の問題ではありません。中国の成長モデルそのものに関わる問題です。

中国は、危機を先送りできる国でもある

では、なぜ中国はここまで借金や不動産問題を抱えても、すぐに危機にならないのでしょうか。

理由は、国家が国内金融を強く管理できるからです。

国有銀行を動かせる。

地方政府を動かせる。

資本移動を制限できる。

国内の資金を国内に閉じ込めやすい。

これは、自由な市場で信用されている強さとは違います。

国家が金融システムを囲い込み、痛みを表に出しにくくしている強さです。

それでも中国を無視できない理不尽さ

統計に疑問がある。

地方政府の債務も見えにくい。

不動産問題も深刻です。

それでも、中国は大国として扱われます。

これは、非常に理不尽に見えます。

しかし、中国は世界経済への影響が大きすぎます。

製造業、輸出、人口、軍事力、サプライチェーン、資源需要。

どれを見ても、世界は中国を無視できません。

つまり各国は、中国の数字を完全には信用できなくても、中国を無視することもできないのです。

借金の痛みは、消えたのではなく隠れている

中国は、借金がない国ではありません。

むしろ、地方政府、不動産、国有企業、銀行の中に、大きな借金や不良資産が隠れている国です。

ただし、中国はその痛みを見えにくくできます。

統計を管理できる。

銀行を動かせる。

地方政府を動かせる。

資本移動を制限できる。

お金の流れを国内に閉じ込めることができる。

だから、中国では「借金が増えたらすぐ危機になる」という普通の市場経済の感覚が、そのまま当てはまりません。

しかし、問題が消えているわけではありません。不動産不況、地方政府債務、若年失業、消費低迷という形で、少しずつ表に出てきます。

まとめ:中国は借金がない国ではなく、借金を見えにくくできる国

中国に「借金」という概念はあるのか。

もちろん、借金はあります。

国債もあり、地方政府債務もあり、不動産会社の債務もあり、銀行の不良債権リスクもあります。

ただし、中国では、その借金の見え方が日本や欧米とは違います。

統計を管理できる。銀行を動かせる。地方政府を動かせる。資本移動を制限できる。国内のお金の流れを国家が強く管理できる。

だから中国では、借金の痛みを見えにくくすることができます。

極端に言えば、国家が数字を整え、お金を回し続ける限り、危機は表に出にくいのです。

しかし、それは借金が消えたという意味ではありません。

痛みは、不動産不況、地方政府債務、若年失業、消費低迷、銀行リスクという形で、少しずつ表に出てきます。

中国は、借金しても平気な国ではありません。借金の痛みを、国家の力で長い間見えにくくしてきた国なのだと思います。

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※この記事は、中国経済、国債、地方政府債務、不動産不況、国家管理経済に関する一般的な情報を生活者向けに整理したコラムです。中国の統計、債務残高、景気指標、政策対応は時期によって変わります。最新情報は、国際機関、各国政府、信頼できる報道機関などの情報をご確認ください。

広田 誠一