大手広告代理店と小売企業が相次いで参入し、リテールメディアは次の成長市場として語られています。
購買データを活用できる。広告接触から購入まで効果を測定できる。
そして、小売企業に新たな広告収入が生まれる。
国内のリテールメディア広告市場は、2025年の6,066億円から、2029年には1兆3,174億円まで拡大すると予測されています。
電通や博報堂をはじめとする大手広告会社も、コンビニ、ドラッグストア、スーパーなどとの取り組みを急速に進めています。
確かに、リテールメディアには大きな可能性があります。
しかし、広告費を払った企業の商品が、ECサイトの検索上位や店頭の良い場所を占めるようになったとき、生活者の商品選択は本当に豊かになるのでしょうか。
さらに、広告枠を販売する小売企業が、同時に商品の仕入れ、棚割り、販売企画まで握っている場合、メーカーは本当に自由な意思で広告を購入しているのでしょうか。
そして、この市場を強く推進しているのは誰なのでしょうか。
生活者には広告であることが見えず、メーカーには広告を断る自由がない。
リテールメディアについては、成長性や広告効果を評価する記事が大半です。
そこで本記事では、現在あまり語られていない問題点を、生活者、メーカー、店舗、小売企業、広告代理店という複数の立場から考えます。
なお、本記事はリテールメディアを一方的に批判するものではなく、筆者が広告・媒体の現場で実際に見聞きしてきた内容をもとに、その可能性と問題点をできる限りフラットに検証するものです。
リテールメディア市場の「正体」を確認する
市場の大半は店頭広告ではない
リテールメディアという言葉から、コンビニやドラッグストアの店頭サイネージを思い浮かべる人は多いと思います。
しかし、市場規模の中心は、Amazonや楽天市場などのECサイト内広告です。
業界調査によれば、2025年の国内リテールメディア広告市場6,066億円のうち、EC事業者による広告は5,236億円で、全体の約86%を占めます。実店舗事業者による広告は830億円です。
2029年には実店舗事業者分も1,939億円まで拡大すると予測されていますが、市場全体に占める割合は約15%です。1兆円を超える市場予測の中心が、引き続きEC事業者であることは変わりません。
ECサイトの検索結果に表示されるスポンサー商品、バナー広告、小売企業の購買データを利用した外部サイトへの広告配信、アプリ、クーポン、店頭サイネージなどが、現在はまとめてリテールメディアと呼ばれています。
つまり、以前から存在したEC広告まで含めて、「急成長する新市場」として再定義されている面があります。
EC、アプリ、POSデータ、店頭サイネージを横断して活用するには、EC広告よりも広い名称が必要です。
その意味で、リテールメディアという概念自体には合理性があります。
ただし、市場規模の大きさだけを見て、店頭サイネージや売場メディアが一気に1兆円市場になると考えるのは誤りです。
また、リテールメディアに投下される予算も、すべてが新しく生まれた広告費とは限りません。
テレビ、デジタル広告、OOH、販売促進費、営業費などから移動している部分が相当あるはずです。
リテールメディア市場が拡大することと、日本全体の広告予算が同じだけ純増することは、分けて考える必要があります。
誰がこの市場を推進しているのか
ここで一度、視点を変えて考えてみます。
リテールメディアは、少なくとも生活者側の要望から自然に生まれた市場とは言いにくいでしょう。
メーカー側にも購買データの活用や売上効果の測定に対する需要はありますが、市場拡大を強く推進しているのは、小売企業と広告代理店を中心とする広告事業者です。
デジタル広告のインハウス化、巨大プラットフォームへの広告費集中、テレビ広告市場の変化など、従来型の広告代理店ビジネスは構造的な変化にさらされています。
そのなかでリテールメディアは、広告代理店にとって新たな収益機会になります。
小売企業にリテールメディア事業の立ち上げを提案すれば、システム構築、広告商品の設計、広告営業、運用、効果測定、メーカーとの調整まで、広告代理店が関与できる領域が広がります。
さらに、リテールメディアの窓口を押さえることで、メーカーが持つ他の広告予算にも関与しやすくなります。
筆者が業界関係者との会話で耳にした内容の趣旨をまとめると、次のようなものです。
「大手メーカーのA社を先に動かせば、競合のB社、C社も追随する」
「リテールメディアの提案を入口に、メーカーの他の予算にも入り込める」
「小売企業のリテールメディア窓口を押さえれば、その小売企業への出稿全体に関与できる」
こうした発想自体は、営業活動として不自然ではありません。
しかし、この構図が意味するのは、リテールメディア市場の拡大が、必ずしも「生活者にとってより良い買物体験」を起点にしていないということです。
新たな収益源を求める小売企業と、既存事業の変化に直面する広告代理店。両者の利害が一致した結果として、市場が急速に立ち上がっている面があります。
事業者が新しい収益源を模索すること自体を非難するつもりはありません。
ただし、市場拡大の推進力が生活者側にない場合、生活者を保護するルールが、事業者側から自然に生まれるとは限りません。
広告費が売場の公平性を変えないか
売場は単なる広告枠ではない
本来、小売店の売場には二つの役割があります。
一つは、商品を販売して利益を得ること。
もう一つは、生活者にとって必要な商品や良い商品を選び、分かりやすく提示することです。
小売店は、商品を並べるだけの倉庫ではありません。
- この地域では何が必要なのか
- 今の季節には何が売れるのか
- 価格の割に品質が良い商品はどれか
- 高齢者や子育て世帯には何が使いやすいのか
- 今週、お客様に勧めたい商品は何か
こうしたことを考えて商品を並べる、地域の「編集者」でもあります。
ところが、リテールメディアの広告収益が大きくなると、売場の判断基準が変わる可能性があります。
「何を生活者に勧めるべきか」から、
「誰が広告費を払ったか」へ。
これは、リテールメディアが抱える本質的な問題です。
これまでの売場も完全に公平ではなかった
もちろん、これまでの売場が完全に公平だったわけではありません。
棚割りや陳列場所には、販売実績、本部との商談、特売への参加、メーカー協賛、販売奨励金、プライベートブランド戦略などが影響してきました。
店長や店舗スタッフだけが、自由に商品を選んでいたわけではありません。
公正取引委員会も、大規模小売業者が取引上の地位を利用し、納入業者へ不当に協賛金などを負担させる行為は、優越的地位の濫用として問題になり得るとしています。
参考:公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
しかし、以前からあった問題だから、今後もそのままでよいわけではありません。
リテールメディアによって変わるのは、その規模と継続性です。
これまで部分的だった商業的な売場支配が、デジタル化によって大規模・自動的・継続的になる可能性があります。
EC検索、アプリ、クーポン、入口のサイネージ、棚前、レジ前、店内放送まで広告商品としてつながれば、生活者が商品を選ぶ空間全体が広告媒体になります。
安くて良い商品ほど不利にならないか
リテールメディアへ大きな広告費を投下できるのは、一般的には大手メーカーです。
一方で、次のような企業や商品は、大規模な広告予算を用意できない場合があります。
- 地方メーカー
- 中小企業
- 新興ブランド
- 利益率を抑えた低価格商品
- 広告よりも商品開発に資金を使う企業
- 広告費を商品価格に転嫁していない企業
その結果、
高品質だから目立つ。
価格が安いから勧められる。
地域の生活に合っているから良い場所に置かれる。
のではなく、
広告費を払ったから目立つ。
という売場になりかねません。
広告宣伝費を商品価格へ上乗せせず、安くて良い商品を作っている企業ほど、生活者の目に入らなくなるとすれば、それは生活者ファーストとは言えません。
大企業の商品が悪いという話ではありません。
問題は、商品の品質や価格とは別の「広告費を払えるか」という条件が、生活者からの見え方を大きく左右することです。
店舗スタッフの知見はどこへ行くのか
店舗のスタッフは、日々の接客と売場の動きを通じて、地域の顧客が求めている商品、実際によく売れる商品、苦情の少ない商品、リピーターの多い商品、季節や天候に合った商品を把握しています。
しかし、本部がリテールメディア契約を優先し、広告主の商品を目立つ場所へ置けば、現場の経験と本部の広告契約が衝突します。
北海道と沖縄で、同じ商品を同じ時期に同じ強さで訴求することが適切とは限りません。地域や店舗の立地によって、来店者が必要とする商品は変わります。
POSデータや天候データを使えば地域最適化できる、という説明はできます。
しかし、広告商品としては全国一括で販売した方が効率的です。広告枠の標準化が進むほど、地域や店舗の個別事情が後回しになる可能性があります。
店舗スタッフから見れば、
「お客様に勧めたい商品」ではなく、
「広告契約がある商品」を勧めることになります。
売場づくりに関する現場の裁量が失われれば、仕事への誇りや参加意識にも影響するでしょう。
生活者には広告だと分かるのか
SNSにはPR表記が必要なのに、店頭にはなぜないのか
現在、SNSやブログで広告主から報酬を受けて商品を紹介する場合は、「広告」「PR」など、広告であることが分かる表示が求められます。
消費者庁は、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す行為を、2023年10月から景品表示法上のステルスマーケティング規制の対象にしています。
広告だと分かれば、生活者は販売意図を考慮して判断できます。
しかし、第三者の中立的な意見や自然な評価だと思えば、合理的な商品選択を妨げられる可能性があります。
この考え方を店頭に当てはめると、大きな違和感があります。
メーカーが費用を支払って、次のような露出を確保しても、その事実は生活者には分からない場合があります。
- 店頭の一等地を確保する
- 目線の高さの棚を押さえる
- レジ前や入口付近へ商品を置く
- 店員推奨風のPOPを掲出する
- EC検索の上位へ商品を表示する
- 「おすすめ商品」やランキングへ掲載する
ECサイトでは「スポンサー」と表示される場合がありますが、表示が小さく、生活者が有料露出だと明確に認識しているとは限りません。
店頭に至っては、良い場所に商品が並んでいる理由は、ほとんど表示されません。
生活者は、
「この店が良い商品だと判断したから、ここに置いている」
と思うかもしれません。
実際には広告契約やメーカー協賛によって決まっているなら、小売店による推薦と、広告費による露出の境界が隠されていることになります。
現行法上、広告費で確保された棚位置に「PR」と書かれていないことが、直ちに違法とは言えません。通常の広告POPやCMのように、広告であることが明らかなものもあります。
それでも、消費者保護の理念から見れば不自然です。
SNSやブログにはPR表記が必要なのに、購入を決める直前の売場では、広告費による優先露出であることを示さなくてよい。
リテールメディア市場が1兆円規模へ成長するのであれば、この制度上の空白は必ず議論に上がってきます。
メーカーには「出稿しない自由」があるのか
本当に自由に断れる広告だったのか
生活者からは見えにくい、もう一つの重大な問題があります。
それは、メーカー側に本当に広告を断る自由があるのか、という問題です。
一般的な広告媒体は、広告主の商品を仕入れません。
テレビ局や新聞社、屋外広告会社へ出稿しなかったからといって、商品の仕入れを減らされることは通常ありません。
しかし、小売企業は違います。
小売企業は同時に、次の立場を持っています。
- 商品を仕入れる買い手
- 棚の位置を決める売場管理者
- 販売企画を決める事業者
- 生活者に商品を販売する店舗
- リテールメディアの広告枠販売者
リテールメディアは広告商品である以上、広告主には「出稿しない自由」がなければなりません。
しかし、広告枠を販売する小売企業が、同時に商品の仕入れ、棚割り、販売企画を握っている場合、メーカーは本当に自由に出稿を断れるのでしょうか。
本当に自由に断れる広告だったのか。
広告効果が高いかどうか以前に、この点が決定的に重要です。
出稿しない自由がなければ、広告ではない
実際に聞いた話があります。
ある大手飲料メーカーをA社とします。
A社は、ある小売企業のリテールメディアへ大規模に出稿し、売場の良い場所を確保しました。
すると、競合するB社やC社にもプレッシャーが生まれます。
一つは、A社に広告上の競争で負けるという不安です。
もう一つは、次のような取引上の不安です。
「A社は小売企業のリテールメディア事業へ積極的に協力している。自社が出稿しなければ、今後の仕入れ、棚割り、新商品の採用、販売企画などで不利になるのではないか」
小売企業が、露骨に出稿を強制する必要はありません。
例えば、次のように伝えるだけでも、競合メーカーには圧力になり得ます。
- 「A社はこれだけ取り組んでいます」
- 「御社としては、どのようにお考えですか」
- 「今後、当社はリテールメディアを重視していきます」
言葉の上では「広告の提案」です。
しかし、提案する側が商品の仕入れと棚を握っている以上、メーカーにとっては普通の広告営業とは意味が違います。
そして、B社やC社まで出稿すれば、翌年には、
「競合各社が継続しています」
という事実が、新たな圧力になります。
A社の出稿がB社を動かし、B社の出稿がC社を動かす。
これは広告効果によって市場が拡大するというより、取引関係と競争不安によって、広告予算が連鎖的に膨らむ仕組みになり得ます。
少なくとも筆者が実際に耳にした事例では、業界大手を先に動かし、競合各社の追随につなげる営業の考え方が意識されていました。
「下請けいじめ」に近い構造ではないか
この構造は、感覚的には「下請けいじめ」に近いものがあります。
ただし、法的には、一般の商品仕入れと広告出稿の問題が、2026年1月施行の取適法の典型的な対象になるとは限りません。中心的に検討されるのは、独占禁止法上の優越的地位の濫用です。
公正取引委員会は、取引上優越した立場にある事業者が、継続的な取引相手へ、本来の取引とは別の商品やサービスを購入させる行為を「購入・利用強制」として整理しています。
問題になるのは、「購入しなければ取引を停止する」と明言した場合だけではありません。取引数量を減らすことを示唆したり、事実上購入を余儀なくさせたりする場合も、個別の事情によっては問題になり得ます。
もちろん、リテールメディアへの出稿が直ちに違法になるわけではありません。
メーカーが広告効果や条件を理解し、自由な意思で購入しているのであれば、通常の広告取引です。
しかし、次のような理由で出稿しているのであれば、それを純粋な広告需要と呼んでよいのでしょうか。
- 出稿を断った後の仕入れが不安
- 棚を縮小されるのが不安
- 新商品を採用してもらえなくなるのが不安
- 競合だけが優遇されるのが不安
- 今後の商談関係を悪化させたくない
出稿しない自由がなければ、それは広告というより、取引関係を維持するための負担に近づきます。
証拠が残らないからこそ問題が見えにくい
「広告を出さなければ、仕入れを減らす」と文書に書く企業は、まずありません。
圧力は、商談中の含みのある言葉、競合他社の出稿実績の提示、今後の取引関係への示唆、出稿後と非出稿後の扱いの違い、毎年の慣例化した要請などとして表れます。
そのため、明確な証拠は残りにくくなります。
しかし、証拠が残りにくいことと、構造上の問題が存在しないことは別です。
- リテールメディアの広告営業と仕入れ商談は分離されているのか
- 広告を断ったメーカーの仕入れや棚割りは、本当に影響を受けないのか
- 出稿金額は広告効果に見合った合理的なものなのか
- メーカーに、断っても不利益を受けないという安心があるのか
市場が拡大するほど、こうした点を検証する必要があります。
リテールメディアが抱える最大のリスク
生活者には広告と見えず、メーカーには断る自由がない
リテールメディアの問題を一言で表すなら、次の言葉に集約できます。
生活者には広告であることが見えず、
メーカーには広告を断る自由がない。
生活者は、なぜその商品が良い場所にあるのかを知りません。
広告費で選ばれた商品を、店舗が品質や価格を評価して選んだ商品だと受け取る可能性があります。
一方のメーカーは、小売企業が仕入れと棚を握っているため、広告効果だけで出稿を判断できない可能性があります。
この二つが同時に起きるなら、リテールメディアは単なる広告市場ではありません。
小売企業が持つ仕入れ権と、生活者から寄せられている売場への信用を使って、広告収益を拡大する仕組みに変質します。
これは小さな運用課題ではなく、事業の根幹に関わる問題です。
生活者が「おすすめの正体」に気づいたとき
このまま広告量が増えていけば、どこかで生活者が気づく可能性があります。
きっかけは、一人のインフルエンサーかもしれません。
- 「店頭のおすすめ商品は、店舗スタッフが選んだものではなく、有料広告枠だった」
- 「検索結果の一番上の商品より、下にある商品の方が安く、評価も高かった」
- 「おすすめランキングではなく、広告費ランキングではないか」
こうした情報は生活者にとって分かりやすく、SNSで一気に広がる可能性があります。
良い場所にある商品が、必ずしも良い商品ではない。
おすすめ表示が、必ずしも店舗のおすすめではない。
その認識が広がれば、生活者は小売店やECサイト内の情報を信用せず、SNS、口コミ、比較サイト、動画、生成AIなどを使い、来店前に商品を選ぶようになるでしょう。
これまで「SNS対オールドメディア」という構図がありました。
今後は、
生活者による外部評価と、小売企業が販売する有料推薦枠との対立
が生まれる可能性があります。
リテールメディアを否定する記事ではない
リテールメディアのすべてが悪いわけではありません。
- 欲しい商品に関係する広告を適切な場所で見せる
- 地域、天候、在庫に合わせて情報を変える
- 新商品を知る機会を提供する
- 広告収入によって店舗サービスを維持する
- 中小企業にも手頃な広告機会を提供する
こうした運用ができれば、生活者にもメリットがあります。
また、従来の店長や店舗スタッフの判断も、完全に客観的だったわけではありません。在庫処分や本部指示、個人の経験によって、売場は影響を受けます。
したがって、争点はリテールメディアを排除することではありません。
広告費によって優先された商品と、小売店が生活者のために選んだ商品を、明確に区別できるか。
ここが重要です。
リテールメディアが信頼を失わないために必要なルール
リテールメディアを長期的に成長させるのであれば、最低限、次のようなルールが必要です。
有料露出であることを明示する
ECサイトだけでなく、棚、ランキング、店員推奨風POPなども、広告契約による露出であれば、「広告」「PR」「スポンサー商品」「メーカー協賛企画」などと表示します。
オーガニックな売場を残す
広告費とは関係なく、価格、品質、販売実績、地域性、店舗スタッフの判断によって商品を選ぶ枠を確保します。
「店舗推奨」と「スポンサー商品」を区別する
店長おすすめ、スタッフ推薦、売上ランキング、メーカー広告を同じように見せず、それぞれの選定基準を明確にします。
店舗と地域に裁量を残す
全国一律の広告契約だけで売場を埋めず、気候、客層、在庫、地域性に応じて店舗が変更できる範囲を残します。
広告量に上限を設ける
検索結果や売場の大部分がスポンサー商品にならないようにし、生活者が自然に商品を比較できる環境を維持します。
中小企業や地域商品が参加できる仕組みを作る
大企業だけが良い場所を独占しない料金体系や、地域メーカー専用枠を設けます。
広告営業と仕入れ商談を分離する
リテールメディアへの出稿実績が、仕入れ、棚割り、新商品の採用などの判断へ影響しないルールを設けます。
そして何より、メーカーが広告出稿を断っても、取引上の不利益を受けないことを明確にする必要があります。
成長市場だからこそ、今のうちに考えるべきこと
リテールメディアには、広告接触と購買をつなぐ可能性があります。小売企業にとっても、新たな収益源になるでしょう。
しかし、その成長が、小売企業の仕入れ権と、生活者からの信用を収益化することで成立するのであれば、話は変わります。
生活者は、売場の良い場所にある商品を、単なる広告枠だとは考えていません。
この店が商品を選んだ。
一定の品質を確認した。
ここに置く理由がある。
そうした暗黙の信頼があります。
その信頼を利用して広告商品を推奨しながら、有料露出であることを示さなければ、短期的な広告収益と引き換えに、小売店の信用を少しずつ失うことになります。
そして、広告枠を販売する小売企業が、商品の仕入れと棚まで握っている以上、メーカーに出稿しない自由があるのかも問われなければなりません。
生活者には広告であることが見えず、
メーカーには広告を断る自由がない。
そのような市場を、健全な成長市場と呼ぶことはできません。
リテールメディアが1兆円を超える市場を目指すのであれば、広告主、小売企業、広告代理店の利益だけでなく、生活者を保護し、取引先企業の自由な判断を守るルールが必要です。
これは、リテールメディアの成長を妨げるための議論ではありません。
小売企業が長年築いてきた売場への信頼を守り、リテールメディアを一時的な収益源ではなく、長く成立する広告市場にするために必要な議論です。

