毎日新聞は『押し紙調整』に入ったのか?発行部数が示す”減少率の変化”

全国紙・地方紙

「毎日新聞の部数減少が、ここに来て異様に大きいな」

ここ1〜2年、新聞業界の数字を追っている人であれば、そう感じているはずです。

特に毎日新聞は、2024年以降、全国紙の中でも突出した減少率を見せています。

もちろん、新聞離れや読者の高齢化は今に始まった話ではありません。

しかし今回の動きは、単なる「自然減」では説明しきれない側面を持っています。

本記事では、毎日新聞の発行部数推移を約10年スパンで整理し、「これは押し紙の調整フェーズに入った結果ではないか」という仮説が成り立つのかを、合理的に検証してみます。

毎日新聞 発行部数の推移(約10年スパン)

毎日新聞社の部数の推移を10年スパンで見てみましょう。

今回は大きな流れの理解が目的のため、端数まで記載すると混乱しますので、理解しやすいように概算として表記しています。

詳細を確認したい方は別記事を参照ください。

年(基準時点) 発行部数(万部) 前年比増減 備考
2015年 約320 全国紙としての基準点
2016年 約300 ▲6.3% 緩やかな減少期
2017年 約280 ▲6.7%
2018年 約260 ▲7.1%
2019年 約240 ▲7.7%
2020年 約220 ▲8.3% コロナ期
2021年 約200 ▲9.1%
2022年 約180 ▲10.0% 二桁減が常態化
2023年 約179 ▲0.6% 2023年1〜6月ABCベース
2024年 約154 ▲13.9% 2024年1〜6月ABCベース
2025年 約126 ▲18.2% 2025年1〜6月ABCベース
2026年3月 約108 ▲15.7% 2026年3月ABC(実数:1,083,632部)
【重要】数値の見方について

2015〜2022年の数値は、長期トレンドを分かりやすく示すための概算値です(実際に毎年ちょうど20万部ずつ減っているわけではありません)。一方、2023年以降はABC協会ベースの実数に寄せた数値です。

そのため、2022年→2023年が横ばいに見えるのは「減少が止まった」わけではなく、数値の取り方が異なるためです。この点を前提に、全体の流れを見てください。

2015〜2022年:「自然減」のフェーズ

この期間の特徴は明確です。減少率は概ね▲6〜10%、読者高齢化・解約増で説明可能、減少は連続的で予測可能。つまり、“想定内の減少”が続いていた時期です。

これは他の全国紙(読売・朝日)と比較しても、大きな差はありません。

2024年以降:減少率の”質”が変わった

状況が明確に変わるのは2024年以降です。2024年は▲13.9%、2025年は▲18.2%。減少率は二桁に入り、さらに拡大しました。

ここで重要なのは、「減少している」ことではなく、「減少の仕方が変わった」ことです。

他紙との比較で見える”異質さ”

同時期の他紙と比較すると、この違いはより明確になります(2026年3月度ABC部数)。

新聞社 部数 前年比
読売新聞 約518万部 ▲6.8%
朝日新聞 約310万部 ▲5.1%
毎日新聞 約108万部 ▲15.7%

毎日新聞だけが、明らかに減少率の水準が異なっています。

なぜこの減少は「自然減」では説明しにくいのか

この動きが特異に見える理由はシンプルです。読者の高齢化は急激に加速しない、購読離脱は通常なだらかに進む、他紙は同水準で減っていない。

つまり、同じ外部環境にもかかわらず、毎日だけが急激に落ちているという構造です。

仮説:「公称部数の現実化」が進んでいる可能性

この現象を説明する一つの仮説が、公称発行部数を実態に近づける調整が進んでいるのではないかというものです。いわゆる「押し紙」の整理・調整が段階的に進んでいる可能性です。

もちろん、公開データだけで断定することはできません。

しかし、減少率の急変・他紙との差・段階的な落ち方を総合すると、この仮説は一定の整合性を持って説明できるのも事実です。

なぜ「今」なのか

押し紙の調整が起きているとすれば、理由は複合的です。

・公称部数と実売部数の乖離が限界に達している
・販売店の経営が持たない
・広告主・代理店側の目が厳しくなっている
・裁判・内部告発リスクの増大

特に毎日新聞は、全国紙の中で規模が最も小さく、最初に構造的な歪みが表面化しやすい立場にあります。

2026年の数字が示すもの

2026年3月度時点で、毎日新聞は約108万部(1,083,632部・前年同月比▲15.7%202,418部減となっています。

ここで重要なのは、直近1年間で20万部以上が消えているという点です。残っている部数に対して20万部減という絶対量のインパクトは極めて大きいと言えます。

「100万部ライン」の意味

ここで一つの節目として浮かび上がるのが、100万部ラインです。

新聞業界において、この数字は、全国紙としての規模感・広告営業上の説明・対外的なポジションといった面で、象徴的な意味を持っています。

今後のシナリオ(筆者の見立て)

現状の流れから考えると、毎日新聞は次の2つの方向性に直面している可能性があります。

押し紙の調整を進め、100万部を割る覚悟をする

公称部数を実態に近づける調整を進め、2026年末あるいは2027年初頭に100万部を割り込む選択です。短期的には広告価値の見え方がさらに厳しくなります。

しかし一方で、数字の信頼性が高まる・販売店の過剰負担が軽減される・「調整は一巡した」という説明が可能になる、といった効果も期待できます。言い換えれば、「現実化」を選ぶルートです。

100万部を死守し、調整を先送りする

もう一つは、押し紙の整理を一定程度抑え、2027年までは100万部を維持するという選択です。表面上の数字は保たれますが、販売店の疲弊は続き、実態との乖離は残り、次に調整を行う際の”落差”はさらに大きくなる可能性が高くなります。

100万部を少し超えた数値は疑念を持たれる可能性もあり、「いよいよ100万部を切るか?」という話題が長引く可能性もあります。これは一旦「延命」を選ぶルートと言えます。

2026年は「分岐の年」になる可能性が高い

現時点で約108万部という水準にある以上、2026年度は毎日新聞にとって大きな節目の年になります。100万部を割るのか、かろうじて維持するのか。という判断をしなければいけない決断の年です。

2024年・2025年と続いた段差的な減少が”一過性”だったのか、複数年にわたる”押し紙調整”の一部なのか。その答えは、「100万部ラインをどう越える(あるいは越えない)か」という形で示されることになります。

結論:これは「終わり」ではなく「現実化」かもしれない

毎日新聞の発行部数推移は、新聞が突然読まれなくなったのではなく、これまで覆われていた実態が、数字として表れ始めたと読む方が自然です。

2024年・2025年の段差的な減少は、押し紙調整が一気に終わったことを示すのではなく、複数年にわたって進行している途中であることを示唆しています。

毎日新聞の数字は、新聞業界全体が「実数と向き合うフェーズ」に入った最初の兆候なのかもしれないのです。

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