はじめに:全国紙の定義が崩れる日
2024年下半期、日本の新聞業界に大きな転機が訪れました。
全国紙とされてきた毎日新聞・産経新聞が、富山県からの宅配サービス撤退を発表したのです

全国紙とは「全国どこでも宅配網を持つ新聞」と定義されてきました。
その前提が崩れることは、単なる一県での縮小ではなく、全国紙の存在意義そのものが揺らぐ出来事なのです。
では実際に、発行部数のデータから全国紙の現状を確認してみましょう。
数字を見ることで、この変化が一時的な現象ではなく、構造的な問題であることがはっきり浮かび上がります。
発行部数の比較(2023年下半期 vs 2024年下半期)
各紙の発行部数を比較すると、減少傾向がより顕著に見て取れます。
下記部数は、各新聞社の6カ月平均販売部数です。
| 新聞社 | 2023年下半期 | 2024年下半期 | 減少部数 | 減少率 |
|---|---|---|---|---|
| 読売新聞 | 約612万部 | 約575万部 | 約37万部 | -6.0% |
| 朝日新聞 | 約355万部 | 約333万部 | 約22万部 | -6.1% |
| 毎日新聞 | 約161万部 | 約136万部 | 約25万部 | -15.5% |
| 日本経済新聞 | 約141万部 | 約135万部 | 約6万部 | -4.5% |
| 産経新聞 | 約90万部 | 約83万部 | 約7万部 | -7.9% |
| 合計 | 約1,359万部 | 約1,262万部 | 約97万部 | -7.1% |
➡ わずか1年で産経新聞1紙分以上(約97万部)が消滅。
読売や朝日も数十万部単位で減少していますが、毎日の ▲15.5% という急落は際立っています。企業活動全般に置き換えても、1年で15%超のマイナスは経営に深刻なダメージを与えるレベルです。
こうした急減が、富山県からの撤退につながった要因の一つと考えられます。つまり、単なる数字の落ち込みではなく、販売網そのものを維持できない現実が表面化してきているのです。
富山県撤退が示すもの
2024年9月末、毎日新聞と産経新聞は富山県での販売・宅配を終了しました。
産経新聞では「サンケイスポーツ」も含め、販売を中止。
結果として、富山県内では以下の状況に:
- 新聞販売店からの宅配なし
- 駅売店での購入も不可
つまり、事実上の完全撤退です。
注目すべきは、この撤退が単なる地方縮小ではなく「全国紙」の定義そのものを揺るがした点です。これまで全国をカバーしてきた体制がほころび始めた象徴であり、業界再編が現実化しつつあることを示しています。
構造的危機:地方撤退は連鎖する
毎日・産経の発行部数では、全国に届ける宅配網を維持することはもはや計算上不可能です。
加えて、押し紙を考慮すると、実配部数は公称の50~70%程度。
この水準では「地方撤退が他地域にも波及する」のは時間の問題です。
- 販売店の倒産・転業
- 配達員人件費の高騰
- 高齢化で購読者が減少
これらが同時進行すれば、宅配網の維持はますます困難になります。
業界の未来:2036年には紙の新聞が消える?
では、ここで10年後の部数を推測し、全国紙がどうなるのか具体的に考えてみましょう。
仮に毎年 5%減少 が続いた場合を想定してみます。
| 新聞社 | 現在の部数 | 10年後(5%減/年) | 減少部数 |
|---|---|---|---|
| 読売新聞 | 約575万部 | 約345万部 | 約230万部 |
| 朝日新聞 | 約333万部 | 約200万部 | 約133万部 |
| 毎日新聞 | 約136万部 | 約82万部 | 約54万部 |
| 日本経済新聞 | 約135万部 | 約81万部 | 約54万部 |
| 産経新聞 | 約83万部 | 約50万部 | 約33万部 |
| 合計 | 約1,262万部 | 約758万部 | 約504万部 |
上記部数で考えると、読売新聞社と朝日新聞社は、どうにか全国紙の立場を維持。
日本経済新聞社は、経済紙としての独自の立ち位置により存続を維持。デジタルによる配信も含めて先行きは暗くありません。
一方で、毎日新聞社と産経新聞社は消滅か吸収されている状況でしょう。
ただし、上記は『押し紙』を含んでいません。『押し紙』問題が表に出た場合は、部数が半減しますので、毎日と産経は『宅配』というビジネスモデルの維持はできません。
まとめ
2024年下半期は、全国紙の2紙が一部地域から撤退。という説目の年になった可能性があります。
この流れは、数年以内に加速するかもしれません。
今後も注視していく必要があります。

