新聞以外の仕事を一つ取れた。
それは大きな一歩です。
ただ、そこで安心してはいけません。
5万円の売上が増えても、5万円儲かったわけではないからです。
誰がやったのか。何時間かかったのか。移動や準備、営業、請求まで含めると、実際にはいくら残ったのか。
新しい仕事を続けるかどうかは、売上ではなく、この数字で判断する必要があります。
売上ではなく「最後にいくら残ったか」を見る
新しい仕事を始めると、どうしても売上に目が向きます。
月5万円、10万円と売上が増えれば、うまくいっているように見えます。
しかし、本当に見るべきなのはその後です。
売上 − 人件費 − 仕入れ・外注費 − 移動費 − 営業や管理に使った時間 = 実際に残った利益
販売店の場合、ここを曖昧にすると特に危険です。
既存のスタッフや車両を使えば、表面上は追加費用が少なく見えるからです。
でも、人が動けば時間を使います。
車両を使えば燃料も消耗します。
店主自身が営業や電話対応をすれば、その時間もタダではありません。
「空いている時間だから無料」と考えない
以前、このシリーズでは、新聞配達のない日中を新しい仕事に使えば、人件費をあまり増やさずに済むと考えていました。
しかし、これは少し楽観的でした。
配達員が日中も働けるとは限りません。
別の仕事をしている人もいれば、早朝勤務の後にさらに働くのが難しい人もいます。
店主や正社員が動くとしても、その時間には本来やるはずだった別の仕事があります。
「今いる人がやるから人件費ゼロ」という計算はしない方がいい。
現金の支出が増えなくても、その人の時間にはコストがあります。
5万円の仕事でも、実際に残るのは1万円かもしれない
たとえば、新しく5万円の仕事を受注したとします。
一見すると悪くありません。
しかし、仮にこんな仕事だったらどうでしょう。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 売上 | 50,000円 |
| 材料・外注・燃料など | 10,000円 |
| 実作業15時間 | 仮に時給1,500円で22,500円 |
| 営業・電話・請求など5時間 | 同じく7,500円 |
| 実質的に残る金額 | 約10,000円 |
時給1,500円はあくまで説明のための仮定です。
重要なのは金額そのものではありません。
自分や既存スタッフの時間にも、一度値段を付けてみることです。
そうすると、「売上はあるのに、実はほとんど儲かっていない仕事」が見えてきます。
最初の1件は「成功」ではなく「検証」
では、最初から十分な利益が出なければ失敗なのでしょうか。
私はそうは思いません。
最初の仕事では、初めてだから時間がかかります。
値段の付け方も分からない。説明にも時間がかかる。必要のない作業までしてしまう。
そこから、
「次はこの作業を省ける」
「この金額では合わない」
「この客層なら反応がいい」
「ここまでを外注した方がいい」
ということが分かってきます。
これがノウハウです。
ただし、「最初だから赤字でもいい」と際限なく続けるのは違います。
試す前に、いくらまでなら損をしていいのか、何回まで試すのかを決めておく。
その方が撤退もしやすくなります。
続けるかどうかは、6つの数字を残して判断する
新しい仕事を一つ試したら、難しい事業計画書を作る必要はありません。
最低限、次の数字だけ残しておけば十分です。
| 見る数字 | 確認すること |
|---|---|
| 売上 | いくら請求できたか |
| 直接かかった費用 | 仕入れ、外注、燃料など |
| 実作業時間 | 現場で何時間使ったか |
| 営業・管理時間 | 営業、打ち合わせ、電話、請求など |
| トラブル・やり直し | 想定外に増えた負担はなかったか |
| 次も受注できるか | 一度きりか、継続・紹介につながるか |
この数字があれば、感覚ではなく判断できます。
売上が大きい仕事が、良い仕事とは限らない
新しい事業を考える時、どうしても「月いくら売れるか」に目が行きます。
でも、小さな会社ではそれ以上に、少ない手間で繰り返せるかが重要です。
月10万円売れても、店主が毎月50時間取られる仕事なら厳しいかもしれません。
逆に月3万円でも、ほとんど追加作業がなく毎月続く仕事なら価値があります。
また、一つの顧客から次の顧客を紹介してもらえる仕事なら、営業コストも下がります。
「売上が大きいか」より、「利益が残るか」「繰り返せるか」「次につながるか」。この3つで見る方が、小さな販売店には現実的です。
ダメな仕事を早くやめることも、ノウハウになる
新しい仕事を始めると、「せっかく始めたのだから」と続けたくなります。
しかし、数字が合わないならやめていいと思います。
1件やってみて、予想以上に手間がかかった。
値上げすると売れない。
既存の新聞業務にも支障が出る。
それなら、その仕事は今の店には合っていなかったということです。
失敗ではありません。
「これはやらない方がいい」と分かったことも、次の商売を選ぶためのノウハウです。
一番危険なのは、利益が出ない仕事を「新規事業だから」と何年も抱えることです。
まとめ|立派な収益モデルより、1件の数字を見る
以前このシリーズでは、行政、生活支援、広告などを組み合わせた収益モデルを考えていました。
しかし、今は少し違う考え方をしています。
最初から完成した収益モデルを作る必要はありません。
まず一つ仕事を取る。
実際にやる。
いくら残ったかを見る。
改善できるならもう一度やる。
合わなければやめる。
その繰り返しの方が、机上で3年後の売上を計算するより現実的です。
新聞販売店の新しい商売で最初に必要なのは、大きな収益計画ではありません。「この1件は、本当に儲かったのか」を正確に知ることです。
次に読む|第3回へ
採算が合う仕事が見つかっても、次の問題があります。
「その仕事を、誰が考え、誰が営業し、誰が動かすのか」
販売店に足りないのは、配達する人だけではありません。
次の第3回では、企画、営業、交渉までできる人材を一店で抱えるのではなく、必要な機能を外から借りるという方法を考えます。

