【全国紙モデル崩壊②】毎日新聞、100万部割れへ

毎日新聞100万部割れへ|全国データで見る「全国紙」の限界と大都市ブロック紙化 新聞業界

毎日新聞の朝刊部数が、いよいよ100万部に近づいています。

2026年3月のABC部数は1,083,632部。前年同月から約20万部減り、減少率は15%を超えました。

このペースだけを見れば、「100万部割れ」が現実になる日はそれほど遠くありません。

ただし、この記事で本当に考えたいのは100万部という数字そのものではありません。

毎日新聞社が公開している全国の販売データを見ると、もっと重要なことが分かります。

問題は「全国で何部あるか」ではなく、「その部数が全国のどこに残っているか」です。

大阪では20万部を超える一方、数千部しかない県もあります。すでに配送を休止した地域もあります。

つまり、100万部を割った瞬間に全国配送が突然できなくなるわけではありません。

「全国紙」という現在の配送モデルを維持する難しさは、100万部を割る前から地域ごとに始まっていると考えた方が実態に近いでしょう。

今回は、毎日新聞の全国データを使いながら、その先に何が起きるのかを考えてみます。

毎日新聞は本当に100万部を割るのか

まず、直近の部数を確認します。

時期 朝刊ABC部数 状況
2025年8月 1,176,751部 120万部割れ目前
2026年2月 1,108,806部 110万部台
2026年3月 1,083,632部 110万部を下回る

2026年3月は前年同月より202,418部少なく、減少率は約15.7%です。

もちろん、この減少率がそのまま続くとは限りません。

そのため「2026年の何月に100万部を割る」と断定することはできません。

それでも、現在の減少幅を見る限り、2026年度から2027年にかけて100万部が大きな節目になる可能性は高いと私は見ています。

ただ、ここで一度「100万部」という数字から離れてみましょう。

全国データを見ると、すでに別の問題が始まっているからです。

全国126万部でも、地域によって部数はこれだけ違う

毎日新聞社が広告向けに公開している2025年1~6月平均のABCデータでは、朝刊販売部数は全国で1,261,148部でした。

重要なのは、その内訳です。

都道府県 朝刊販売部数 見えてくること
大阪府 231,469部 最大の部数規模
埼玉県 118,585部 首都圏に集中
福岡県 118,213部 西部の中心市場
東京都 92,892部 大都市圏に一定規模
岩手県 4,152部 数千部規模
秋田県 3,357部 数千部規模
青森県 2,426部 数千部規模
高知県 883部 1,000部未満
沖縄県 175部 極めて限定的

※日本ABC協会「新聞社発行レポート 半期」2025年1~6月平均。毎日新聞社「全国の配布エリアと販売部数」を基に作成。

かなり大きな差があります。

大阪・埼玉・福岡・東京の4都府県だけを合計すると561,159部。全国126万部の約44.5%です。

一方で、数千部しかない県も少なくありません。

「毎日新聞は全国で126万部ある」とだけ聞くと、それなりの規模に感じます。

しかし、その126万部が均等に全国へ広がっているわけではないのです。

全国紙の経営を考えるときは、「総部数」より「地域ごとの部数密度」を見なければ実態を読み違えます。

さらに驚くのが夕刊です。

2025年上半期のABCデータを見ると、宮城県6部、新潟県1部、佐賀県2部、鹿児島県1部という地域があります。

「減っている」というより、県全体で数部という水準です。

一部地域では夕刊を翌日の朝刊と一緒に配達するなど、従来の「夕方に夕刊を届ける」仕組み自体も変わっています。

それでも、県単位で1部、2部という数字を見ると、少なくともこうした地域では、夕刊を「広く読者に届ける媒体」として捉えることは難しくなっています。

広告主や広告代理店の立場から見ても、「全国紙の夕刊だから全国に一定規模で届く」という前提では判断できません。

全国紙の縮小は、100万部割れのあとに始まる未来の話ではありません。夕刊を見ると、一部地域ではすでに極端な縮小が起きています。

実は「全国配送の縮小」は、100万部割れを待たずに始まっている

さらに重要なのが、毎日新聞社自身が公開している配布エリアの注記です。

富山県では2024年10月から配送を休止しています。

さらに2025年4月からは、北海道の旭川市近辺を除く道東・道北エリアと、島根県西部の一部地域でも配送を休止しています。

一部地域では郵送による対応も行われています。

つまり、

「100万部を割ったら全国配送の縮小が始まる」のではありません。

100万部をまだ大きく上回っていた段階から、採算や配送事情に応じて全国ネットワークの見直しは始まっています。

これは今回の全国データから見えてきた、とても重要な点です。

100万部は「物理的な限界」ではない。しかし、大きな経営の節目になる

以前のこの記事では、「100万部が全国配送の物理的な限界線」と書いていました。

しかし、厳密に、100万部を割った瞬間に、全国配送ができなくなるわけではありません。

新聞配送の採算は、全国の総部数だけで決まるものではないからです。

地域ごとの部数、印刷工場までの距離、輸送ルート、販売店網、配達人員、広告収入、外部への印刷委託など、さまざまな条件が関係します。

したがって、

「100万部を割ったから、地方から撤退する」

という単純な関係ではありません。

ただし、だからといって100万部という数字に意味がないわけでもありません。

むしろ、全国紙である毎日新聞が「朝刊100万部を割った」という事実が与える心理的なインパクトは、かなり大きいと考えています。

100万部は、配送の物理的な限界線ではなく、「これまでと同じ全国紙モデルを続けるのか」を改めて問われる象徴的なラインです。

影響を受けるのは、毎日新聞社の経営判断だけではありません。

広告主や広告代理店から見れば、「全国紙としてどれだけの到達力が残っているのか」をこれまで以上に確認する必要が出てきます。

取引先や金融機関にとっても、部数減少がどこまで続くのか、現在の事業構造を維持できるのかという見方に影響を与える可能性があります。

さらに一般の読者にとっても、「毎日新聞が100万部を割った」というニュースは、全国紙の縮小を象徴する出来事として受け止められるでしょう。

こうした内外の視線が強まれば、会社側も何らかの対応を迫られます。

そこで改めて検討されるのが、

  • どの地域まで紙を維持するのか
  • 自社印刷をどこまで残すのか
  • 地方紙への印刷委託をさらに広げるのか
  • 夕刊や配送回数をどうするのか
  • 紙とデジタルを地域ごとにどう組み合わせるのか

といった問題です。

つまり、因果関係は、

100万部割れ

全国紙としての規模感に対する見方が変わる

社内外から事業構造をより厳しく見られる

全国配送・印刷体制の再検討が進む

と考えた方が自然です。

そして、その見直しの結果として、採算の厳しい地域では配送休止や委託印刷が選択される可能性があります。

100万部割れは、100万部割れが地方の供給体制を見直す「きっかけ」になる可能性は十分にある。

私は、この捉え方が現在の毎日新聞を考えるうえで最も実態に近いと思います。

では、毎日新聞は地方をどう維持するのか

ここからは将来予測です。

現在の部数分布を見る限り、毎日新聞がすべての地域をこれまでと同じ方法で維持するとは考えにくくなっています。

ただし、「地方から撤退する=すぐ新聞が届かなくなる」とは限りません。

大きく3つの方法があります。

1.部数の少ない地域で紙の配送を休止する

最も分かりやすい方法です。

すでに富山や北海道・島根の一部地域で実際に行われています。

取材やデジタルでの記事提供を続けながら、紙の宅配だけをやめるという形も考えられます。

2.自社で刷らず、地元の新聞社に印刷を委託する

こちらは、紙を残しながらコスト構造を変える方法です。

毎日新聞はすでに岩手で印刷を外部委託し、2026年3月からは青森・秋田分についても東奥日報側で印刷する体制へ切り替えました。

読者から見れば同じ毎日新聞が届きます。

しかし経営面では、自社グループで印刷設備を維持する場合とは意味が違います。

なぜ毎日新聞が東北で「紙を残しながら自前の印刷網から降りる」のかは、こちらの記事で詳しく検証しています。

3.夕刊など配送回数そのものを減らす

新聞は、印刷するだけでは読者に届きません。

印刷後にトラックで運び、販売店から各家庭へ配達する必要があります。

そのため、部数が減れば「何部刷るか」だけでなく、「1日に何回配送するのか」も見直しの対象になります。

夕刊縮小は、その代表例です。

この3つは競合する選択肢ではありません。

配送休止、委託印刷、配送回数の削減を地域ごとに組み合わせる可能性があります。

最終的に「大都市ブロック紙」へ向かうのか

ここからは筆者の予測です。

私は、毎日新聞が全国から一斉に紙をなくすよりも、部数のまとまっている都市圏を中心に紙を残し、その他の地域では委託印刷や配送休止を増やす方向の方が現実的だと考えています。

いわば、全国紙の形を少しずつ「大都市ブロック紙」に近づけていく方法です。

今回の全国データを見ても、大阪、首都圏、福岡などには一定の部数が残っています。

一方、数千部規模の県では、自社だけで印刷・輸送・販売網を維持する意味をこれまで以上に厳しく問われるでしょう。

もちろん、毎日新聞社が「大都市ブロック紙へ転換する」と発表しているわけではありません。

あくまで、現在の部数分布と配送網の変化から見た筆者の予測です。

ただし、すでに起きていることを並べると、方向性は見えてきます。

すでに起きていること

  • 富山で紙の配送を休止
  • 北海道・島根の一部でも配送を休止
  • 岩手で印刷を外部委託
  • 青森・秋田でも地元紙への印刷委託へ移行
  • 夕刊の縮小が進む

これは「明日から全国紙をやめる」という話ではありません。

全国一律だった新聞の作り方・運び方を、地域ごとに変えていく動きと見る方が分かりやすいでしょう。

広告主・広告代理店は「全国126万部」という数字だけを見ない

この変化は、新聞社だけの問題ではありません。

新聞広告を扱う広告主や広告代理店にとっても重要です。

全国紙という名称だけを見て、

「全国に同じように届いている媒体」

と考える時代ではなくなっています。

広告出稿では、全国合計部数だけでなく、少なくとも次の点を確認する必要があります。

  • 広告主のターゲット地域で何部あるのか
  • その地域で配送休止や郵送対応が起きていないか
  • 朝夕刊セットなのか、統合版なのか
  • 折込広告まで含めた販売店網が維持されているか
  • 最新のABCデータと媒体資料に差がないか

全国紙の価値がなくなったという話ではありません。

むしろ、全国紙を「全国」という一つの数字で買うのではなく、地域ごとの媒体として評価する必要性が高まっているということです。

まとめ|100万部は「限界線」ではなく、全国紙モデルを考える節目

毎日新聞が100万部を割る日は、かなり近づいています。

しかし、今回全国データまで確認してみると、100万部という数字だけを特別視する必要はないことも分かりました。

2025年上半期の段階ですでに、毎日新聞の部数は大都市圏と地方で大きく偏っています。

そして100万部を割る前から、富山、北海道、島根などでは配送網の縮小が始まっています。

つまり、本当に見るべきなのは、

「毎日新聞が100万部を割るか」ではなく、
「残った100万部を、どの地域で、どの方法で届け続けるのか」です。

地方で紙をやめるのか。

地元紙へ印刷を委託して残すのか。

それとも、都市圏を中心とする新聞へ少しずつ姿を変えていくのか。

その選択は、すでに始まっています。

そして東北では、「紙をやめずに供給方法だけを変える」という具体的な動きが現れました。

次の記事では、青森・秋田で始まった東奥日報への委託印刷が何を意味するのかを詳しく見ていきます。