読売・朝日・日経との比較で見える毎日新聞の脆弱性|全国紙としての余力は残っているのか

新聞業界

📌 毎日新聞はなぜ危機なのか?全5回シリーズ

発行部数の危機

② 読売・朝日・日経との比較でわかる脆弱性(この記事)

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シリーズ第1回では、「なぜ毎日新聞は読者に選ばれにくくなったのか」という需要側の構造を見ました。

読者が新聞を「用途」か「立場」で選ぶなかで、毎日新聞が選択の地図から外れていく、という話です。

本記事では、角度を変えます。

今回見るのは、供給側・経営側です。

読売・朝日・日経・産経には、部数が減っても踏ん張るための「経営の資産」がそれぞれ残っています。規模、デジタル課金、コア支持層。では、毎日新聞に同じような余力は残っているのでしょうか。

5紙を横並びにすると、毎日新聞だけが、経営を支える資産を明確に打ち出しにくいという、特異な脆弱性が浮かび上がります。

まず「規模の差」を確認する

経営体力を語る前提として、まず各紙の規模を押さえます。以下は、2026年2月度のABC部数です。

新聞社 2026年2月ABC部数 前年同月比 減少率の目安
読売新聞 5,212,170部 ▲389,059部 約6.9%
朝日新聞 3,118,265部 ▲162,875部 約5.0%
日経新聞 1,220,389部 ▲107,038部 約8.1%
毎日新聞 1,108,806部 ▲188,772部 約14.5%
産経新聞 761,322部 ▲49,945部 約6.2%

規模で見えること:読売は毎日の約4.7倍、朝日は約2.8倍の部数を持ちます。一方の毎日は約111万部で、すでに日経を下回る水準です。減少率も突出していますが、その理由はシリーズ①で詳述しました。本記事で見たいのはその先、この規模で、毎日に経営を支える資産が残っているかです。

各紙に「残された経営資産」を並べる

新聞社が部数減のなかで生き残るには、紙の部数以外に「踏ん張る資産」が必要です。

代表的なのが、次の3つです。

  • 規模の経済:部数のバッファが大きく、多少減っても固定費を吸収できる
  • デジタル課金:紙の減少を有料電子版の収益で補える
  • コア支持層:規模は小さくても、確実に支持する固定読者がいる

この3つの軸で5紙を並べると、毎日新聞の置かれた状況が分かりやすくなります。

新聞社 規模の経済 デジタル課金 コア支持層
読売新聞 明確な強み 限定的 一定の強み
朝日新聞 一定の強み 限定的 一定の強み
日経新聞 限定的 明確な強み 明確な強み
産経新聞 弱い 弱い 明確な強み
毎日新聞 限定的 弱い 見えにくい

※各項目は筆者評価です。「弱い」「見えにくい」は、現時点で経営を支える明確な資産として外部から見えにくい、という意味です。

読売・朝日:規模というバッファ

読売新聞と朝日新聞には、まだ規模があります。

読売は500万部台、朝日は300万部台です。もちろん両紙とも部数は減っています。

しかし、同じ率で減っても、母数が大きければ固定費を吸収する時間を稼げます。

広告単価やブランドを維持するうえでも、規模の大きさは一定の防波堤になります。

さらに読売には家庭への接触力、朝日には文化・教育・社会課題に関心の高い読者層というイメージが残っています。部数が減っても、広告主に対して「どんな読者に届くのか」を説明しやすい点は大きな資産です。

日経:専門性とデジタル課金という逃げ場

日経新聞は、紙の部数だけで見ると毎日新聞に近い水準です。

2026年2月度のABC部数では、日経が1,220,389部、毎日が1,108,806部。その差は約11万部です。

しかし、同じ100万部台でも意味はまったく違います。

日経には「ビジネスに必要」という専門性があります。

経済、企業、投資、マーケット、就職、経営。読者が有料で読む理由がはっきりしています。

その結果、電子版有料会員は100万人規模に達し、紙の減少をデジタル収益で補える数少ない新聞社になっています。

毎日新聞もデジタル展開はしています。

しかし、日経のように「仕事に必要だから有料でも読む」という強い課金理由を作れているとは言いにくい。ここに、同じ100万部台でも経営の耐久力が大きく変わる理由があります。

産経:規模は小さくても、コア支持層がある

産経新聞は、全国紙5紙の中で最も部数が少ない新聞です。

2026年2月度のABC部数では761,322部。規模だけで見れば、毎日新聞より小さい存在です。

それでも産経には、明確なコア支持層があります。

保守的な論調を支持する読者に対して、「誰のための新聞か」が比較的はっきりしています。

規模は小さくても、読者の輪郭が見える。

これは広告主にとっても、媒体価値を判断しやすい要素です。小さくても刺さる媒体と、一定の部数はあっても読者像がぼやける媒体では、広告の使い方が変わります。

毎日:余白はあるが、支える柱が見えにくい

では、毎日新聞はどうでしょうか。

読売・朝日のような規模のバッファはありません。

日経のようなデジタル課金の柱も、まだ明確ではありません。

産経のような固定支持層も、外からは見えにくい。

報道機関としての価値がないという話ではありません。

問題は、紙の部数が減ったときに、経営を支える別の柱がどこにあるのかが見えにくいことです。

他紙が何らかの逃げ場を持つなかで、毎日新聞はその逃げ場を確立できていないように見えます。

実売で見ても、毎日に余力は見えにくい

新聞広告の価値は、公称部数だけでは測れません。

実際にどれだけの読者に届いているのかを考えるには、押し紙の存在を考慮した実売に近い数字を見る必要があります。

本シリーズでは、各紙一律で押し紙率30%を控除して試算しています。

この前提で見ると、毎日新聞の実売目安は約78万部です。

読売の約365万部、朝日の約218万部とは、規模の差が歴然としています。

日経の約85万部とは数字こそ近いものの、日経には有料課金という別の柱があります。産経は約53万部と毎日より小さいものの、コア支持層が見えやすい。

つまり毎日新聞は、実売推計で見ても「規模で勝つ」ほど大きくなく、「専門性で勝つ」ほど尖っておらず、「固定支持層で耐える」ほど読者像が明確でもない。

同じ部数でも、支える土台が違えば、媒体価値の意味はまったく変わります。

ここが、毎日新聞を見るうえで重要なポイントです。

※5紙すべての実売推計や押し紙率の考え方は、新聞発行部数の激減と押し紙の実態【2026年版】で詳しく扱っています。本記事では、毎日新聞に「規模を補う資産が見えにくい」点に絞っています。

広告主から見ると、毎日新聞は「使いどころ」が説明しにくい

広告主にとって重要なのは、単に部数が多いか少ないかではありません。

重要なのは、「その新聞に広告を出すと、誰に届くのか」が説明できることです。

新聞社 広告主から見た使いどころ
読売新聞 高齢層・家庭・全国規模の認知
朝日新聞 教育・文化・社会課題・都市部読者
日経新聞 ビジネス・投資・経営層・BtoB
産経新聞 保守層・特定の支持層
毎日新聞 読者像や出稿理由を説明しにくい

もちろん、毎日新聞にも読者はいます。長年読み続けている読者も、記事に価値を感じている読者もいます。

ただ、広告主が予算を投じるときには、「なぜこの新聞なのか」を説明する必要があります。

その説明が難しくなるほど、広告媒体としての選ばれ方も弱くなります。

ここに、毎日新聞の部数減少と広告価値低下がつながるポイントがあります。

まとめ:比較して初めて見える「経営の逃げ場」の少なさ

読売・朝日には規模があります。日経には専門性とデジタル課金があります。産経にはコア支持層があります。

一方、毎日新聞は、そのどれも明確に打ち出しにくい位置にあります。

シリーズ①で見た「読者に選ばれにくい」という需要側の問題は、経営側では「減少を吸収する逃げ場が少ない」という形で表れています。

単体で見ていると気づきにくい毎日新聞の脆弱性は、他紙と並べることで初めて、その深さが見えてきます

広告主・広告代理店にとっても、「全国紙だから」ではなく、「その紙に何が残っているか」で判断する視点が欠かせません。

シリーズ次回

👉 シリーズ③:毎日新聞はなぜ存在感のない全国紙になったか?背景と構造的要因

需要側でも、経営側でも追い込まれた毎日新聞。では、なぜこの「中途半端な立ち位置」に行き着いたのか——その背景にある構造的要因に迫ります。

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※本記事は広告主・メディアプランナー向けに、メディア選定の判断軸としてデータと分析をもとに構成しています。各紙の経営資産の評価は筆者の見解であり、ABC部数・実売推計は広告出稿判断の参考情報です。

広田 誠一