購買行動モデルとは?AIDMA・AISAS・AI時代まで解説

マーケ用語解説

この記事の結論

購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを知り、興味を持ち、調べ、比較し、購入し、共有するまでの流れを整理するための考え方です。

AIDMA、AISAS、AISCEAS、SIPS、ZMOT、5A、RACE、ULSSASなど、さまざまなモデルがありますが、どれか一つを暗記すればよいわけではありません。広告提案では、商材・ターゲット・媒体・購買までの距離に合わせて使い分けることが重要です。

マーケティングの本や広告業界の記事を読んでいると、AIDMA、AISAS、AISCEAS、SIPS、ZMOT、5A、RACE、ULSSASなど、似たような言葉が次々に出てきます。

正直なところ、広告業界で働いていても、すべてを正確に説明できる人はそれほど多くないかもしれません。

しかし、これらの購買行動モデルは、単なる用語の暗記ではありません。

広告提案を作るときに、非常に実務的に使える考え方です。

たとえば、テレビCMや新聞広告のように、まず多くの人に知ってもらう施策ではAIDMA的な発想が役立ちます。

一方、検索広告やSNS広告、口コミ、レビュー、比較サイトが関係する商材では、AISASやZMOT、AISCEASの考え方が重要になります。

さらに、生成AIやチャット検索が広がる時代には、消費者が自分で検索する前に、AIに相談し、AIの推薦を受けて選ぶ場面も増えていきます。

購買行動モデルは、昔の理論を覚えるためのものではありません。今の消費者が、どこで知り、何を調べ、誰に影響され、どう買うのかを整理するための道具です。

この記事では、広告代理店や広告業界で働く人に向けて、代表的な購買行動モデルを整理しながら、広告提案でどう使い分ければよいのかを解説します。

この記事でわかること

  • 購買行動モデルとは何か
  • AIDMAとAISASの違い
  • AISCEAS、DECAX、SIPS、ZMOT、5A、RACE、ULSSASの使い分け
  • 広告代理店の提案で購買行動モデルをどう使うか
  • 生成AI時代に購買行動がどう変わるか

購買行動モデルとは?

購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを認知してから、購入し、場合によっては他人にすすめるまでの流れを整理したフレームワークです。

わかりやすく言えば、消費者の頭の中と行動を、段階ごとに分けて考えるためのものです。

たとえば、ある人が新しいスマートフォンを買うまでには、次のような流れがあります。

段階 消費者の行動 広告・マーケティングで考えること
認知 広告やSNSで商品を知る まず存在を知ってもらう
興味 少し気になり始める 自分ごと化させる
検索・比較 レビュー、価格、性能を調べる 比較検討時に選ばれる情報を用意する
購入 店舗やECで購入する 迷わず買える導線を作る
共有・推奨 SNSや口コミで感想を伝える 購入後の体験まで設計する

このように、購買行動モデルを使うと、「広告を出す」だけではなく、消費者のどの段階に働きかけるべきかを整理できます。

まず押さえたい基本モデル:AIDMAとAISAS

購買行動モデルを理解するうえで、まず押さえておきたいのがAIDMAとAISASです。

この2つは、マーケティングや広告の基礎としてよく紹介される代表的なモデルです。

AIDMAとは?マス広告時代の基本モデル

AIDMAは、消費者が広告に接触してから購買に至るまでの心理変化を、5つの段階で整理した古典的なモデルです。

  • Attention:注意・認知
  • Interest:興味・関心
  • Desire:欲求
  • Memory:記憶
  • Action:行動・購買

たとえば、電車の中でビールの広告を見たとします。

まず広告が目に入り、ビジュアルに惹かれ、帰ったら飲みたいと思い、その記憶が残り、最終的にコンビニで購入する。

この流れはAIDMAで説明しやすい購買行動です。

AIDMAは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、屋外広告など、企業側から生活者へ一方向に情報を届けるマス広告時代に相性のよいモデルです。

AISASとは?検索と共有が入ったネット時代のモデル

AISASは、インターネット時代の購買行動を説明するモデルです。

AIDMAとの大きな違いは、Search(検索)Share(共有)が入っていることです。

  • Attention:注意・認知
  • Interest:興味・関心
  • Search:検索
  • Action:行動・購買
  • Share:共有

たとえば、SNS広告で新しいスニーカーを知り、気になって検索し、レビューや価格を比較し、購入後にInstagramやXで感想を投稿する。

この流れはAISASで説明しやすい購買行動です。

AISASは、検索広告、SEO、SNS広告、口コミ、レビュー、ECサイトなど、消費者が自分で情報を探し、さらに発信する時代に合ったモデルです。

AIDMAとAISASの違い

AIDMAとAISASの違いは、消費者をどう見ているかにあります。

AIDMAは、広告を見た消費者が興味を持ち、記憶し、購買するという流れを前提にしています。

一方、AISASは、消費者が自ら検索し、購入後に共有することを前提にしています。

比較項目 AIDMA AISAS
中心となる時代 マス広告時代 インターネット・SNS時代
消費者の特徴 広告を受け取る側 検索し、発信する側
重要な要素 記憶・欲求形成 検索・共有
相性のよい媒体 テレビ、新聞、雑誌、OOH 検索広告、SNS、SEO、EC
広告提案での使い方 認知拡大やブランド想起を説明しやすい 検索導線やSNS拡散を説明しやすい

ここで大事なのは、AIDMAが古くて使えない、AISASだけが正しい、という話ではないことです。

たとえば、新商品を多くの人に知ってもらう段階では、今でもAIDMA的な発想は役立ちます。

一方で、商品名を知った後に検索され、比較され、レビューを見られる商材では、AISAS的な設計が欠かせません。

なぜAISASだけでは足りなくなったのか

AISASは、インターネット時代の購買行動を説明するうえで非常に便利なモデルです。

しかし、現在の消費者行動はさらに複雑になっています。

理由は大きく4つあります。

1. 比較・検討の時間が長くなった

高額商品、BtoB商材、サブスク、金融商品などでは、検索してすぐ購入するのではなく、複数の商品を比較し、レビューを読み、慎重に検討します。

2. SNSでの共感や参加が重要になった

いまは商品そのものだけでなく、ブランドの姿勢、世界観、社会性、ストーリーに共感して選ぶ消費者も増えています。

3. 購入後の体験が次の購買に影響する

レビュー、SNS投稿、動画投稿、口コミが、次の消費者の判断材料になります。購買は「買って終わり」ではなく、体験共有まで含めて考える必要があります。

4. 生成AIが情報収集に入り込んできた

消費者が自分で検索するだけでなく、AIに「どれがいい?」と相談し、比較や要約を任せる行動が広がっています。

つまり、現在の購買行動は、認知、検索、購入、共有という単純な流れだけでは説明しきれません。

そこで、AISCEAS、SIPS、ZMOT、5A、RACE、ULSSASなど、さまざまなモデルを使い分ける必要が出てきます。

代表的な購買行動モデル一覧

ここでは、広告提案で使いやすい代表的な購買行動モデルを一覧で整理します。

モデル名 特徴 向いている商材・施策
AIDMA 認知、興味、欲求、記憶、購買を整理する古典的モデル マス広告、OOH、新聞広告、ブランド認知
AISAS 検索と共有を重視するネット時代のモデル 検索広告、SNS、EC、レビュー施策
AISCEAS 検索後の比較・検討まで細かく見るモデル 高額商品、BtoB、住宅、教育、金融
ZMOT 購入前の情報収集・比較の瞬間を重視する考え方 EC、家電、旅行、比較検討型商材
SIPS 共感、確認、参加、共有・拡散を重視するモデル SNSキャンペーン、社会性のある商品、ファン参加型施策
DECAX 発見、関係構築、確認、行動、体験を整理するモデル コンテンツマーケティング、オウンドメディア、SNS導線
5A 認知、訴求、調査、行動、推奨までを整理するモデル ブランド戦略、ファン化、顧客ロイヤルティ
RACE Reach、Act、Convert、Engageでデジタル施策を管理するモデル Web集客、LP改善、広告運用、CRM
ULSSAS SNSでの発見、いいね、検索、学習、購買、拡散を整理するモデル SNS起点の購買、Z世代向け商品、話題化施策
AI時代の仮説モデル AIとの対話、推薦、要約、比較が購買に影響する考え方 チャットコマース、AI検索、AEO・LLMO対策

この表を見るとわかるように、購買行動モデルはそれぞれ得意な領域が違います。

どれが一番新しいか、どれが一番正しいかではなく、提案する商材や広告目的に合わせて選ぶことが重要です。

モデル別の使いどころ

ここからは、広告提案の現場でどう使い分ければよいのかを、もう少し具体的に見ていきます。

AIDMA:まず知ってもらう広告に向いている

テレビCM、新聞広告、OOH、交通広告など、広く認知を取る広告ではAIDMAが使いやすいです。商品名やブランド名を記憶に残す設計を説明しやすくなります。

AISAS:検索される商品に向いている

商品名を知ったあと、ユーザーが検索する商材ではAISASが役立ちます。広告、SEO、公式サイト、レビュー、SNS投稿まで一体で設計する必要があります。

AISCEAS:比較検討が長い商材に向いている

BtoBサービス、住宅、教育、金融、高額家電などでは、検索後に比較・検討の時間があります。競合比較表、導入事例、FAQ、資料請求導線が重要になります。

SIPS・ULSSAS:SNSで広げたい商材に向いている

共感、参加、いいね、拡散を狙う施策では、SIPSやULSSASの考え方が役立ちます。特にZ世代向け、推し活、コスメ、カフェ、ファッション、イベント施策と相性があります。

RACE:Web施策全体を管理したいときに向いている

広告配信、LP、コンバージョン、メルマガ、CRMなど、デジタル施策を全体管理したいときに使いやすいモデルです。運用型広告やBtoBマーケティングとも相性があります。

広告代理店の提案ではどう使うべきか

購買行動モデルは、クライアントに難しい理論を説明するためのものではありません。

広告代理店の提案では、次のように使うと実務的です。

提案での使い方

  • 広告の目的が「認知」なのか「比較検討」なのか「購入」なのかを整理する
  • 消費者が購入前にどんな情報を調べるかを洗い出す
  • 広告接触後の検索導線を設計する
  • SNSで共有されやすい体験や言葉を用意する
  • LP、レビュー、FAQ、導入事例など、比較検討時の材料を整える
  • 購入後の口コミや推奨まで含めてキャンペーンを設計する

たとえば、クライアントが「とにかく広告を出したい」と言っている場合でも、広告代理店側は次のように考える必要があります。

クライアントの要望 代理店が確認すべきこと 使いやすいモデル
新商品を知ってほしい どれだけ認知を広げる必要があるか AIDMA
Webから問い合わせを増やしたい 検索後のLPやFAQは整っているか AISAS / RACE
高額商材を売りたい 比較検討時の情報が十分か AISCEAS / ZMOT
SNSで話題にしたい 共有したくなる体験や言葉があるか SIPS / ULSSAS
ブランドのファンを増やしたい 購入後の関係づくりまで設計できているか 5A

広告代理店が購買行動モデルを使う目的は、クライアントに理論を見せることではありません。

どの段階で生活者が止まっているのかを見つけ、次に必要な施策を提案することです。

生成AI時代の購買行動はどう変わるか

ここからは、2026年以降を考えるうえで重要な生成AI時代の購買行動について整理します。

従来のAISASでは、消費者が自分で検索することが前提でした。

しかし、生成AIやAI検索が広がると、消費者は検索キーワードを入れて複数サイトを見比べる前に、AIに質問するようになります。

たとえば、次のような行動です。

  • 「30代男性向けの清潔感があるビジネスバッグを教えて」
  • 「広告代理店向けにおすすめのAIツールを比較して」
  • 「この3つのサービスの違いをわかりやすく説明して」
  • 「口コミで悪い点も含めて、どれを選ぶべきか教えて」

この場合、生活者は検索結果を一つずつ見るのではなく、AIが整理した比較情報をもとに判断します。

つまり、企業やブランドは、生活者だけでなくAIにも正しく理解される情報設計が必要になります。

AI時代のマーケティングでは、「検索される」だけでなく、「AIに正しく要約され、推薦される」ことが重要になります。

AIDeAは当ブログの仮説モデルとして扱う

このブログでは、生成AI時代の購買行動を考えるうえで、AIDeAという考え方を一つの仮説として提案しています。

ただし、ここで大切なのは、AIDeAをすでに広く定着した一般理論のように扱わないことです。

AIDeAは、生成AI時代の購買行動を説明するために、このブログで整理した仮説モデルとして位置づけるのが自然です。

AIDeAの考え方

  • Attention:商品やサービスを知る
  • Interest:興味を持つ
  • Dialogue:AIやチャットで相談する
  • Experience:購入・利用体験をする
  • Advocacy:推奨・共有する

従来のAISASでは、Searchが重要でした。

しかし、AI時代にはSearchの前後にDialogue、つまりAIとの対話が入ってきます。

この変化を広告代理店が理解しておくと、AEO対策、LLMO対策、FAQ整備、公式情報の構造化、比較表の作成など、次の提案につなげやすくなります。

広告提案で使えるチェックリスト

最後に、購買行動モデルを広告提案に活かすためのチェックリストを整理します。

確認項目 見るべきポイント
認知 そもそも商品やサービスは知られているか
興味 自分ごと化できるメッセージになっているか
検索 広告接触後に検索されるキーワードを想定しているか
比較 競合との違い、価格、実績、レビューを説明できているか
購入 購入・問い合わせ・資料請求までの導線がわかりやすいか
共有 購入後に口コミやSNS投稿が生まれる設計があるか
AI対応 AIが正しく要約できる公式情報やFAQが整っているか

このチェックリストを使うと、広告提案が単なる媒体提案で終わりにくくなります。

「この広告を出しましょう」ではなく、「消費者が購入に至るまでのこの段階が弱いので、ここを補強しましょう」と説明できるようになるからです。

よくある質問

Q. AIDMAはもう古いのですか?

A. 古いモデルではありますが、使えないわけではありません。テレビ、新聞、OOHなどで認知を広げ、記憶に残す施策では今でも有効です。

Q. AISASだけ理解していれば十分ですか?

A. 検索と共有を考えるうえでは重要ですが、比較検討、SNS参加、ファン化、AI検索まで考えると、AISCEAS、SIPS、5A、RACEなども使い分ける必要があります。

Q. 広告提案ではどのモデルを使えばいいですか?

A. 認知目的ならAIDMA、検索導線ならAISAS、比較検討が長い商材ならAISCEASやZMOT、SNS拡散ならSIPSやULSSAS、Web施策全体の管理ならRACEが使いやすいです。

Q. AI時代には何を意識すべきですか?

A. 消費者がAIに相談して商品を選ぶ行動が増えるため、AIが正しく理解しやすい公式情報、FAQ、比較表、実績、レビュー情報を整えることが重要です。

まとめ:購買行動モデルは広告提案の設計図になる

購買行動モデルは、難しいマーケティング用語を覚えるためのものではありません。

消費者が商品を知り、興味を持ち、調べ、比較し、購入し、共有するまでの流れを整理するための設計図です。

AIDMAはマス広告時代の基本モデルです。

AISASは検索と共有が重要になったインターネット時代のモデルです。

AISCEAS、ZMOT、SIPS、DECAX、5A、RACE、ULSSASは、比較検討、SNS、体験、ファン化、Web運用など、より細かい消費者行動を考えるために役立ちます。

広告提案で意識したいこと

  • まず認知を取りたいのか
  • 検索後に選ばれたいのか
  • 比較検討で勝ちたいのか
  • SNSで共有されたいのか
  • 購入後にファン化したいのか
  • AIに正しく推薦されたいのか

広告代理店が本当に見るべきなのは、媒体メニューだけではありません。

その広告を見た生活者が、次にどんな行動を取るのか。

検索するのか、比較するのか、誰かに相談するのか、AIに聞くのか、SNSで共有するのか。

そこまで考えて提案できる代理店は、単なる広告枠の販売会社ではなく、クライアントのマーケティング全体を設計するパートナーになれます。

購買行動モデルは、広告の効果を説明するための理論ではなく、成果につながる導線を設計するための実務ツールです。

だからこそ、広告業界で働く人は、AIDMAやAISASを古い用語として終わらせるのではなく、今の消費者行動に合わせて使い直すことが大切です。

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