全国紙5紙の決算比較【2026年版】|朝日・日経・毎日・読売・産経の売上と利益を読む

この記事は、全国紙5紙の最新の決算を横並びで比較しながら、各社の現在地と今後を読み解くための記事です。

「公開情報ベースでここまで全国紙5紙の決算を横断比較した記事は、かなり珍しいはずです。」

公開されている決算資料・会社開示・業界報道をもとに、広告業界で30年近く現場を見てきた視点から、数字の意味を実務的に整理しました。

新聞社別の個別記事もあります

全体像をつかんだうえで各社を深掘りしたい方は、以下もご覧ください。

この記事の結論

全国紙5紙の決算を並べて見えてくる、核心の3点です。

  1. 同じ「新聞社」でも収益構造はまったく違う
    規模が大きい会社がそのまま強いとは限りません。単体・連結・グループベースのどの数字を見るかによっても、印象が大きく変わります。
  2. 日経だけ景色が違う
    2024年・2025年の両年で、売上・営業利益ともに相対的な強さが際立っています。「新聞社」というより、情報サービス企業としての強みが数字に表れています。
  3. 朝日・読売・毎日・産経は「何で利益を出しているか」まで見る必要がある
    本業採算・不動産・周辺事業の比重によって、同じ売上減少でも意味がまったく変わります。特に毎日は、単年の黒字だけで判断するのは正確ではありません。

比較前に知っておきたい前提

数字を並べる前に、読み方のルールを共有します。

決算期が各社で違う

会社 決算期 1期の期間
朝日・毎日・産経 3月期 4月〜翌3月
日経 12月期 1月〜12月
読売 3月期 基幹社ベース(後述)

同じ「2024年」「2025年」という表記でも、厳密には指している期間が一致しません。

単体・連結・基幹社ベースは同じ意味ではない

  • 朝日・毎日・日経・産経:単体と連結の両方、またはいずれかで比較可能
  • 読売:単体は公表無し。「読売新聞グループの基幹6社・7社ベース」の数値を使用

読売だけは「グループ主要会社をまとめたベースの数字」として読む必要があります。

つまり、分かりやすく説明するとこういうことです。

  • 連結決算
    → 親会社と子会社を、会計ルールに従って1つの会社のようにまとめた正式な決算
  • 基幹社ベース(読売)
    → グループの中の主要な会社だけを選んで合算した見せ方

本記事で使う数字のルール

  • 2020年度〜2024年度の通期数値を中心に比較
  • 2025年欄は、12月決算期の日経のみ記載
  • 朝日・毎日・産経・読売は2026年3月時点で2025年度通期が3月期で未公表のため空欄

全国紙5紙の主要数値一覧

単位:億円 ※マイナス(▲)は赤字・損失。—は未公表または確認できない項目。

まずは単体から見て行きましょう(読売は基幹社ベース公表の為なし)

朝日新聞社(単体)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 2,102.86 1,881.98 1,819.50 1,829.98 1,758.91
営業利益 ▲74.06 79.40 ▲19.23 46.90 32.28
経常利益 ▲47.53 109.90 24.82 86.04 80.09
純利益 ▲458.87 60.54 ▲3.79 55.10 72.74

毎日新聞社(単体)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 800.31 624.43 595.23 579.66 560.72
営業利益 ▲28.00 0.24 ▲11.96 ▲14.06 9.25
経常利益 ▲26.74 1.06 ▲10.96 ▲9.15 12.46
純利益 1.91 ▲4.07 30.01 ▲7.36 52.32

日本経済新聞社(単体)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 1,769.28 1,807.30 1,751.85 1,734.61 1,770.24 1,777.07
営業利益 94.29 132.32 131.12 99.68 119.41 106.86
経常利益 108.64 149.65 150.79 123.95 139.13 125.60
純利益 43.55 110.97 93.06 103.69 113.52 109.22

産経新聞社(単体)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 584.75 509.45 504.70 497.59 499.06
営業利益 12.80 6.08 2.23 3.13 10.27
経常利益 16.83 8.45 5.04 5.04 11.27
純利益 8.09 19.42 11.36 ▲28.88 7.91

読売新聞社(単体):未公表

連結・グループベース

読売新聞グループ(基幹6社/7社ベース)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 3,067.08 2,562.12 2,720.33 2,588.03 2,709.38
営業利益 ▲95.23 44.65 55.34 ▲26.21 46.39
経常利益 ▲51.81 87.17 107.51 42.14 106.20
純利益 ▲41.85 39.16 55.66 50.35 62.58

朝日新聞社(連結)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 2,937.71 2,724.73 2,670.31 2,691.16 2,780.68
営業利益 ▲70.31 95.01 ▲4.19 57.81 56.19
経常利益 ▲5.07 189.25 70.62 130.69 165.39
純利益 ▲441.94 129.43 25.92 98.99 97.65

毎日新聞社(連結)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 1,537.40 1,304.56 1,285.45 1,267.21
営業利益 ▲18.37 15.06 0.20 ▲12.07
経常利益 ▲12.88 21.48 5.70 ▲5.18
純利益 7.33 8.21 37.59 ▲14.79

※毎日は2024年度の連結を発表していません。理由は不明ですが、制度上出せないからではなく、持株会社連結を積極的に発信する必要が薄いことに加え、開示の見せ方として単体中心に寄せたのかもしれません。

日本経済新聞社(連結)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 3,308.00 3,529.05 3,584.32 3,665.02 3,822.23 3,938.13
営業利益 84.81 198.23 181.58 114.03 141.29 168.22
経常利益 126.21 221.90 224.57 161.30 143.01 195.85
純利益 13.86 123.70 118.91 97.12 83.24 110.60

産経新聞社(連結)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年
売上高 878.93 783.97 786.90 741.40 734.15
営業利益 14.66 8.10 6.78 1.31 15.86
経常利益 16.90 9.13 7.39 1.66 16.70
純利益 5.70 19.48 9.84 ▲34.03 11.77

 

決算表の一覧をダウンロードできます。
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売上規模から何が見えるか

2024年度の主な売上規模(連結規模)を並べると、構図はこうなります。

会社・区分 2024年度売上(億円)
日本経済新聞社(連結) 3,822.23
朝日新聞社(連結) 2,780.68
読売新聞グループ(基幹7社) 2,709.38
毎日新聞社(連結) 1,267.21(2023年度)
産経新聞社(連結) 734.15

一見「日経が最大、読売・朝日が続き、毎日・産経は小さい」という構図に見えます。ただし、売上規模はあくまで会社の大きさの一側面であって、稼ぐ力そのものではありません。

5年推移で見えること:

  • 日経単体:2020年度1,769億円 → 2024年度1,770億円 → ほぼ横ばい
  • 朝日単体:2020年度2,103億円 → 2024年度1,759億円 → 約344億円(約16%)縮小
  • 毎日単体:2020年度800億円 → 2024年度561億円 → 約239億円(30%)縮小
  • 産経単体:2020年度585億円 → 2024年度499億円 → 約86億円(15%)縮小
  • 読売グループ:2020年度3,067億円 → 2024年度2,709億円 → 約358億円(約12%)縮小

全国紙はすべて同じ速度で縮小しているわけではありません。縮小の度合い、踏ん張り方、どの収益源が補完しているかが会社ごとに大きく違います。

特に毎日新聞社は、一般的な事業会社の感覚ではかなり異例の縮小率です。5年で売上が3割落ちています。これは普通の事業会社では異例です。毎日新聞社が示しているのは、本業の強さというより、新聞社という業態が持つ資産・不動産・ブランド・グループ構造によって、何とか時間を買っている現実ではないでしょうか。

利益で見ると、どこが本当に強いか

営業利益は「本業でどれだけ稼げているか」に最も近い数字です。

2024年度の営業利益(連結または基幹社ベース):

会社 営業利益(億円)
日本経済新聞社(連結) 141.29
朝日新聞社(連結) 56.19
読売グループ(基幹7社) 46.39
産経新聞社(連結) 15.86
毎日新聞社(単体) 9.25

売上ランキングとは異なる差がはっきり見えます。特に日経は、連結売上3,822億円に対して営業利益141億円を確保し、2025年公表値ではさらに168億円まで伸ばしています。

日経だけ景色が違って見える理由

日経が全国紙の中で異質に見えるのは、単に規模が大きいからではありません。

日経が強い理由(3点):

  1. 紙に依存しない収益構造がある
    電子版、法人向け情報、データサービス、イベントなど、発行部数が落ちても別の形で価値を売りやすい
  2. 情報の単価を上げやすい
    経済・金融・企業情報は「仕事に使う情報」であり、個人の娯楽より価格耐性が高い
  3. 単体売上が崩れていない
    2020年度〜2025年公表値でほぼ横ばいという事実は、全国紙の中でかなり異質

ただし、日経にも課題はあります。AI要約の普及、無料情報の増加、メディア環境の変化は日経にも影響します。「今後も情報を高く売れる構造を更新し続けられるか」が問われる立場です。

朝日・読売・毎日・産経の課題

朝日新聞社

  • 強み:連結で売上2,780億円・営業利益56億円と規模・利益ともに一定水準
  • 課題:単体売上が2020年度→2024年度で約344億円縮小。「本体の縮小」と「連結での支え方」を分けて読まないと実態を誤読します

読売新聞グループ

  • 強み:基幹7社ベースで2024年度売上2,709億円と依然大きい
  • 課題:2020年度比で約358億円縮小。2020年・2023年は営業赤字。「大きいこと」と「成長していること」は別。基幹社ベース開示のため実態が見えにくいのが特徴です

毎日新聞社

  • 状況:単体では2024年度に営業利益9.25億円・純利益52.32億円まで改善
  • 課題:単体売上は5年で約239億円縮小。2023年度連結は営業赤字12億円。不動産活用(パレスサイドビルの再開発・売却を含む活用策が報じられた)まで含めた経営判断が論点になっており、数字の黒字化だけで「回復」と見るのは危険です

産経新聞社

  • 強み:規模が小さいぶん、経営の工夫が数字に出やすい。2024年度は連結営業利益15.86億円を確保
  • 課題:売上縮小が続いており、2023年度には連結純損失34億円も計上。規模の小ささ=判断ミスが許されにくいのが特徴です

まとめ:全国紙5紙は「同じ新聞社」ではない

  • 日経:情報サービス企業に近い強さを数字で示している
  • 朝日:規模と連結の厚みがあり、まだ大きな器を持っている
  • 読売:巨大な存在感を持ちながら、外から見えにくい構造を抱えている
  • 毎日:黒字の数字も不動産・資産活用まで含めて読まないと誤読しやすい
  • 産経:規模の小ささと引き換えに、経営の工夫が数字に出やすい

新聞業界を見るときに必要なのは、「どの会社が、何で稼ぎ、何を支えにして、どこへ向かおうとしているのか」まで読み解くことが大切です。

FAQ

Q1. 全国紙5紙で最も売上規模が大きいのはどこですか?
A:
日本経済新聞社の連結2025年公表値が3,938億円で最大です。ただし日経は12月期決算で他社は3月期中心のため、厳密には同一期間の比較ではありません。

Q2. 日経だけ2025年の数字が入っているのはなぜですか?
A:
日経は1〜12月の12月期決算のため、2025年通期決算がすでに公表されています。朝日・毎日・産経・読売は3月期が中心で、2026年3月時点では未公表です。

Q3. 読売の決算はなぜ比較しにくいのですか?
A:
基幹6社・7社ベースという、一般的な単体決算や連結決算とは異なる単位で開示されているためです。他社との完全な同条件比較は困難です。

Q4. 単体と連結、どちらを見るべきですか?
A:
会社全体の実態をつかむなら連結、本業の縮小や稼ぐ力を見るなら単体が重要です。朝日・毎日のように両者でかなり見え方が異なる場合は、必ず両方を見ることが必要です。

Q5. 新聞社は新聞だけで利益を出しているのですか?
A:
今はそうとは言い切れません。不動産、電子版、情報サービス、イベント、関連会社など複数の収益源が利益を支えているケースが増えています。だからこそ、売上だけでなく利益の源泉まで確認することが重要です。

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広田 誠一