食料品の消費税1%で飲食店はどうなる?外食10%のままなら何が起きるのか【2026年】

食料品の消費税1%で飲食店はどうなる?外食10%のまま起きること コラム

食料品の消費税が下がれば、家計にとっては負担軽減になります。

しかし、飲食店にとっても同じように「減税=追い風」となるのでしょうか。

政府は2026年8月、2027年4月1日から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品の消費税率を1%に引き下げる基本方針を決定しました。

一方、現在の制度を前提とすれば、店内での外食、酒類、ケータリングなどは軽減税率の対象ではありません。

つまり、スーパーなどで食品を買えば1%、飲食店で食べれば10%という、これまで以上に大きな税率差が生まれる可能性があります。

しかも、2026年上半期の飲食店倒産はすでに過去最多です。

食料品減税は家計を助ける一方で、外食産業には別の問題を生む可能性があります。

※2026年8月28日時点
飲食料品の消費税率1%への引き下げは政府の基本方針として決定されていますが、この記事執筆時点では関連法案の成立前です。今後の国会審議や制度設計によって内容が変更される可能性があります。

食料品1%になっても、外食は10%のまま

現在、消費税の標準税率は10%、軽減税率は8%です。

8%が適用されるのは、酒類を除く飲食料品などです。

一方、飲食店での店内飲食は「外食」とされ、10%が適用されています。

政府の基本方針では、2027年4月1日から2年間、現在軽減税率の対象になっている飲食料品の税率を1%とすることになっています。

現行の対象区分を前提にすると、次のようになります。

購入・利用方法 現在 2027年4月以降の方針
スーパーなどで購入する飲食料品 8% 1%
飲食店の店内飲食 10% 10%
テイクアウト 8% 1%
酒類 10% 10%
ケータリング(指定場所で調理・給仕などを行うサービス) 10% 10%

これまで、家庭で食べる食品と外食との税率差は2ポイントでした。

それが1%と10%、9ポイントの差になります。

もちろん、スーパーで買う食品と飲食店の料理は同じ商品ではありません。

飲食店には、調理、接客、場所、サービスという価値があります。

それでも、物価高で家計が厳しいときに、内食と外食の税負担の差が大きくなれば、「今日は外で食べずに家で済ませよう」と考える人が増える可能性はあります。

帝国データバンクも、食料品の消費税率引き下げが実施された場合、外食の相対的な割高感による顧客離れを懸念しています。

「食材が1%になるから飲食店も助かる」とは限らない

ここで、少し分かりにくいのが飲食店の仕入れです。

食料品の消費税が8%から1%になるなら、「飲食店も食材を安く仕入れられるので、その分だけ利益が増えるのではないか」と思うかもしれません。

しかし、本則課税の課税事業者では、それほど単純ではありません。

消費税は基本的に、売上時に受け取った消費税額から、仕入れ時に支払った消費税額を差し引いて納税します。これが仕入税額控除です。

例えば、税抜1,000円の食材を仕入れるケースを単純化して考えてみます。

税率8% 税率1%
税抜食材価格 1,000円 1,000円
支払額 1,080円 1,010円
仕入税額控除の対象となる税額 80円 10円

店が仕入先へ支払う金額だけを見れば70円減ります。

しかし、その分だけ仕入税額控除の対象となる消費税額も70円減ります。

税抜の食材価格が1,000円のままなら、食料品の税率が下がった70円が、そのまま飲食店の利益になるわけではありません。

なお、実際の影響は本則課税、簡易課税、免税事業者など事業者の課税方式によって異なります。

ここでは仕組みを分かりやすくするため、本則課税で仕入税額を控除できるケースを単純化して説明しています。

飲食店はすでに「倒産過去最多」の状態にある

今回の減税を考えるうえで重要なのは、飲食店の経営環境がすでに厳しいという点です。

帝国データバンクによると、2026年上半期の飲食店倒産は473件でした。

前年同期の458件を上回り、上半期として過去最多です。

さらに、473件のうち負債5,000万円未満の小規模倒産が369件。全体の78%を占めています。

大企業よりも、街にある中小・零細の飲食店が厳しい状況に置かれていることが分かります。

原因は一つではありません。

  • 食材価格の上昇
  • 電気・ガスなど光熱費の上昇
  • 人件費の上昇
  • 人手不足
  • 家賃など固定費の負担
  • 価格転嫁の難しさ

大手チェーンであれば、大量仕入れや店舗運営の効率化によってコストを抑えることもできます。

しかし、小規模店では同じことができません。

原価が上がっても、周囲の競合店を考えると簡単には値上げできない。値上げをすれば客数が減るかもしれない。

こうした状況の中で、さらに「家で食べる食品は1%、店で食べれば10%」という差が生まれることになります。

居酒屋にはさらに別の問題がある

特に注意したいのが、居酒屋など酒類の売上が重要な業態です。

酒類は現在も軽減税率の対象ではなく、今回の政府方針でも1%への引き下げ対象にはなっていません。

つまり、食料品が1%になっても酒類は10%のままです。

しかも居酒屋業態は、すでに厳しい状況にあります。

帝国データバンクによると、2026年上半期の「酒場・ビヤホール」の倒産は125件で、過去最多となりました。

大口宴会や二次会需要の減少に加え、若い世代のアルコール離れなども来店客数に影響していると分析されています。

飲食店によって収益構造は異なるため、「酒は必ず料理より儲かる」と一括りにはできません。

ただ、酒類の注文が客単価や利益を支えている居酒屋などでは、飲酒機会そのものが減ることは経営に影響します。

食料品減税を考える場合、スーパーの食品価格だけでなく、こうした外食産業の構造まで見る必要があります。

政府も飲食店への影響を認識し、支援策を検討している

政府も、食料品の消費税率引き下げが外食産業に影響する可能性を認識しています。

2026年7月の総理会見では、外食産業への影響を見極めたうえで、過去の支援策も参考にしながら、資金繰りなどのための予算措置を検討する考えが示されました。

8月5日の政府方針決定後にも、外食産業を含めて影響を確認し、資金繰り支援などの予算措置を検討すると説明されています。

ただし、2026年8月28日時点では、具体的に「誰に」「いくら」「どのような条件で」支援するのかまでは決まっていません。

したがって、現時点で「飲食店に給付金が支給される」「補助金が出る」と断定することはできません。

飲食店支援をするなら「なぜ支援するのか」の説明も必要になる

外食産業への影響が大きければ、何らかの政策対応が必要になる可能性があります。

一方で、飲食店だけに大規模な給付を行う場合には、別の問題も出てきます。

飲食店以外にも、原材料費、燃料費、人件費、金利上昇などに苦しんでいる中小企業は数多くあります。

その中で特定の業種だけを税金で支援するのであれば、なぜ飲食店を対象とするのか、どこまでを対象とするのか、財源をどうするのかという説明が必要です。

コロナ禍では、営業時間短縮や休業要請に対応するため、飲食店に対して各種の協力金や支援措置が実施されました。

当時とは状況が異なりますが、再び飲食店向けの大規模支援を行うのであれば、他業種との公平性を含めて議論になる可能性があります。

政府は今回の制度に必要な財源について、特例公債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直しなど、歳出・歳入の見直しによって確保する方針を示しています。

食料品の税負担を軽くするために、別の場所でどの支出を減らすのか。

そして、その減税によって影響を受ける外食産業をさらに税金で支援するのであれば、その費用まで含めて制度全体を見る必要があります。

食料品減税で飲食店の倒産は増えるのか

現時点で、「食料品の消費税が1%になれば飲食店の倒産が増える」と断定することはできません。

消費者の可処分所得が増えれば、その一部が外食に回る可能性もあります。

インバウンド需要が強い地域や、価格以外の魅力を持つ店には別の動きも考えられます。

一方で、次の条件が重なれば、小規模な飲食店には厳しい状況になり得ます。

  • 食料品は1%、店内飲食は10%となり、税率差が2ポイントから9ポイントへ広がる
  • 食材・光熱費・人件費の上昇が続く
  • 十分な価格転嫁ができない
  • 外食頻度が低下する
  • 政府支援が一時的な資金繰り対策にとどまる

特に最後の点は重要です。

一時的に資金を供給しても、店そのものの利益構造が改善しなければ問題の先送りになる可能性があります。

ラーメン店を例に、1杯の売上から材料費、人件費、家賃などを引いたあと実際にいくら残るのかは、当サイトのラーメン屋の原価率と1杯当たりの利益を検証した記事でも詳しく計算しています。

売上ではなく、最終的にいくら利益が残るのか。

これはラーメン店だけでなく、焼肉店、町中華、居酒屋などにも共通する問題です。

まとめ|食料品1%の裏側で、外食10%をどう考えるか

食料品の消費税率を1%へ引き下げる政策は、物価高に苦しむ家庭の負担を軽減するという点では分かりやすい政策です。

しかし、外食産業から見ると話は単純ではありません。

現在の制度区分が維持されれば、家庭で購入する食品は1%、店内飲食は10%となり、税率差は9ポイントまで広がります。

食材の税率が下がるからといって、本則課税の飲食店では、その税率差がそのまま利益になるわけでもありません。

しかも、飲食店の倒産はすでに過去最多の水準です。

だからこそ政府も、外食産業に対する資金繰り支援などの予算措置を検討しています。

今後注目すべきなのは、単に「食料品の消費税が1%になるか」だけではありません。

外食10%との格差をどうするのか。飲食店支援をどこまで行うのか。その財源をどう確保するのか。そして一時的な支援で、本当に飲食店の経営は改善するのか。

食料品減税が具体化するにつれて、この問題はより大きな議論になる可能性があります。

当サイトでも、制度の詳細や飲食店向け支援策が決まり次第、内容を更新していきます。