新聞販売店の生き残り戦略|「分かっている。でも動けない」店へ

「新聞以外の収入をつくらなければいけない」

「配達網や地域とのつながりを、別の商売にも使った方がいい」

新聞販売店を経営している人ほど、そんなことはもう分かっているのではないでしょうか。

問題は、その先です。

分かっている。でも、人がいない。時間もない。新しいことに使える金もない。

毎日の配達を回すだけで精いっぱいなのに、「地域インフラになろう」と言われても、そんな余裕があればとっくにやっている。

今の販売店が抱えているのは、危機感の不足ではなく、動く余力そのものがなくなっていることではないでしょうか。

販売店の危機は、もう十分分かっている

2025年度の新聞販売店倒産は43件で、過去30年で最多となりました。

さらに2025年の休廃業は170件。販売所で働く人も20万人を割っています。

しかも、倒産した販売店の多くは従業員5人未満の小規模店です。

数人で朝刊、集金、営業、スタッフ管理まで回している店に、「新規事業を立ち上げましょう」と言っても簡単ではありません。

「そんなことは分かっている。でも、誰がやるんだよ」

おそらく、ここから考えなければいけないのだと思います。

新聞本社との関係が、動きを鈍らせている面もある

新聞販売店は、一般的な小売店とは違います。

再販制度があり、販売区域や新聞の取り扱いについても新聞本社との契約があります。

長年その仕組みの中で商売をしてきた以上、「本社との関係を悪くしたくない」と考えるのは当然でしょう。

ただし、契約を守ることと、本社の顔色を見て何もしないことは別です。

実際には、ポスティング、宅配、食品販売など、新聞以外の仕事をしている販売店もあります。

新しいことを始めるなら、自分の販売店契約を確認する。それで問題がなければ、必要以上に遠慮する理由はありません。

AHSがあっても、販売店の危機は止まっていない

本社側も何もしていないわけではありません。

朝日新聞グループには、販売店支援を担うAHSがあります。

前身は1973年設立。近年は「新聞販売の未来デザイン」「総合メディア商社」を掲げ、新聞以外の事業領域にも取り組んでいます。

方向性だけを見れば、このブログで考えてきたことともかなり近いものです。

ただ、気になることがあります。

その取り組みによって、一つの販売店の売上や利益がどれだけ改善したのか。その姿が見えにくいのです。

もちろん、AHSが機能していないと断定することはできません。

しかし、販売店の倒産や休廃業が増えている現状を見ると、「未来を描くこと」と「一店の経営を実際に変えること」は別の問題だと感じます。

販売店が本当に知りたいのは、「将来こうなります」ではなく、「では、自分の店は来月から何をすればいいのか」ではないでしょうか。

「新規事業」ではなく「第二の商売」でいい

「新規事業」と考えると、どうしても話が大きくなります。

しかし、最初から人を増やしたり、大きな設備投資をしたりする必要はありません。

もっと副業に近い感覚で、小さな商売を一つ始める。

私は、そのくらいからでいいと思っています。

とはいえ、「それが簡単にできれば苦労しない」と思う人もいるでしょう。

ここは、私自身の経験から少し書いておきたいと思います。

私自身、10年以上前に一人で起業しました。

個人事業主の大変さは起業してから体験しました。

しかし、進むしかありません。どうすればいいか?

考えている余裕もありません。そこで出した結論は1つです。

目の前の仕事を一つずつこなし、失敗し、修正し、その経験を次の仕事に使う。

それを繰り返してきました。

今も一人で仕事をしていますが、大きな会社と競合する案件もあります。

そこで感じるのは、商売のノウハウは、最初に勉強して完成させるものではないということです。

仕事を一つ経験すると、「この金額では合わない」「こう説明した方が伝わる」「ここで失敗しやすい」という感覚が残ります。

感覚や第六感は、非常に大切なんです。これなくして仕事の成功はありません。

その積み重ねが、次の仕事を取りやすくし、少しずつ売上につながっていきます。

そして新聞販売店は、私が起業した時より有利です。

販売網がある。顧客がいる。店舗や車両がある。地域で長年積み上げてきた信用もあります。

完全なゼロから始めるわけではありません。

だから最初から大きな売上を目指す必要はありません。

まずは、新聞とは別のところから自分で仕事を1件取る。

売上が5,000円でも3万円でも構いません。

その1件で得た経験が、次の仕事を取るための最初のノウハウになります。

「今ある仕事の延長」だけでは足りない

ここで一つ注意したいことがあります。

新聞販売店の新しい収益源というと、ポスティング、折込広告、宅配、物販などがよく挙げられます。

しかし、これらの多くはすでに販売店が長年取り組んできた仕事です。

ポスティングも全国各地で事業化され、新聞販売網を使った荷物の配送もすでに始まっています。

つまり、これらを今から始めるだけでは、「第二の商売を持つ」という話にはなりません。

それで十分なら、販売店の経営はここまで厳しくなっていないはずです。

必要なのは、「新聞販売店だから何ができるか」だけを考えることではありません。

一度、新聞から離れて考えてみることです。

自分や従業員に、新聞以外でできることはないか。

地域で、お金を払ってでも誰かに頼みたい仕事はないか。

今ある店、車両、人脈、空いている時間の一部を別の商売に使えないか。

最初から「新聞販売店向け新規事業」の中から答えを探す必要はありません。

むしろ、その発想から一度離れた方がいいと思います。

会社員の副業でも、本業とまったく違う仕事を始める人は珍しくありません。

販売店も同じです。

新聞との相乗効果がなくてもいい。

配達網を使わなくてもいい。

まず小さく始められて、利益が出るものを一つ探す。

「新聞販売店だから何をするか」ではなく、「一つの小さな会社として何なら稼げるか」。

ここまで発想を広げた方が、本当の意味での第二の商売に近づくと思います。

地域OSや自治体連携は、その後でいい

このブログでは、高齢者の見守り、自治体連携、物流、地域広告などをつなぐ「地域OS」という構想も考えてきました。

方向性は今も変わりません。

ただし、それを最初の一歩にする必要はありません。

まず1社から仕事を取る。

1か月試す。

利益が出るなら続ける。

ダメならやめる。

その積み重ねの先に、地域インフラという姿が見えてくれば十分です。

それすら難しいなら、早く別の道を考える

すでに人も資金もなく、毎日の新聞業務だけで限界という店もあるでしょう。

その場合は、無理に新規事業を始めることが正解ではありません。

合売、他店との統合、業務の共同化、事業承継、譲渡。

場合によっては撤退もあります。

大切なのは、何もしないまま限界まで待たないことです。

顧客や配達網、地域での信用が残っているうちなら、まだ選択肢があります。

まとめ|本社を待たず、自分の店を守る

新聞販売店が厳しいことは、もう十分分かっています。

新聞以外の収益が必要なことも分かっている。

だから、これ以上「意識を変えよう」と言っても仕方がありません。

必要なのは、今ある人、金、時間の中で何ができるかです。

まず1万円でもいい。

新聞以外から、自分で売上をつくってみる。

それが難しいなら、統合や譲渡を早く考える。

本社と喧嘩をする必要はありません。しかし、本社が答えを出してくれるまで待つ必要もありません。「新聞を配る会社」から、「新聞も配っている会社」へ変われるか。販売店自身が動く時期に来ていると思います。

※本記事は2026年9月時点の新聞販売店の倒産・休廃業動向、AHSの公式情報などを確認したうえで更新しています。販売店契約の内容は新聞社・販売店ごとに異なるため、新しい事業を始める際は個別の契約内容や必要な許認可を確認してください。