最新版!世界の広告代理店ランキング:日本勢の存在感は?

広告費・市場データ

2024年度 世界の広告代理店TOP10(通年決算・筆者試算)

以下は、各社の2024年度通年決算データおよび主要調査機関(WFA、AdAge、Campaign、Statista等)の情報をもとに筆者が作成した試算ランキングです。

順位 企業名 本社所在地 2024年度推定売上高(円換算) 備考
1 Publicis Groupe フランス・パリ 約2兆1,000億円(約140億ユーロ) 売上高では業界最大手の地位を維持
2 Omnicom Group アメリカ・ニューヨーク 約1兆9,000億円(約145億ドル) 2024年12月にIPG買収を発表(実効は2025年予定)
3 WPP イギリス・ロンドン 約1兆8,500億円(約120億ポンド) グローバルで最大規模のネットワーク保有
4 Dentsu Group 日本・東京 約1兆6,000億円 海外売上比率 約60%(EMEA22%、北米24%、APAC14%)
5 Interpublic Group(IPG) アメリカ・ニューヨーク 約1兆4,000億円 Omnicom買収前データ(発表時点)
6 Accenture Song(旧Accenture Interactive) アイルランド・ダブリン 約1兆2,500億円 コンサル×広告の融合で急成長
7 Hakuhodo DY Holdings 日本・東京 約1兆円 海外売上比率 約25%、独自のクリエイティブ評価高い
8 Havas Group フランス・パリ 約9,000億円 Vivendi傘下、欧州市場に強み
9 BlueFocus 中国・北京 約8,000億円 中国デジタル領域に強み、海外展開も加速
10 Stagwell Inc.(旧MDC Partners) アメリカ・ニューヨーク 約7,000億円 中堅クラスながら北米で存在感

※ 為替換算:1ドル=130円、1ユーロ=150円、1ポンド=155円(2025年1月時点レートで試算) ※ 順位・金額は公表決算および推定値をもとにしており、調査機関により差異があります。

 

OmnicomによるIPG買収の概要(2024年12月発表)

Omnicom Groupは2024年12月、Interpublic Group(IPG)を約133億ドルで買収することを発表しました。取引は全株式交換方式で行われ、Omnicom株主が新会社の60.6%、IPG株主が39.4%を保有する形となります。統合後は年間約7億5,000万ドルのコストシナジーが見込まれており、実効完了は2025年後半とされています。統合後も売上規模ではPublicis Groupeが業界トップの座を維持する見込みです。

 

日本企業の存在感:電通グループと博報堂DYホールディングス

電通グループ(Dentsu Group Inc.)

  • 売上総利益の約60%は海外事業由来。日本単体は依然として高収益だが、海外が全体の課題になっています。
  • 地域別の構成は、日本40%、EMEA22%、アメリカ24%、APAC14%という形で、もはや「日本の会社」というよりグローバル企業の体格を持っています。
  • ただし近年は、海外で買収してきた事業(特に欧州・北米・APAC)で成長が鈍化し、かつての大型M&Aで積み上がった“のれん”の価値を一気に減らす減損処理が相次いでいます。2024年度末〜2025年上期にかけて北米や欧州などで巨額の減損を計上し、営業赤字・最終赤字を記録、業績の悪化がみられます。
  • その結果、国際事業(海外事業)の収益性がグループ全体のボトルネックとなり、経営サイドは「海外事業の抜本的な建て直し」を最優先テーマに掲げているようです。具体的には、組織の簡素化や人員削減、500億円規模を目安としたコスト削減計画など、海外側の固定費を圧縮して日本並みの利益率に近づけるという方針が示されているのです。
  • さらに、海外部門(旧デンツー・エイジスなど)そのものの再編・一部売却といったオプションも検討されていると報じられており、「世界で戦う巨大フルサービス代理店」というモデルを見直し、今後はより収益性の高い領域→【データ/デジタル、コンサル型ソリューション、AIを活用したメディア運用】などに経営資源を集中させる動きが強まっている。
  • まとめると、電通は「日本では依然として強い・利益が出ている」「海外は規模は大きいが、リストラ中で赤字リスク」という二層構造だと言えます。これは、日本の広告会社がグローバルM&Aで一気に拡大した後に直面しやすい“ポストM&A課題”をまさに体現していると言えるでしょう。

博報堂DYホールディングス(Hakuhodo DY Holdings)

  • 売上総利益の約25%が海外事業。電通ほど海外依存は高くない一方で、国際案件の比率は着実に拡大しています。
  • 海外展開の軸は「データドリブン×クリエイティブ」。生活者インサイトやブランドストーリーづくり(クリエイティブ)と、データ活用・顧客体験設計(CX)をセットで提供するモデルを強みにしていると思われます。
  • 規模では電通に及ばないものの、海外事業を“拡大しながら育てる”ペースで進めているようです。極端な大型買収で一気に膨らませるスタイルではなく、そのぶん、のれん減損リスクの急膨張や海外部門の大幅赤字といった下振れを抑えていることは、広告主・投資家の両方から評価されやすいポイントと言えるでしょう。
  • アジアを中心に、ブランドストーリーテリングとコンテンツ型の提案力が高く、「日本発クリエイティブ」の存在感をじわじわと国際市場で高めています。

世界の広告代理店に共通する成功要因

  1. グローバル戦略の広がり
    各社は海外展開を通じて成長を図っています。新興国や成長市場に進出する動きが活発で、買収や提携を通じて現地の企業や人材を取り込みながら市場を広げています。電通やPublicisもデジタル企業との連携を強化し、地域ごとに最適な体制づくりを進めています。
  2. デジタルとAIの活用
    広告の世界ではAIや機械学習を使った分析や配信の最適化が当たり前になりつつあります。SNS広告や動画広告、インフルエンサー施策など、デジタルを中心としたサービスが収益の柱になっています。
  3. クリエイティブとデータの融合
    データを上手に活用することで、より効果的で共感を生む広告を作り出す流れが加速しています。PublicisやAccenture、博報堂などは、クリエイティブの感性とデータ分析の両立に力を入れています。
  4. クライアントとの関係づくり
    一度のキャンペーンで終わらせず、長く寄り添うパートナーとして支援する企業が増えています。Publicisの「Power of One」モデルのように、広告からマーケティング、戦略まで一体で支援する動きが広がっています。
  5. 多様性と社会的メッセージ
    社員の多様性を尊重し、社会の価値観を反映した広告づくりを重視する傾向も強まっています。ジェンダー平等や人種の多様性、LGBTQ+をテーマにした広告も増え、企業が社会に発信するメッセージの重要性が高まっています。

 

まとめ:中小広告代理店にとっての示唆

世界の大手代理店のやり方は、すぐに真似できないように見えますが、実はヒントがたくさんあります。大切なのは「自分たちの規模に合ったやり方」で取り入れることです。

  • デジタルを少しずつ取り入れる:SNSや検索広告の運用ツール、AIを使った簡単な分析など、小さな一歩から始めましょう。大切なのは「自分たちで触って理解する」ことです。
  • お客様との距離を縮める:難しい提案書よりも、「何に困っているか」を一緒に考える姿勢が信頼につながります。丁寧なヒアリングと報告が次の仕事につながります。
  • 得意分野を磨く:全部をやろうとせず、得意な分野に集中することが強みになります。地域密着、業種特化、クリエイティブ重視など、方向を決めて伸ばしましょう。

広告業界は「大きい会社だけが勝つ」時代ではありません。中小代理店だからこそできるきめ細かい提案や、地域に寄り添うサポートが必ずあります。焦らず、自社の強みを大切に育てていくことが、これからの時代の最大の武器になります。