【30秒でわかるこの記事の結論】どんなに優れた「信頼インフラ」の設計図も、それを実行する「人」が旧態依然としたままでは機能しません。メディア再生の最大の壁は、派閥や年功序列による「内向きの人事」です。外部人材や、現状を疑う若手を抜擢する「透明な人事」へ切り替えること。その配置そのものが、組織が本気で変わることを世間に示す「最大のメッセージ」となります。
1. なぜ「正しい戦略」が失敗するのか
多くの組織は、戦略の立て方以上に「人の動かし方」を間違えます。
- 「誰がやるか」がすべて: 第2話、第3話で提示した「公開ログ(制作プロセスの公開)」や「検証文化」は、過去の慣習を壊すリスクを伴います。
- 適材適所の欠如: 実装する人材の適性が戦略とズレていれば、プロジェクトは必ず失敗します。マスメディアの再設計は、スローガンではなく「実行力」の戦いです。
2. 未来を阻む「内向き人事」の正体
日本企業、特に伝統あるメディア組織には、変革を足止めする「人事の重力」が存在します。
- バランス人事:各部署の顔を立てた妥協的な配置。
- 派閥調整:権力構造を維持するための抜擢。
- 年功序列:功績ではなく「順番待ち」による昇進。
- 無難な選定:「失敗しないこと」が最大の評価基準。
これらは組織を安定させるには有効ですが、AI時代に合わせて「信頼のスタンダード(基準)」を作り直すフェーズでは、致命傷になります。
3. メディア再生に必要な「3つの人事レイヤー」
失われた信頼を取り戻し、新しい「情報の基準」を作るには、3つの異なる人材層を組み合わせる必要があります。
① 「ベテラン」の役割を変える
- 現状:知名度のあるキャスターや記者が、単に情報を伝える「伝えるプロ」として機能している。
- 変革後:彼らを「情報の裏付けを徹底する姿勢」の象徴に据える。ベテランが持つ「長年の信頼感」を、記事の制作プロセスを公開する新しい仕組みの「保証人」として再配置します。
② 「次世代」にバトンを渡す
- 現状:若手が現場を走り、上司の顔色を見て記事を書く「使い走り」になっている。
- 変革後:デジタル社会の感覚を持ち、「何が怪しくて、何が信じられるか」を肌感覚で理解している若手を前面に出す。古いブランドの維持よりも、新しい時代の誠実さを優先させます。
③ 「外部の目」を心臓部に入れる
- 現状:生え抜き社員だけで改革を進めようとする。
- 変革後:社内のしがらみに縛られない外部人材や、社内で「異端」とされていた人材に権限を与える。現状を否定し、新しい収益モデルを冷徹に推進するリーダーを招聘します。
4. 人事は「社会に対するメッセージ」である
「誰を評価し、誰をトップに据えるか」という配置は、単なる社内の管理業務ではありません。生活者に対する「私たちはこういう価値観で生きていく」という宣言です。
- 新しい評価基準:「不都合な事実を隠さなかった人」「間違いを正直に認めて訂正した人」「検証プロセスを何より優先した人」を昇進させる。
- 信頼契約の更新:生活者はニュースの内容だけでなく、「どんな価値観の人たちが作っている組織なのか」を見ています。評価される「人」の姿こそが、新しい信頼の裏付けになります。
結論:人事こそが最後の、そして最大の戦い
マスメディアにとってのラストチャンスとは、「信頼を証明する『人』を選び抜く人事」を活かせるかどうかです。
派閥や慣習という昔ながらの価値観に打ち勝ち、透明性と検証力を体現できる人材を軸に組織を組み直す。この痛みを伴う作業をやり遂げた組織だけが、AI時代に「信頼」という資産を収益に変える資格を得るのです。
次号予告(最終回)広告は露出競争から信頼競争へ。AI時代にマスメディアと広告代理店が担う新しい役割を最終回で解説します。
👉マスメディアのラストチャンス【最終回】 広告は“信頼”に回帰する
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👉マスメディアのラストチャンス【シリーズ総まとめ】AI時代の“信頼インフラ設計

