はじめに:最後の壁は「デジタル収益化」
シリーズ第4弾では、読者の高齢化が広告価値を大きく制約している現状を解説しました。
最終章となる本稿では、「デジタル版のPVは一定数あるのに、有料会員が増えない」という毎日新聞の特有の課題に焦点を当てます。
新聞社にとってデジタルは最後の希望。しかし、毎日新聞のデジタル展開は「記事は読まれるが収益化につながらない」という深刻なジレンマを抱えています。
PVはあるのに収益化できない構造的ジレンマ
量はある、だが質がない
毎日新聞デジタルの流入経路は、Yahoo!ニュースやスマートニュースなどニュースアグリゲーターが中心です。
その結果、記事単体は読まれるものの「毎日新聞だから読む」という読者ロイヤリティは形成されず、有料会員化にはつながりません。
➡ 高PV=高収益にはならない。実際のところ、多くのPVは「一見客」による通過アクセスに過ぎないのです。
広告収益モデルの限界
無料読者に依存すると広告モデルに頼るしかありません。
しかし、
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デジタル広告単価の下落
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広告ブロッカーの普及
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他メディアとの競争激化
により、PV依存型の収益モデルはすでに限界を迎えています。
有料会員モデルの壁
「無料」が当たり前のマインドセット
日本では「ニュースは無料で読めるもの」という意識が根強く、有料課金への心理的ハードルが高いのが現状です。速報性の高い一般ニュースで差別化し、ユーザーに有料の価値を納得させることは困難です。
キラーコンテンツの不在
有料会員を増やすには「ここでしか読めない」独自のコンテンツが不可欠です。
日経新聞は経済・金融特化で電子版有料会員100万人を獲得しましたが、毎日新聞には同等の強みが乏しく、「無くても困らない存在」と見られているのが実情です。
価格設定と提供価値のミスマッチ
現行の料金プラン(例:月額1,078円)は、提供価値と釣り合っているか疑問視されます。無料キャンペーンで一時的に加入しても、多くが短期間で解約するのが現実です。
➡ より安価・柔軟な料金体系の検討が必要です。
デジタル移行のジレンマ
- 紙媒体の減少で旧来モデルは崩壊
- デジタルには投資が必要だが収益は十分でない
- 投資先行、回収困難という負のスパイラル
結果:デジタルだけで紙の損失を補うことは不可能という未来が見えています。
結論:PVの呪縛から脱せるか?
毎日新聞の未来を決定づけるのは、事業の多角化とデジタルの収益化に成功できるか否かです。最も収益化しやすいのはデジタルです。
しかし。PVを誇っても、そこに「ブランドの信頼」と「継続的な関係性」がなければ収益にはつながりません。
本シリーズで見てきたように、
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部数減少
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押し紙問題
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高齢化
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収益不足
これらはすべて連動し、新聞社としての存在価値を揺るがしています。
広告主が注目すべきは「PVの数字」ではなく、「読者とどれだけ深く結びついているか」です。
毎日新聞社が未来を描けるかどうかは、その一点にかかっているのです。
▶ 本シリーズは全5回で完結しました。
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シリーズ①:毎日新聞の発行部数減少が止まらない!2025年最新データから見る構造的危機!

