第5話:ABC部数の限界と監査の儀式・・・信じられない“数字の裏側”

押し紙裁判シリーズ

はじめに:広告主が本当に知りたい「届いた数」

新聞広告における「掲載料金」は、原則として発行部数を基準に設定されます。そしてその「発行部数」の信頼性を担保する役割を果たしてきたのが、公益社団法人・日本ABC協会です。

広告主や代理店にとって、ABC協会が公表する「認証部数」は、新聞の価値を測る“数字の基準”です。

しかしその実態は、読者や広告主が想像している以上に“不透明”な構造を抱えています。

 

新聞広告という巨大な市場を支えてきた“数字の信頼”。その象徴であるABC部数の構造的限界と、形式化した監査の実態に迫ります。

第1節:ABC部数の仕組みと広告主の誤解

  • ABC部数とは:日本ABC協会が発表する発行部数。広告主はこの数字を基準に出稿判断や料金を決定。

  • 発行部数≠実配部数:印刷しただけの新聞も含まれ、“誰にも届いていない紙面”も部数に含まれる。

  • 自己申告制の限界:新聞社自身の申告に依存し、真の配布状況はブラックボックス。

「10万部と聞いて契約したのに、実際に配布されたのは5万部だった。」・・・ある広告主が非公開の業界勉強会で語ったとされる言葉(出典:関係者による証言記録)

広告主は信じて出稿しているが、実態は“幽霊部数”にも広告費が流れている可能性があるのです。

第2節:監査という名の“儀式”

表向きは「部数の監査」を担う日本ABC協会。しかしその内部構造には、深刻な“自己矛盾”が潜んでいます。

● 抜き打ちではない「事前通告」

元販売店や関係者の証言によれば、ABC協会の監査は多くが事前通告型。その結果、販売店側が帳簿や領収書の“演出”を準備する時間が与えられている実態があります。

● 架空読者と帳簿改ざんの手口

  • 過去読を現読に偽装:過去に購読していた読者を、現在も購読中であるかのように再登録し、帳簿上の配布部数を水増し。

  • 架空の領収書を大量発行:実際には購読していない架空の読者名義で領収書を作成。帳簿に整合性があるよう見せかけ、束にして監査員に提出。

  • 入金一覧表の自動生成:帳簿と照合しても不整合が出ないよう、販売店に支給された専用ソフトで“見かけ上正しい”入金履歴を一括作成。

  • 裁断業者の立ち会い:監査前に残紙をトラックで裁断業者へ搬出。新聞社の販売局員も立ち会い「これは配布済みの紙面を処分している」と説明。現場はまるで演劇の舞台裏のような緊張感に包まれる。

「あれは全部“儀式”でした。監査員も分かってるけど突っ込まない。」・・元店主の言葉

数字の番人・ABC協会の構造的欠陥

上記の様に、ABC協会には、第三者としての機能が存在していないことは明らかです。

  • 理事の約7割が新聞社幹部:監査対象が監査機関を実質的に支配する“利益相反”構造

  • 広告主代表はごく一部:数百億円の広告費が動く中で、意思決定に関与できない

  • 広告代理店も沈黙:親会社が新聞社であるケースが多く、追及困難

→ まさに「狐が鶏小屋を守る」構図が長年放置されてきた

この構造が、押し紙問題の温存だけでなく、広告主や政府広報(血税)への実害の拡大を招いてきたのです。

第4節:税務上のリスク!“架空の購読”は本当に無罪か?

ABC協会の監査を通すための“演出”は、単なる内部の慣習にとどまらず、税務上の問題に発展する可能性も秘めている可能性があります。

たとえば、実際には存在しない購読者に対して発行された領収書や、偽造された入金一覧表を帳簿に記録する行為は、場合によっては「架空売上の計上」とみなされる恐れがあります。

  • 実体のない売上に対して消費税や所得税を申告していない場合、脱税行為として摘発のリスクがある。
  • 販売店だけでなく、新聞社が押し紙を「販売済み」として売上に組み入れていれば、架空の売上に該当します。つまり、粉飾決算の疑いが生じるかもしれまえん。
  • 広告主(とくに政府広報)が水増し部数に基づく広告料金を支払っている場合、詐欺的請求/不当利得と見なされる可能性もある。

このように、「実態のない取引」が帳簿上で成立してしまう構造は、税務・会計・契約の各側面からも極めてリスクの高い行為です。

帳簿上は整っていても、実態がなければ“仮装経理”に該当する。

こうした指摘が国税庁などの関係機関からなされれば、販売店・新聞社双方にとって深刻な影響が及ぶことは避けられません

 

第5節:信頼回復のために必要な3つの改革

※注:以下に示す「改革」は、現在のABC協会の体制が続く限り実効性を持ちません。実質的には、ABC協会の解体・再編レベルの構造転換が求められます。組織の看板を掛け替えるだけでは、もはや信頼回復にはつながらない段階にきているのです。

  1. 独立した監査機関の設立

    • 新聞社から独立した立場で、広告主と第三者が関与する体制の構築

  2. デジタル技術の活用による可視化

    • 広告にQRコードや専用のURLを掲載し、それを読者がスマートフォンで読み取った回数やアクセス履歴を記録することで、「実際に広告が読まれたかどうか」の反応を数値で把握。

    • ただし、高齢者の多くはQRコードを読み取らないことから、QRアクセス数だけで配布部数や広告接触率を評価するのは極めて困難です。あくまで“参考指標のひとつ”として位置づけるべきであり、紙面接触や紙面滞留など、他の評価手法と併用する姿勢が求められます。

このような取り組みで実売部数が判明することはありません。しかし、こうした透明化の取り組みを新聞社自身が主体となって「広告の可視化」に取り組む覚悟がなければ、信頼の再構築は不可能です。

透明性の義務化(特に政府広報)

血税を使った広告出稿には、配布実績のトラッキングと公開を義務化すべきです。政府広報が「押し紙」によって本来届くべき生活者に届かず、結果的に税金が無駄になっている可能性は無視できません。

 

結論:“信頼できる数字”なくして、新聞広告の未来はない

ABC協会の数字が信頼を失った今、広告主は「透明性ある実配データ」を求めるべきです。読者反応の可視化や第三者監査の構築によってこそ、新聞広告は再び広告主にとって価値あるメディアとして再評価されるでしょう。

➡️次回(第6話・番外編)では、ついに公開された「録音テープ」をもとに、新聞社とABC協会の“共犯構造”の実態に迫ります。

➡️第6話(番外編):【録音テープ公開】毎日新聞・押し紙60%の衝撃とABC協会の“共謀構造”