はじめに:全国紙5紙を横並びで比較する
シリーズ第1弾では、毎日新聞単体の発行部数減少と広告主視点での危機を検証しました。
本記事では一歩進めて、全国紙5紙を横並びで比較します。
読売・朝日・日経・産経にはそれぞれ“残存する強み”がありますが、毎日新聞にはそれが見当たりません。全国紙の中で唯一「支えとなる軸」を失っているのが毎日新聞の特異な状況です。
主要全国紙の最新発行部数データ(2024年下半期〜2025年)
| 新聞社 | 2024年6月 | 2024年12月 | 2025年2月 | 半年間の減少率 |
|---|---|---|---|---|
| 読売新聞 | 5,856,320部 | 5,697,385部 | 5,477,000部(2025年5月) | 約-2.7% |
| 朝日新聞 | 3,391,003部 | 3,309,247部 | 3,280,000部 | 約-2.4% |
| 毎日新聞 | 1,499,571部 | 1,349,731部 | 約1,300,000部 | 約-10% |
| 日本経済新聞 | 1,375,414部 | 1,338,314部 | 1,330,000部 | 約-2.7% |
| 産経新聞 | 849,791部 | 822,272部 | データなし | 約-3.2% |
📉 注目点
- 毎日新聞の減少率(約-10%)は、読売・朝日の約4倍近いスピード。
- 規模が小さいため同じ減少でも経営インパクトは格段に大きい。
各紙の“残存する強み”と毎日の弱点
読売・朝日:規模の経済で耐える
- 圧倒的な発行部数を背景に、広告単価やブランド維持には余力あり。
- 家庭(読売)、文化・教育層(朝日)と接触軸が明確。
日経:専門性とデジタル課金モデル
- ビジネス特化で有料電子版会員が約100万人規模。
- 紙の減少をデジタルで補完できる数少ない成功事例。
産経:小規模だがコア支持層
- 保守層というイデオロギー的基盤を持ち、部数は少なくても支持が安定。
毎日:規模も専門性もない“中途半端な立ち位置”
- 読売・朝日のような規模がなく、日経のような専門性もない。
- デジタル有料課金は伸び悩み、広告収益も縮小の一途。
➡ 競合各紙にはそれぞれ強みが残る一方、毎日新聞だけが「どの土俵でも戦えない」という構図が鮮明になっています。
押し紙を考慮した“実配部数”の比較
押し紙を考慮した実配部数ではさらに深刻
| 新聞社 | 公称発行部数(2024年12月) | 推定押し紙率 | 実配部数 | 実質順位 |
| 読売新聞 | 5,697,385部 | 30% | 約3,988,000部 | 1位 |
| 朝日新聞 | 3,309,247部 | 30% | 約2,316,000部 | 2位 |
| 日経新聞 | 1,338,314部 | 30% | 約937,000部 | 3位 |
| 毎日新聞 | 1,349,731部 | 50% | 約674,000部 | 4位 |
| 産経新聞 | 822,272部 | 30% | 約575,000部 | 5位 |
🔎 実配ベースでの衝撃
- 毎日新聞と産経新聞の差はわずか10万部程度。
- 実質的には「準中規模紙」と変わらない規模に転落。
毎日新聞の特有の脆弱性まとめ
- 規模の経済が働かない
読売や朝日のような数百万部のバッファーがないため、減少率が経営に直撃。 - 専門性がないためデジタル課金が伸びない
日経はビジネス特化で有料会員を獲得できたが、毎日は一般紙として代替性が高い。 - 押し紙率が高く広告価値が低い
実際に読者へ届く部数が少なく、広告単価を維持する根拠が弱い。
まとめ:比較で見えてくる“全国紙からの転落”
全国紙の中で、読売・朝日には規模、日経には専門性、産経にはコア支持層という強みが残っています。
一方、毎日新聞にはそのいずれもなく、発行部数の実態を押し紙率で補正すると「準中規模紙」と変わらないレベルにまで落ち込んでいます。
➡ シリーズ①では単体の危機を検証しましたが、本記事では 「比較すると、もはや全国紙としての存在感は風前の灯」 であることが明らかになりました。
👉 次の記事では、毎日新聞だけが、なぜ存在感を失っているのか?を部数ではなく、その背景から解説します。
▶シリーズ③:毎日新聞はなぜ“存在感のない全国紙”になったのか?

