はじめに:シリーズ最大の核心へ
これまでの回では、押し紙の定義、司法判断の揺れ、広告主のジレンマ、ABC部数の限界などを順に解説してきました。そして番外編となる本記事では、ついに“動かぬ証拠”を扱います。
録音テープと証言により、毎日新聞の押し紙構造がいかに深く、組織的に仕組まれていたのかが明るみに出ます。
この事実は、単なる新聞販売の問題ではなく、広告主と納税者を欺いてきた構造的な共謀の証明でもあります。
第1節:毎日新聞・押し紙60%の実態とは?
2018年11月、ジャーナリストの黒薮哲哉氏が発表した調査報道は衝撃的です。
元毎日新聞販売店主・板見英樹氏と、印刷システム会社・デュプロ株式会社の社員が、押し紙率が実に60%に達していたことを証言。さらに、録音テープによって“改ざんの手口”が克明に記録されていたのです。
▶ 証拠音声を含む記事はこちら: 新聞「ABC部数」はこうして改ざんされる(黒薮哲哉、メディア黒書 2018/11/22)
板見氏の証言によれば、
- 搬入部数:2,300部
- 実際の配布数:わずか980部
- 押し紙比率:約60%(1,320部)
という異常な実態が常態化しており、これまで“50%程度”とされてきた押し紙の推定値を大きく上回る深刻さでした。
第2節:録音に記録された“改ざんのリアル”
録音テープには、以下のようなやり取りが記録されています:
「“過去読”を“現読”にすり替えれば、ABC部数は稼げる」
「架空領収書?大丈夫、全部システムで自動化されてる」
「販売局の○○さんが“帳簿作りはおれたちがやるから”って言ってた」
ここで明らかになったのは、現場の店主だけでなく、新聞社本体が直接関与していたという点です。つまりこれは、“一部の暴走”ではなく、“組織的犯行”であることが明らかにされています。
さらに、帳簿の改ざんや領収書偽造に関わった人物たちの名前、方法、システム的な処理の流れまで録音されており、単なる証言とはレベルの異なる“確定的証拠”が存在していることになります。
第3節:ABC協会の“共謀”構造が露呈
本件で特に注目すべきは、日本ABC協会の関与です。
- 監査は”抜き打ち”ではなく、事前に販売店へ通知
- 監査前に帳簿と領収書を改ざん
- 残紙を処分する“演出”に新聞社販売局員が同席
- 外部業者(例:デュプロ)が改ざん業務を支援
つまり、形式上は”第三者監査”を装いながら、実態は新聞社・販売店・監査機関が三位一体で”偽装演劇”を演じていた構造に他なりません。
これは単なる不正ではありません。長年にわたり広告主と納税者を欺いてきた“共犯システム”の存在が、確定的に裏付けられた瞬間です。
第4節:結論!これは“新聞業界の不祥事”ではなく、“公共資源の汚染”である
押し紙60%、録音テープ、帳簿改ざん、そして組織ぐるみの監査操作。これらが一連の構造的な動きの中で行われていたことは、もはや疑いようがありません。
ここまで明確な証拠が揃いながら、新聞社・ABC協会いずれも組織的な責任を取る気配は見られません。もはや”新聞業界の慣習”の範疇を超えた重大な社会問題です。
- 広告主が支払った正当な広告費は、虚偽の部数データによって搾取された
- 政府広報などの血税までもが、配布されない新聞に消えた
- ABC部数という”基準”は、あらかじめ整えられた“演出の数字”だった
つまりこれは、公共資源の汚染なのです。私たち生活者、広告主、代理店、行政関係者全員が、これを許容してきたのかもしれません。
結論:この録音テープが意味するもの
本シリーズを通じて、押し紙をめぐる構造的な矛盾と、司法や制度の限界を検証してきました。
そしてこの最終話では、これまでの推論や主張を”証拠付きの実例”で裏付けた形になります。
司法は形式主義に縛られ、 販売店は声を上げづらく、 広告主は見て見ぬふりをし、 新聞社とABC協会は黙認し続けてきた。
そしてその末路が、“押し紙60%”という衝撃的な現実です。
新聞広告というビジネスが再び信頼を取り戻すには、この証拠と正面から向き合うしかありません。私たちも今こそ、「数字の真実」とどう向き合うのかを問われているのです。
➡️次回予告:
シリーズは今後、「関係者の生き残り戦略」へと展開していきます。裁判や証言で明らかになった構造的問題を踏まえ、新聞業界及び広告業界誠実に働いてきた人々にとっての現実的な道筋を提示していきます。新聞社のすべての職種が加害者ではなく、多くの人が被害者であるという視点から、次回以降は“転職”や“キャリア再構築”の具体的なアドバイスを行う予定です。
➡️Coming Soon:転職希望者向けのページを準備中です。新聞記者、広告部、営業、経理、総務、イベント系など、職種ごとの転職ナビゲーションを提供する予定です。続報にご期待ください。

