【2025年】新聞発行部数・実売部数・公称部数の現状と未来展望

新聞発行部数

かつて日本の情報インフラを支えてきた「新聞」は、発行部数が1997年のピーク時から半減し、もはや生活必需品ではなくなっています。

本記事では、日本ABC協会が2025年8月に公表した最新データをもとに、全国紙5紙(読売・朝日・毎日・日経・産経)の発行部数の現状とその推移を検証します。

押し紙の影響を加味した実売部数の推定や、今後の予測にも触れ、部数から見た新聞メディアの現在地を検証していきます。

 

全国主要5紙の部数データ比較(2024年→2025年8月)

以下は、2024年下半期(7月〜12月)の平均発行部数と2025年8月の最新データの比較です。

新聞社 2024年下半期 平均部数 2025年8月 部数 対前年変化 減少率
読売新聞 5,773,114部 5,367,089部 -406,025部 -7.0%
朝日新聞 3,343,666部 3,212,827部 -130,839部 -3.9%
毎日新聞 1,397,748部 1,176,751部 -220,997部 -15.8%
日本経済新聞 1,350,699部 1,277,296部 -73,403部 -5.4%
産経新聞 835,611部 796,577部 -39,034部 -4.7%
合計 12,700,838部 11,830,540部 -870,298部 -6.9%

※日本ABC協会は、単月ごとの数字ではなく『下期平均』を公表しています。短期的な増減の影響をならす目的と考えられますが、短期的な減少を公にしたくない事情も反映されているのかもしれません。

各紙の現状分析

読売新聞:巨大組織の規模縮小

依然としてトップを走る読売新聞ですが、年間40万部以上の減少。絶対数が大きいため、市場シェアは約4割を維持しています。

朝日新聞:減少ペース鈍化の兆し

334万部から321万部へ。減少は続くものの、中核的な支持層が支えとなり、他紙に比べ安定感が感じられます。

毎日新聞:全国ネットワークの歪み

140万部から118万部割れへ。配送撤退に追い込まれるなど、規模の限界が露呈しています。減少率は突出して高い▲15.8%に達しています。これは経営的に耐えられなくなった販売店対策での“押し紙の削減”や“販売店ネットワークの縮小”といった構造的要因が一気に表面化した結果と考えられます。つまり、単純な読者離れではなく、経営的な調整が作用している可能性が高いのです。

日本経済新聞:強靭なニッチ市場

135万部から128万部へ。経済・金融に特化した強固な読者基盤とデジタル戦略が支えとなっています。

産経新聞:広域地方紙化の進行

84万部から79万部へ。発行は都市圏に偏在しており、全国紙というより「広域地方紙」としての性格を強めています。

 

押し紙を考慮した「実売部数」の推定

ここまで見てきた数字は、いずれも日本ABC協会が公表する「発行部数」ベースのものです。しかし、これらの数値には“押し紙”が含まれており、実際に配達・購読されている部数(実売部数)とは乖離があります。以下では、その差を推定してみましょう。

本記事では以下の前提で「実売部数」を推定します:

  • 毎日新聞:押し紙率50%
  • その他の全国紙:押し紙率30%

※押し紙裁判の判例などから算出した平均値にて推測→「押し紙裁判」全解説|全6話まとめページ【録音テープ・高裁判決も収録】

👉押し紙裁判シリーズ全6話まとめ

 

新聞社 2025年8月 発行部数 押し紙率 推定実売部数
読売新聞 5,367,089部 30% 約3,757,000部
朝日新聞 3,212,827部 30% 約2,249,000部
毎日新聞 1,176,751部 50% 約588,000部
日本経済新聞 1,277,296部 30% 約894,000部
産経新聞 796,577部 30% 約557,000部

この推定から見えるのは、「発行部数」と「実際に読まれている部数」が大きく乖離しているという現実です。特に毎日新聞は実売で60万部を下回る可能性が高く、全国紙としての体裁維持が難しくなりつつあります。

さらに、もし現在の減少率が今後3年間続いた場合の推計は以下の通りです(押し紙は除く)。

新聞社 2025年8月 発行部数 年間減少率 3年後の推計部数
読売新聞 5,367,089部 -7.0% 約4,317,000部
朝日新聞 3,212,827部 -3.9% 約2,851,000部
毎日新聞 1,176,751部 -15.8% 約702,000部
日本経済新聞 1,277,296部 -5.4% 約1,081,000部
産経新聞 796,577部 -4.7% 約689,000部

もはや全国紙の体裁を保っているのは、読売・朝日・日経の3紙のみという状況です。

 

デジタルシフトの進展と紙の後退

  • 日経新聞:有料デジタル会員数は100万人超。印刷部数の約8割に相当し、デジタル収益基盤が確立。
  • 朝日新聞:有料デジタル会員は30万人規模。印刷依存度が依然高い。
  • 読売新聞:会員数800万人とされるが、有料か無料か不透明。広告モデルに依存の可能性。
  • 毎日新聞:有料デジタル会員数は数万人規模。印刷依存度が非常に高く、デジタル戦略は遅れを取っている。
  • 産経新聞:「産経プラス」などの課金モデルは存在するが、有料会員は数万人レベルに留まる。

「発行部数」だけでは業界の実態を測れず、今後は有料デジタル会員数やオンラインでの接触者数が新たな競争軸になってくるでしょう。

今後の展望:新聞発行部数はどこまで減るのか

  • ネットワーク縮小:近年の、毎日・産経の撤退事例は、全国紙全体に広がる配達網縮小の序章と考えられます。
  • 大都市圏集中モデル:販売部数の減少は、地方での販売店存続に直結します。統合が進んでも維持は難しく、紙は大都市限定のビジネスモデルとなる可能性があります。
  • 押し紙依存からの脱却:真の読者数に基づく広告モデルが不可欠です。もはや、押し紙を前提にしたビジネスは限界を迎えつつあります。

 

まとめ

最新の部数データから見えてくるのは、「全国紙モデルの限界」と「デジタルへの移行格差」です。

押し紙を考慮した実売部数は公式数値より大幅に少なく、新聞の「実際の影響力」はかつてないほど縮小しています。デジタル成功例(日経)と苦戦例(毎日)の対比が示すように、新聞業界の未来も引き続き、印刷部数ではなく、実売とデジタルの掛け合わせによる新たな価値創出にかかっていると言えるでしょう。

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