2025年最新マーケティング法則:AIDMAの法則とAISASの法則を超えて

広告豆知識

マーケティングの世界は常に進化しており、テクノロジーの進歩に伴い、消費者の行動様式も大きく変わっています。
そうなると、従来の法則だけでは現代のマーケティング活動を十分に捉えきれなくなります。

本日は、マーケティングの基本的な法則である『AIDMAの法則』と『AISASの法則』を紹介し、2025年現在において重要と考えられる最新のマーケティング法則について解説します。

 

古典的な購買行動モデル

従来型の法則としては、『アイドマの法則』と『アイサスの法則』があります。

アイドマの法則(AIDMA)

『AIDMAの法則』は、1920年代に提唱された古典的な購買行動モデルです。
消費者が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの心理プロセスを、Attention(注意)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の5つの段階で説明します。

例えば、消費者が帰宅時の電車内で、美味しそうなビールの広告を見ます(Attention:注意)。そして、その美味しそうな製造のこだわりに興味を持ちます。風呂上がりに飲むと美味しそうだな。と(Interest:興味)。
そして、その後電車に乗っている間にドンドン喉が渇いてきて、購入したいという欲求が高まります(Desire:欲求)。
帰宅後、消費者は電車で見たビールの広告を思い出し(Memory:記憶)、コンビニで購入して帰る(Action:行動)という流れです。


このモデルは、マスマーケティングが主流であった時代に有効でしたが、インターネットやソーシャルメディアが普及した現代においては、消費者の行動がより複雑になっているため、限界があるといわれています。

 

アイサスの法則(AISAS)

AISASの法則は、2004年に電通が提唱した、インターネット時代の消費行動モデルです。
AIDMAの法則に、Search(検索)とShare(共有)の2つの段階を加えたもので、Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)の5つの段階で構成されます。

 

例えば、消費者がSNSの広告で新しいファッションブランド(Attention:注意)を知り、興味を持ちます(Interest:興味)。次に、そのブランドの評判や商品の詳細をインターネットで検索し(Search:検索)、オンラインストアで購入します(Action:行動)。購入後、消費者はそのブランドの服を着た写真をSNSに投稿し、友人やフォロワーと共有する(Share:共有)といった流れが考えられます。

インターネットでの情報検索や、購入後のソーシャルメディアでの情報共有といった、現代の消費行動の特徴を捉えています。

 

2025年における最新マーケティング法則

2025年現在、消費者の購買行動はさらに多様化しており、『AISASの法則』だけでは捉えきれない側面も出てきています。

 

『AISASの法則』だけで大丈夫な気もするかもしれませんが、今の時代においては多様な捉え方が必要になっています。現代のマーケティングにおいて注目すべき最新の法則やモデルを下記に7つ紹介します。
ちょっと多いですが、時々チェックしてください!

 

AISCEAS(アイセアス)

AISCEASモデルは、AISASモデルをさらに細分化したもので、Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Compare(比較)→ Examination(検討)→ Action(行動)→ Share(共有)の7つの段階で構成されます。
特に、購入前の「Compare(比較)」と「Examination(検討)」の段階を重視しており、高価格帯の商品やサービスなど、消費者が慎重に検討する購買行動に適しています。

 

AISCEASモデルの活用例
  • 認知度向上施策(Attention)
  • 興味関心を引く情報提供(Interest)
  • 検索エンジン対策と情報発信(Search)
  • 競合製品との比較情報提供(Compare)
  • 詳細なスペックや導入事例の提示(Examination)
  • 購入プロセスの最適化(Action)
  • レビュー促進やSNSでの共有奨励(Share)
例えば、企業が新しい基幹システムを導入する場合を考えてみましょう。
まず、企業の担当者は展示会やオンライン広告で様々なシステムを知り(Attention:注意)、いくつかのシステムに興味を持つ(Interest:興味)。
次に、担当者はそれらのシステムについて、インターネットで詳細な情報を検索する(Search:検索)。そして、担当者は複数のシステムを機能、価格、サポート体制などの様々な角度から比較検討し(Compare:比較)、最終的に自社のニーズに最適なシステムを役員や関連部署と協議して決定する(Examination:検討)。
導入するシステムが決まると、企業はベンダーと契約し、システムを導入する(Action:行動)。
導入後、システムの導入効果や使い勝手について、担当者はベンダーにフィードバックしたり、業界のコミュニティで情報を共有したりする(Share:共有)といった流れが考えられます。

 

AIDMA・AISASとの違い

AISASに「Compare(比較)」と「Examination(検討)」の段階を加えることで、より慎重な購買プロセスを詳細に捉えることができます。

 

DECAX(デキャックス)

『DECAXモデル』は、デジタルマーケティングにおける顧客体験を重視したモデルです。
Discovery(発見)→ Engage(関係構築)→ Check(確認)→ Action(行動)→ eXperience(体験共有)の5つの段階で構成され、特にソーシャルメディアや口コミの影響力を重視しています。

2025年の消費者は、購入前にレビューや評判を積極的に確認し、購入後には自身の体験をSNSなどで共有する傾向が強いため、『DECAXモデル』は現代の消費者行動をより的確に捉えていると言えます。

DECAXモデルの活用例
  • SNSでの魅力的なコンテンツによる認知拡大(Discovery)
  • SNSでの積極的なコミュニケーションによるエンゲージメント向上(Engage)
  • リアルタイムでのQ&Aやレビュー促進による購入前の不安解消(Check)
  • スムーズな購入プロセスの提供(Action)
  • 購入後のフォローアップやSNSキャンペーンによる口コミ促進(eXperience)
例えば、消費者が友人のSNS投稿で紹介されていたレストラン(Discovery:発見)に興味を持ち、そのレストランの公式アカウントをフォローして情報を集めたり、キャンペーンに参加したりする(Engage:関係構築)。
次に、消費者は実際にレストランに行く前に、オンラインのレビューサイトで評判やメニューを確認する(Check:確認)。
そして、レストランで食事をし(Action:行動)、その体験を写真やコメントとともにSNSで共有する(eXperience:体験共有)といった流れが考えられます。

このように、DECAXモデルは、消費者がソーシャルメディアを通じてブランドと関係を築き、購入前には詳細な情報を確認し、購入後には自身の体験を共有するという、現代の消費者行動の特徴を捉えています。

 

AIDMA・AISASとの違い

AIDMAやAISASと比較して、「Check(確認)」と「eXperience(体験共有)」をより重視している点が特徴です。
消費者が自発的に情報を収集し、体験を共有する行動をマーケティングプロセスに組み込んでいます。

 

SIPS(シップス)

SIPSモデルは、博報堂が提唱したソーシャルメディア時代の購買行動モデルです。
Sympathize(共感する)→ Identify(確認する)→ Participate(参加する)→ Share & Spread(共有・拡散する)の4つの段階で構成され、共感から始まり、共有・拡散によって広がっていく消費行動を捉えています。
SNSでの情報拡散が重要な現代において、SIPSモデルは共感を軸としたマーケティング戦略を考える上で有効です。

SIPSモデルの活用例
  • ターゲット顧客が共感するコンテンツの制作・発信(Sympathize)
  • 顧客が自分事として捉えられるような情報提供(Identify)
  • SNSキャンペーンやイベントへの参加促進(Participate)
  • 顧客が積極的に情報を共有・拡散したくなるような仕組み作り(Share & Spread)
例えば、ある消費者が環境問題に関するドキュメンタリーを見て、そのライフスタイルに共感します(Sympathize:共感する)。
すると、その消費者は、自身も環境に配慮した商品を選ぶべきだと考え、エコフレンドリーな製品を探し始めます(Identify:確認する)。
そして、SNSでの環境保護に関するコミュニティに参加したり、イベントに参加したりします(Participate:参加する)。
最終的に、その消費者は、自身が購入したエコバッグや、イベントでの体験をSNSで共有し、友人やフォロワーに広めます(Share & Spread:共有・拡散する)といった流れが考えられます。
AIDMA・AISASとの違い

AIDMAやAISASが購買という行動を最終目標としているのに対し、SIPSは共有・拡散といった、その後の行動を重視しています。感情的な共感を起点としている点も特徴です。

 

ZMOT(ゼロ・モーメント・オブ・トゥルース)

ZMOTは、Googleが提唱した概念で、消費者が店舗に足を運ぶ前にオンラインで情報を検索・比較検討する段階(Zero Moment of Truth)が、購買決定において非常に重要であることを示唆しています。
2025年においても、消費者の多くは購入前にインターネットで徹底的に情報を調べるため、ZMOT対策は不可欠です。

ZMOTの活用例
  • 検索エンジン最適化(SEO)による検索結果上位表示
  • レビューサイトや口コミサイトでの高評価獲得
  • 自社ウェブサイトやSNSでの詳細な情報提供
  • ターゲット顧客が検索するキーワードに合わせたコンテンツ作成
例えば、消費者が新しいノートパソコンの購入を検討しているとします。
以前は、家電量販店で店員の説明を聞いたり、実際に製品に触れたりして情報を集めていましたが、ZMOTの段階では、まずオンラインで様々なメーカーの製品を比較し、レビューや評価を調べ、価格を比較するなどの行動を取ります。
そして、消費者はオンラインでの情報収集の結果に基づいて、購入する製品をほぼ決定した上で、店舗に足を運んだり、オンラインストアで購入したりします。

 

AIDMA・AISASとの違い

AIDMAやAISASは、広告などの企業からの情報発信を起点としているのに対し、ZMOTは消費者の能動的な情報収集行動に焦点を当てています。

 

5A(ファイブ・エー)

5Aモデルは、フィリップ・コトラー氏らが提唱した、顧客の行動をAware(認知)→ Appeal(興味・魅力)→ Ask(調査・質問)→ Act(行動)→ Advocate(推奨)の5つの段階で捉えるモデルです。
特に「Ask(調査・質問)」と「Advocate(推奨)」を重視しており、顧客との双方向コミュニケーションやロイヤルティ育成の重要性を示唆しています。
2025年においては、顧客とのエンゲージメントを高め、ファン化を促進することが重要となるため、5Aモデルは有効な考え方となります。

5Aモデルの活用例
  • ターゲット顧客への認知度向上施策(Aware)
  • 魅力的なコンテンツや体験の提供による興味喚起(Appeal)
  • FAQの充実や問い合わせ対応の強化(Ask)
  • 購入しやすい環境整備(Act)
  • 顧客満足度向上と推奨を促す施策(Advocate)
例えば、ある消費者がSNSで新しいスキンケアブランドを知ります(Aware:認知)、そのブランドのコンセプトや製品の魅力的な紹介に惹かれます(Appeal:興味・魅力)。すると、その消費者はそのブランドについてさらに詳しく知るために、オンラインで口コミを調べたり、ブランドの公式サイトでよくある質問を確認したりします(Ask:調査・質問)。
そして、消費者は実際に製品を購入し、使用して満足した場合(Act:行動)、そのブランドの製品を友人や家族に勧めたり、SNSで絶賛するレビューを投稿したりする(Advocate:推奨)といった流れが考えられます。

 

AIDMA・AISASとの違い

AIDMAやAISASと比較して、購入後の推奨段階を明確に捉え、顧客との長期的な関係構築を重視している点が特徴です。

 

RACEモデル

RACEモデルは、デジタルマーケティングに特化したフレームワークで、Reach(リーチ)→ Act(行動)→ Convert(コンバージョン)→ Engage(エンゲージ)の4つの段階で構成されます。
オンラインでの顧客獲得から育成までを体系的に捉えることができ、デジタルマーケティング戦略の立案に役立ちます。

RACEモデルの活用例
  • SEO、SNS、広告などを活用したリーチ拡大(Reach)
  • ウェブサイトへの誘導やエンゲージメント促進(Act)
  • 購入や問い合わせなどのコンバージョン促進(Convert)
  • 顧客との関係維持・強化(Engage)
例えば、企業が新しいオンラインキャンペーンを実施する場合を考えてみましょう。
まず、企業は、SNS広告や検索エンジンマーケティングなどを活用して、ターゲット顧客にキャンペーンを認知させるでしょう(Reach:リーチ)、そして、企業のウェブサイトやキャンペーンページに誘導し、製品の詳細情報やデモ動画を視聴したりしてもらいます(Act:行動)。
次に、ウェブサイトに訪れた顧客に製品を購入してもらったり、問い合わせをしてもらったりします(Convert:コンバージョン)。
そして、購入した顧客や問い合わせてきた顧客に対して、メールマガジンを送ったり、SNSでフォローしたりすることで、長期的な関係を構築し、ブランドへのロイヤルティを高めてもらう(Engage:エンゲージ)といった流れになります。
AIDMA・AISASとの違い

RACEモデルは、デジタルチャネルに特化しており、各段階における具体的なマーケティング施策を考えやすいという特徴があります。

 

ULSSAS(ウルサス)

ULSSASモデルは、AIDMAやAISASの流れをベースに、「Like(好き)」という感情を明確に取り入れたモデルです。Uncover(発見)→ Like(いいね)→ Search(検索)→ Study(検討)→ Action(行動)→ Spread(拡散)の6つの段階で構成され、感情的なつながりを重視する現代の消費行動を反映しています。

ULSSASモデルの活用例
  • SNSでの共感を呼ぶコンテンツ発信による発見(Uncover)
  • 商品のデザインやストーリーで「好き」という感情を醸成(Like)
  • 詳細な情報提供による検索行動への対応(Search)
  • 比較検討を促す情報の提供(Study)
  • 購入しやすい環境の整備(Action)
  • SNSでのシェアを促すキャンペーンの実施(Spread)
例えば、ある消費者がSNSで友人がシェアした新しいカフェの投稿を見て、そのカフェの雰囲気に惹かます。当然「行ってみたい」と感じます(Uncover:発見、Like:いいね)。
次に、その消費者はそのカフェの場所やメニュー、営業時間などをオンラインで検索します(Search:検索)、他の人のレビューやブログ記事などを読んでさらに詳しく調べます(Study:検討)。
そして、実際にそのカフェを訪れてコーヒーを飲み、雰囲気を楽しみます(Action:行動)。最後に、消費者はカフェでの楽しい体験を自分のSNSでシェアし、友人にも勧める(Spread:拡散)といった流れが考えられます。
AIDMA・AISASとの違い

「Like(好き)」という感情を明確にプロセスに組み込んでいる点が、AIDMAやAISASとの大きな違いです。消費者の感情的な側面を重視するマーケティングにおいて重要な視点を提供します。

 

各モデルの比較と適用

それぞれのマーケティングモデルは、消費者の行動や購買プロセスにおける特定の側面に焦点を当てています。
『AIDMA』は基本的な流れを理解するのに適しており、『AISAS』はインターネット時代の消費行動を捉える上で基本となります。『AISCEAS』は高価格帯の商品など、慎重な検討が必要な場合に有効です。
『DECAX』や『SIPS』『ULSSAS』は、ソーシャルメディアや感情的な要素が強い商品・サービスに適しており、『ZMOT』はオンラインでの情報発信の重要性を示唆しています。

『5A』は顧客とのエンゲージメントとロイヤルティ育成に、『RACE』はデジタルマーケティング戦略全般に、有効と言えるでしょう。

 

非常に面倒ですが、SNSが主流の時代においては、自社の製品・サービス、ターゲット顧客、そしてマーケティングの目的に合わせて、最適なモデルを選択または組み合わせる必要があるのです。

 

 

今後のマーケティングモデルの進化予測

マーケティング関連の専門家や研究者は、今後のマーケティングモデルは、AI技術の進化や、よりパーソナライズされた顧客体験の提供に重点が置かれると予測しています。
データを重視したアプローチがさらに重要となるでしょう。そして、個々の顧客の行動や嗜好に合わせて、リアルタイムで最適な情報を提供できるようなモデルが当たり前になってくるでしょう。

 

結論

AIDAとAISASは、マーケティングの基本的な法則として今も重要な概念ですが、2025年になると、複雑化した消費者行動に対応するためには、DECAX、SIPS、ZMOT、5A、RACE、ULSSAS、AISCEASといった最新のマーケティングモデルを理解し、適切に活用することが大切になってきています。

非常にボリュームが多いですので、是非印刷してじっくり読んでみてください。