企業の永遠のテーマ!社内対立の正体とは?

組織改善・人材マネジメント

対立する部署VS部署!なぜ“味方”が“敵”になるのか?

本日は、多くの企業か抱える問題について考えてみましょう。

多くの企業で見られるのが、社内の部署同士の対立構造です。たとえば、営業1部と営業2部の縄張り争い。営業部と商品開発部の視点の食い違い。あるいは、営業と経理との折り合いの悪さなどが典型例です。

また、見過ごされがちなのが総務などの「縁の下の力持ち」として存在する部署です。

総務部門は日常業務の維持や環境整備など、企業活動を支える不可欠な役割を担っているにも関わらず、評価されにくい傾向があります。総務の人々は「目立たないけれど重要な仕事」をしているという自負がある一方で、他部署からは「楽でいいな」と誤解され、軽視されるケースもあります。このような誤解や偏見が、さらに部署間の心理的な壁を厚くしてしまいます。

本来、企業の目的は「顧客への価値提供」であり、全社が同じ方向を向かなければいけません。しかし、多くの企業では、評価制度や予算配分、組織文化などにより“味方”であるはずの他部署を“敵”のように感じてしまう構造が生まれてしまうのです。

1. 対立が生む「情報の断絶」とその深刻な影響

このような対立風土が引き起こす最大の問題は「情報の断絶」に集約されるでしょう。

たとえば、営業現場が感じた顧客のニーズや不満が、商品開発に届かない。売れない理由を他部署の責任にする習慣が根付いていることで、部署間の信頼関係が希薄になり、「有益な情報を共有しよう」という動機すら薄れてしまいます。

結果として、情報は自部署内に留め置かれ、現場の声が財務や経営層にまで届かなくなります。その結果、以下のような事態が起こります:

  • 顧客の本音とズレた商品・サービスの開発
  • クレーム対応や改善が後手に回る
  • 若手社員の成長機会の損失や離職増加
  • 組織全体の意思決定スピードの低下

情報が流れない組織は、顧客の変化についていけません。企業としての競争力を確実に失ってしまうのです。

2. なぜこの問題は“見て見ぬふり”されるのか?

この構造は企業内では“当たり前”として放置されていることが多いのが実情です。理由は主に3つです:

  1. 評価制度が“対立”を助長している:個人または部門の業績のみを重視し、連携へのインセンティブが存在しない。部署間での出世争い。
  2. “仲良しクラブ”を避ける文化:仲良くすることを軽視し、“戦って成果を出せ”という体育会的な価値観が根強い。
  3. 責任の所在が曖昧:誰が連携を推進すべきか不明確で、改善されにくい。

加えて、上層部に対して悪い情報が届きにくいという構造的な問題もあります。部下は悪い報告を避ける傾向があり、現場の課題が“良い情報”として加工されて伝わってしまうため、意思決定層が正確な現状を把握できず、対決風土の根本的な解決に乗り出せないという悪循環が生まれています。

3. この“社内病”を治す4つの処方箋

(1)評価制度の刷新

部署横断プロジェクトへの貢献や、他部門との協業の質を評価対象に加える必要があります。たとえば、営業と商品開発を「共同チーム」としてひとつの成果目標で評価するなど、横断的な目標管理が求められます。個人と全社の目標をリンクさせる仕組みも有効かもしれません。

(2)部門間の対話の仕組み化

営業と商品開発、経理と営業など、日常的に対話の機会を制度化。とはいえ、実際には形だけの会議になりがちで、実効性を持たせるには工夫が必要です。たとえば、「現場の声」だけをテーマにした会議を設け、それ以外の話題は禁止にするほど極端なルールを設けることで、現場起点の情報共有を促進することが考えられます。

(3)トップのコミットメント

トップが「連携を評価する」と明言し、方針を社内に浸透させること。発言だけでなく、制度と人事に反映させることで初めて組織文化は変わります。また、現場からの本音や不満がトップに正確に届き、それが報復や評価低下に結びつかないという信頼の仕組み作りも不可欠です。

とはいえ、多くの企業では「悪い情報を上げると評価が下がるのでは」と部下が警戒してしまうのが現実です。これを打破するためには、たとえば以下のような具体策が考えられます:

  • 定期的な匿名アンケートの実施(内容を経営層がレビュー)
  • 「現場の声フィードバック制度」を設け、意見提出者に報酬や表彰を用意する
  • トップ自らが「厳しい意見こそ歓迎する」と発信し、その対応結果を社内で公開する

このように、“言っても大丈夫”“むしろ評価される”という文化を醸成しない限り、現場の声は表に出てきません。

(4)ジョブローテーションによる相互理解

ここで言うジョブローテーションとは、単なる人事異動ではなく「異なる部署を一時的に経験すること」によって、相手の立場や仕事の難しさ、考え方の違いを理解することを目的とします。

たとえば、営業担当者が数週間だけ商品開発の会議に参加する、あるいは経理担当が営業現場の同行を体験するといった短期的・体験型の交差経験です。

こうした機会を設けることで、他部署への理解と共感が生まれ、「あの部署は分かってくれない」という対立感情を和らげるきっかけになります。

4. 最後に:対決ではなく連携を企業文化にするには?

社内で争っている間に、ライバルは顧客の信頼を得ていく。

社内の対立関係を解決する方法が、対立を単に避けることではなく、「対立を乗り越える」という意識です。

対立がなくなること自体は望ましい目標ですが、それ以上に重要なのは、部署間の違いを前提に理解と連携を深める仕組みを持つことです。顧客に選ばれる企業とは、社内が連携して顧客に向き合える企業です。

その第一歩は、「自分の部署の常識が、他部署では通用しないかもしれない」という前提に立つこと。そして、お互いの視点を尊重し合う文化を育てることにあります。

風通しの良い組織が、社内対立を解決する為に必要でしょう。