2024年下半期、新聞業界に何が起こったのか?
2024年下半期(7~12月)、新聞業界に大きな転機が訪れました。
日本ABC協会の最新データによれば、全国紙の発行部数は前年同期と比べて大幅に減少。
さらに、毎日新聞と産経新聞は、それぞれ配達網の維持が困難となったことから、一部地方エリアでの宅配サービスを段階的に終了する方針を発表しました。
具体的には、2024年9月末をもって両紙ともに富山県内での宅配・販売を停止することを明らかにしています。産経新聞社ではサンケイスポーツも含んで販売を中止しています。
これにより、県内では新聞販売店からの宅配や駅売店での購入が不可能となり、事実上の撤退といえます。

このことで、日本新聞協会が定める「全国紙」(全国をほぼカバーする新聞)としての定義を満たさなくなる可能性が浮上し、全国紙の再編が現実味を帯びています。
また、この流れが富山県だけに留まるとは考えずらいでしょう。
発行部数の比較(2023年下半期 vs 2024年下半期)
各紙の発行部数を比較すると、減少傾向がより顕著に見て取れます。
下記部数は、各新聞社の6カ月平均販売部数です。
新聞社 | 2023年下半期 | 2024年下半期 | 減少部数 | 減少率 |
---|---|---|---|---|
読売新聞 | 約612万部 | 約575万部 | 約37万部 | -6.0% |
朝日新聞 | 約355万部 | 約333万部 | 約22万部 | -6.1% |
毎日新聞 | 約161万部 | 約136万部 | 約25万部 | -15.5% |
日本経済新聞 | 約141万部 | 約135万部 | 約6万部 | -4.5% |
産経新聞 | 約90万部 | 約83万部 | 約7万部 | -7.9% |
合計 | 約1,359万部 | 約1,262万部 | 約97万部 | -7.1% |
2024年下期の平均販売部数は、5紙合計で約1,262万部。前年からの合計減少数は約97万部にのぼります。
一見すると年間5〜6%程度の減少率は緩やかに感じられるかもしれませんが、これは「毎年確実に数十万部が失われている」という事実を示しています。
たとえば、読売新聞は約37万部の減少であり、これは現在の産経新聞の発行部数(約83万部)の約半分に相当します。
さらに、5紙合計で見ると、年間の減少部数は約97万部にのぼり、これは産経新聞の発行部数そのもの(約83万部)を上回る規模です。
つまり、5紙全体で、わずか1年の間に産経新聞1紙以上の部数を失った計算になります。
特に読売や朝日といった大手紙では数十万部の減少を記録しており、このペースが数年続けば累積の影響は計り知れません。

また、部数の減少だけでなく、一部地域からの撤退が現実化している点において、事態の深刻さは数字以上であると考えられます。
毎日・産経が全国紙でなくなる?
注目すべきは、毎日新聞と産経新聞が一部地域での配達を休止したことです。
これにより、日本新聞協会が定める「全国紙」としての定義(全国をほぼカバーしている)を満たさなくなる可能性が指摘されています。
これは新聞業界にとって極めて重大な出来事であり、報道の構造そのものに影響を及ぼしかねません。
販売収入に依存しない新聞社へ──収益モデルの脱皮は待ったなし
全国紙の定義が揺らぐいま、単に「紙が売れない」という問題だけでは済まされない状況にあります。
新聞社にとって、従来のビジネスモデル――すなわち「紙の新聞を定期購読してもらい、広告を出してもらう」という収益構造は、もはや成立しづらくなっています。
特に販売収入の減少は、広告収入にも直接的な影響を与え、メディアとしての自立性や報道力を支える基盤そのものを揺るがしています。
このような構造的危機の中、各社は急速に「販売以外の収益源」の確立を迫られています。
まさに、ビジネスモデルの再設計が必要だということです。
地方紙の再評価
全国紙が撤退する地域では、地方紙の役割が再び注目されています。
地域密着型の報道、行政との連携、コミュニティとの絆など、地方紙ならではの強みが再評価される動きも見られます。
業界の未来:2036年には紙の新聞が消える?
上記のような減少ペースが続けば紙の新聞は2036年には消滅するという試算も出ています。
しかし、実際は、そんな猶予は無いでしょう。

ここで、将来の販売部数を予測してみましょう!
仮に毎年5%のペースで発行部数が減少し続けた場合、10年後には現在の約60%程度まで縮小する計算になります(1,262万部 × 0.95^10 ≒ 約758万部)。
これは現在の発行部数に比べて約490万部の減となり、業界全体の存続にも大きな影響を与えることが予想されます。
仮に現在の各紙の部数が等しく5%ずつ減少したとすると、10年後の発行部数は以下のようになります:
新聞社 | 現在の部数 | 10年後(5%減/年) | 減少部数 |
---|---|---|---|
読売新聞 | 約575万部 | 約345万部 | 約230万部 |
朝日新聞 | 約333万部 | 約200万部 | 約133万部 |
毎日新聞 | 約136万部 | 約82万部 | 約54万部 |
日本経済新聞 | 約135万部 | 約81万部 | 約54万部 |
産経新聞 | 約83万部 | 約50万部 | 約33万部 |
合計 | 約1,262万部 | 約758万部 | 約504万部 |
上記部数で考えると、読売新聞社と朝日新聞社は、どうにか全国紙の立場を維持。日本経済新聞社は経済紙としての立ち位置で存続を維持。毎日新聞社と産経新聞社は消滅か吸収されている状況でしょう。
ただし、上記は『押し紙』を含んでいません。『押し紙』問題が表に出た場合は、部数が半減しますので、もっと大きな動きになるでしょう。
まとめ
2024年下半期は、新聞業界における構造変化が一気に表面化した半年でした。
部数の減少は続き、全国紙の定義すら揺らぎ始めています。
加えて、デジタル化の現実的な課題と、地方紙の存在感の再評価。
いま、業界全体は“次のステージ”に進む覚悟を求められていると言えます。