街には人が戻り、観光地には外国人旅行者も増えています。
それでも、飲食店の倒産は減っていません。
帝国データバンクによると、2026年上半期の飲食店倒産は473件。前年同期の458件を上回り、上半期として過去最多を更新しました。
さらに東京商工リサーチの集計では、2026年7月だけで112件が倒産。1~7月の累計は621件となり、前年を上回るペースで推移しています。
コロナ禍のように「客が来ない」だけが原因ではありません。
客が戻っても、売上以上に食材費、人件費、光熱費などが増えれば、店には利益が残りません。
現在の飲食店で何が起きているのか。最新の倒産データから見ていきます。
帝国データバンクと東京商工リサーチでは、調査対象や業種区分などが異なるため、飲食店・飲食業の倒産件数は一致しません。この記事では、同じ調査機関の数字同士で推移を比較します。
2026年も飲食店の倒産は過去最多ペース
帝国データバンクの「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)によると、1~6月の倒産は473件でした。
上半期として4年連続で増加し、過去最多です。
| 期間 | 倒産件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2025年上半期 | 458件 | ― |
| 2026年上半期 | 473件 | 3.3%増 |
特徴的なのは、倒産する店の規模です。
473件のうち、負債5,000万円未満の小規模倒産は369件。全体の78%を占めました。
つまり、大型外食企業が次々と倒れているというより、街の居酒屋、ラーメン店、中華料理店など、中小・零細規模の店が経営を続けられなくなっている状況です。
なぜ飲食店の倒産が増えているのか
現在の飲食店経営を苦しくしているのは、一つの大きな原因ではありません。
複数のコストが同時に上がっているのに、そのすべてを販売価格へ転嫁できないことが大きな問題です。
| 負担 | 飲食店への影響 |
|---|---|
| 食材費 | 米、肉、魚、野菜、油など幅広い食材価格が上昇 |
| 光熱費 | 厨房、冷蔵・冷凍設備、空調など店舗運営に直結 |
| 人件費 | 最低賃金上昇や人材確保のための賃上げが必要 |
| 値上げ | 価格転嫁したくても、客離れや競合店との価格差が怖い |
2026年上半期には、企業全体でも「物価高倒産」が556件に達し、過去最多となりました。
その要因では原材料価格だけでなく、人件費による倒産も増えています。
飲食店にとって厳しいのは、「材料だけ高い」「人件費だけ高い」という状況ではないことです。
いくつもの費用が一緒に上がっています。
値上げすれば解決するほど簡単ではない
コストが上がったなら、販売価格を上げればよい。
数字だけを見れば、その通りです。
しかし飲食店では、価格が来店理由に直結します。
例えば800円だったランチを950円にすれば、150円の値上げです。店にとって必要な価格改定でも、客から見れば約19%の値上げになります。
週3回来ていた客が週2回になる。コンビニやスーパーの弁当に切り替える。もう少し安い店を探す。
そうなれば、値上げによって1人当たりの利益が増えても、客数の減少で店全体の利益が減ることがあります。
「値上げしなければ利益が減る。でも、値上げすると客が減るかもしれない。」
特に、周囲に競合店が多い小規模店ほど難しい判断になります。
客が戻っても、利益まで戻るとは限らない
現在の飲食店倒産を理解するうえで、ここが最も重要だと思います。
売上が戻ることと、利益が戻ることは別です。
仮に来店客数がコロナ前と同程度まで戻っても、その間に食材、人件費、電気代などが上昇していれば、同じ売上では以前と同じ利益は残りません。
さらに飲食店には、家賃や正社員の給与など、客が少ない日でも発生する固定的な費用があります。
客数が減れば、1人の客が負担しなければならない固定費も大きくなります。
ラーメン店を例に、1杯の売上から材料費、人件費、家賃などを差し引くと実際にいくら残るのかは、当サイトのラーメン屋の原価率と1杯当たりの利益を検証した記事で具体的に計算しています。
特に倒産が多いのは居酒屋や中華・ラーメンなど
2026年上半期の倒産を業態別に見ると、居酒屋を中心とする「酒場・ビヤホール」が125件で最も多く、過去最多となりました。
町中華、ラーメン店、焼肉店、カレー店などを含む「中華・東洋料理店」も91件で過去最多です。
居酒屋では、大人数の宴会や二次会需要の減少、若い世代のアルコール離れなど、コスト上昇とは別の変化も起きています。
一方、ラーメンや中華料理などでは、食材や人件費の上昇を価格に十分転嫁できない店の苦戦が目立ちます。
つまり、すべての飲食店が同じ理由で倒産しているわけではありません。
ただ、「コストが上がる一方で、客数や価格を自由には増やせない」という点は、多くの業態に共通しています。
大手チェーンと小さな店では状況が違う
ここで注意したいのは、「飲食業界全体が不況」というわけではないことです。
帝国データバンクは、大手チェーンの中には規模を生かして仕入れコストを抑え、値上げも進めることで増収増益となっている企業がある一方、中小規模の飲食店では業況悪化が目立つと分析しています。
大手には、大量仕入れ、セントラルキッチン、店舗間の人員調整、広告・アプリによる集客など、規模を生かせる部分があります。
個人店や数店舗の事業者には、同じ方法は取りにくいでしょう。
その結果、同じ「飲食店」でも企業規模によって収益力の差が広がっています。
これからは食料品の消費税減税も影響する可能性がある
今後は、もう一つ注意すべき政策があります。
政府は、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品について、2027年4月から2年間、消費税率を1%へ引き下げる基本方針を示しています。
現在の制度区分が維持されれば、食料品は1%、飲食店での店内飲食は10%となります。
家で食べる食品と外食との価格差が意識されるようになれば、飲食店にとって新たな逆風となる可能性があります。
一方で、政府は外食産業への影響を踏まえた支援策も検討しています。
この問題については、食料品の消費税1%で飲食店はどうなるのかを検証した記事で詳しく整理しています。
飲食店は「売上」より「いくら残るか」が重要になっている
飲食店の倒産が増えている状況を見ると、「客を増やせば解決する」とも言い切れません。
もちろん集客は必要です。
しかし、1人の客が来店したときに十分な利益が残らなければ、忙しくなっても経営が改善しないことがあります。
これからの飲食店では、売上だけでなく、
- 1人当たりの粗利益はいくらか
- どの商品が利益を作っているか
- 何人来店すれば固定費を回収できるか
- 値上げすると客数がどの程度変わるか
といった数字を見ることが、これまで以上に重要になります。
広告やSNS、Googleマップで集客する場合も同じです。
利益が残る仕組みを作ったうえで客を増やす。
順番を間違えると、売上が増えても資金繰りが苦しくなることがあります。
まとめ|飲食店倒産は「客が来ない」だけでは説明できない
2026年も飲食店の倒産は過去最多ペースで推移しています。
しかし、現在の状況を単純な「飲食店離れ」だけで説明することはできません。
食材、光熱費、人件費が上がる。一方で、値上げをすれば客離れが怖い。
その板挟みになっているのが、特に中小・零細規模の飲食店です。
客が戻っても、以前と同じ利益が残るとは限りません。
現在の飲食店倒産で起きているのは、売上の問題だけではなく、「売っても利益が残りにくくなった」という収益構造の変化です。
今後、食料品の消費税減税や外食産業への支援策が具体化すれば、飲食店を取り巻く環境はさらに変わります。
倒産件数だけでなく、その背景にある「店にいくら残るのか」を見ていく必要がありそうです。

