第四弾:「インハウス化×AI広告」が変えるメディアバイイングの常識!

広告業界の課題と提言

インハウス化の波が訪れるに伴い、これからの広告担当者は「枠」を売るのではなく「結果」を設計する意識が大切になります。

メディアバイイングに訪れたパラダイムシフト

第一弾ではヤマダデンキのAI広告内製化、第二弾では専業代理店の変化、第三弾では人材進化とチーム戦略について語ってきました。

第四弾では、広告の「メディアバイイング(媒体購入)」という行為そのものが、AIとインハウス化によってどう変わり始めているのか?に焦点を当てます。

第1章:「枠」を買う時代の終焉

かつて広告代理店のメディア担当は、「どの番組枠を押さえるか」「どの紙面に載せるか」という“枠の取り合い”に価値がありました。

しかし、AIによる広告運用の普及は、この構造そのものを変えようとしています。

GoogleのP-MAXをはじめ、AIはリアルタイムでオーディエンスの動きを検知し、最適なタイミング・チャネルに広告を出稿してくれます。

つまり、出稿側が「どこに出すか」を決めるのではなく、AIが“勝手に成果の出る場所に広告を流す”時代が到来しているのです。

この変化はデジタル広告領域にとどまらず、テレビCMや交通広告、OOH(屋外広告)など、従来のマスメディアにも徐々に波及し始めています。たとえば、視聴率や人流データに連動した自動最適化や、デジタル連携による出稿ロジックの刷新などが進んでおり、すべてのメディア関係者にとって「他人事」ではなくなってきています

 

 

広告代理店の売上の中心が「メディアバイイング(枠の仕入れと販売)」である以上、この自動化と内製化の波は、売上モデルそのものに大きなインパクトを与える可能性があります。従来の「仕入れて販売する」立ち位置のままでは、売上の源泉そのものが縮小していくという現実に直面するでしょう。

第2章:「メディア買い」から「成果設計」へ

この変化が意味するのは、「メディアを買う」という従来の概念が揺らぎ始めているということです。

広告メディア担当者や広告プランナーの役割も「枠を押さえる」から、「何を目的に・どんな成果を得るか」を設計する方向へとシフトしています。

  • 枠を買う→KPIに応じた設計を行う
  • 媒体の都合に合わせる→ターゲットの行動に合わせる
  • 代理店が決める→AIが自動で判断する

このとき重要になるのは、全体設計の力です。

どのチャネルでどんな態度変容を起こしたいのか? AIに“正しい条件”を与えるための知識と設計力こそが、今後の広告人材にとって必要な知識となるのです。

AIが出稿先を自動で判断する時代だからこそ、人間の仕事は「AIが判断しやすいように、誰に・何を届けるかを設計すること」にシフトしています。

  • 誰に届けたいのか?
  • どんな体験や感情を生み出したいのか?
  • どんな態度変容を促し、どんな行動につなげたいのか?

これらをチャネル横断で統合的に考えられるプランナーが、今後の広告業界では最も重宝されるでしょう。

第3章:インハウス化企業の台頭とメディアプランナーの再定義

ここで重要になるのが、インハウス化を進めている企業の立ち位置です。

インハウス化企業は、もはや代理店に「枠を確保してもらう」ためにお金を払うのではなく、事業成果につながる戦略設計と改善サイクルを求めています。

広告代理店側も、ただメディア枠を仕入れて再販するモデルから、

顧客の課題を“設計”し、AIを活用して“運用改善”するパートナー

という新たな役割へと転換する必要があります。

この変化は、デジタル広告の領域だけにとどまりません。

たとえばOOH(屋外広告)では、人流データと連動した配信最適化が可能になり、テレビではスマートTV経由の視聴データを用いたプランニングが進み、新聞広告もデジタル施策とセットで評価されるようになってきています。

つまり、「媒体の垣根」や「メディアの役割」そのものが再定義されつつあり、マスメディアや屋外広告の関係者にとっても“インハウス化とAIの潮流”は他人事ではないのです。

結論:AI時代のメディア戦略とは「設計と検証の繰り返し」

「媒体を買う」という行為そのものが、自動化され、インハウス化される中で、広告人材に求められるのは“AIを使いこなし、成果を設計する“人間力”です。

インハウス化の時代には、従来のメディアバイイングスキルだけでは価値を生み出せません。

成果にコミットできる戦略設計力、そして仮説を立てて検証・改善する実行力こそが、広告業界の次の10年を支えるスキルです。

第五弾では、インハウス化時代における“広告効果測定の考え方”を取り上げます。

 

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