地方メディアに訪れた、再構築のチャンス?
2025年7月31日、SBIホールディングスが地方メディアやネットメディアの買収に意欲を示しました。提唱者は、同グループ代表の北尾吉孝会長(フジテレビ株の大量取得などでも広く知られる人物)。「金融とメディアの融合」を掲げ、戦略的M&Aを通じて新たな事業領域の確立を目指しているようです。
この記事では、SBIの動きが地方メディアにもたらす影響と、どのようなビジネス展開が想定されるのかを、広告主や広告業界関係者の視点で考えます。
なぜSBIがメディアに目を向けたのか?
SBIのメディア参入は、単なる事業多角化ではないはずです。狙いを整理してみましょう。
- 地方銀行×地域メディアによる“新たな経済圏”の構築
- ガバナンス改革・経営の合理化を通じた企業体質の強化
- 紙からデジタルへの転換による収益モデルの刷新
特に「地域×金融×情報発信」という独自の構造が、新たな収益機会と競争優位性を生み出すと考えられます。

【整理図】SBI参入で、どのメディアがどう変わる?
SBIがメディア業界に参入した場合、影響はメディアのタイプや売上状況によって異なります。以下の表は、その分類と想定される影響の概要を整理したものです。
| メディアタイプ | 売上状況 | 想定される影響・シナリオ |
|---|---|---|
| 全国メディア(好調) | ◎ | 新たなビジネス共創のパートナー候補に |
| 全国メディア(不調) | △ | ガバナンス強化・事業再編の加速 |
| 地方メディア(好調) | ◎ | 地銀との協業で地域経済を牽引する拠点に |
| 地方メディア(不調) | × | M&Aを通じた再構築モデルの対象に |
最大の注目ポイントは「不調の地方メディア」です。
経営再建が見込める地方メディアは戦略的対象に
SBIのアプローチにおいて重要となるのが、交渉を担う人材の姿勢と戦略です。
地方メディアの経営者や関係者は、地域特有の人間関係や文化に根ざした価値観を持つことが多く、外部資本の導入に対して慎重、あるいは閉鎖的な反応を示すケースも少なくありません。
そのため、仮に強引な買収姿勢や一方的な合理化を前面に出した交渉を行えば、信頼関係の構築に時間がかかり、M&Aプロセスそのものが難航する可能性があります。特に、地域で長年築かれた信頼ネットワークや従業員への配慮がない場合、メディア側の反発を招きやすい構図になります。
こうした背景を踏まえれば、SBI側が交渉を進める上で求められるのは、“寄り添う姿勢”と“地域の文脈を理解する力”です。買収はあくまで手段であり、目的は双方の価値を最大化すること。経営支援やパートナーシップに近い柔軟な提案姿勢が、地方側の信頼を得るうえで不可欠です。

私も、地方のメディア関係者と信頼関係を築くまでに多くの時間と労力を要した経験があります。価値観や優先順位の違いを乗り越え、共通言語を育むには、丁寧な対話と相手の立場を理解する姿勢が何より重要でした。
では、次に、SBIの買収ターゲットとして想定できるメディアを考えてみましょう!
想定できるのは、将来的な成長が見込めず、デジタル化や収益構造の刷新が進まないローカルメディア群です。具体的には、以下のような業態が候補と考えられます:
- デジタル化や発行部数減少が深刻な地方の新聞社
- 収益の限界とリスナー層の高齢化が進む地方FM局
- デジタルサイネージ化が進まず広告価値が低下している地方の屋外広告事業者
- 発行はされているがマネタイズの難しい地方のフリーペーパー
- ローカル地域に根差したケーブルテレビ局やコミュニティ放送局
- 自治体や商工会と結びつきの強い広報誌・地域情報誌
これらのメディアは、伝統的には地域情報の担い手でしたが、現代の広告主や読者のニーズに応えるには抜本的な変革が求められています。
経営が厳しい地方メディアであっても、再編・デジタル転換による価値向上が期待できる場合、SBIのM&A対象として注目される可能性があります。
地方メディア再生のポイントとは?
地方メディア再生のポイントを下記の5要素に整理してみました。
✅ 1. 資本注入による事業基盤の再構築
資金難に直面するメディアに対し、投資によって財務安定を図り、事業の再成長を促します。
✅ 2. デジタル化で収益構造を転換
アナログ中心の収益構造から、動画配信・広告ネットワーク・デジタル会員事業などへの転換を図ります。地方のメディアはアナログ中心であることが多いので改善の方法は限りなくあるでしょう。
✅ 3. 金融ネットワークとのシナジー
地域銀行やFinTechとの連携を通じ、地域経済に根差した情報・金融サービスを統合的に展開するでしょう。
✅ 4. ガバナンス改革と経営の合理化
非効率な体質を改善し、透明性のある経営体制を整備。グループ全体でのスケールメリットを活かすことでコスト効率も向上します。
✅ 5. 経営陣の刷新が前提となる可能性
特に不調なメディアにおいては、現経営陣の経営判断や体制がM&Aを妨げる要因となる場合があり、経営陣の刷新や交代が投資・再編の前提条件となる可能性があります。

この点において、現経営陣が自らの立場をどう捉え、どのように判断を下すかが、再建の鍵を握る重要な要素となります。
他業界にも見る「経営刷新」の壁と成功要因
SBIによる地方メディア買収の構図は、他業界における戦略的M&Aとも重なります。以下は参考となる事例です。
● 楽天 × 地方銀行
DX化の遅れる地方銀行に楽天が出資・提携。多くの場合、経営層の交代が統合の条件となり、文化的摩擦も発生。
● KADOKAWA × ドワンゴ
出版と動画配信の統合。カルチャーギャップが大きく、経営体制の変更が繰り返された。
● U-NEXT × USEN
映像配信と店舗BGMという異業種連携だが、創業家の退任を伴う経営刷新が統合の鍵に。
● イオン × 地方スーパー
ダイエーやユニーなど地方小売業の買収時、既存経営陣の刷新により、効率化・デジタル化を推進。
→ いずれのケースでも、「旧体質からの脱却」と「経営判断の切り替え」が成功要因となっていると想像できます。
見過ごせない「統合のリスク」
戦略的M&Aには常にリスクが伴います。以下のような点には特に注意が必要です。
- 地域性・独自性の喪失による差別化要素の希薄化
- メディアが金融事業の下位機能と見なされることで、報道の独立性が損なわれる懸念
- 経営効率化の影で、地域密着型の編集体制が後退する可能性
地方メディア側に求められるのは、
投資依存に陥らず、自社の独自性と存在意義を保ちながら統合に臨む姿勢です。
【まとめ】SBIのメディア戦略は、選別的なM&Aの一環
SBIによる地方メディア買収は、地域密着型のメディア再編に新たなビジネス的意味をもたらす可能性があります。
- 自社の独自価値が戦略的対象となり得るか?
- 外部資本と連携しながらも、自走できるモデルを構築できるか?
- 情報の信頼性と事業性を両立できる体制があるか?
- 経営陣が変革を受け入れる覚悟があるか?
これらを明確に描ける企業が、M&A後の成功が見込まれるでしょう。
【個人的提案】SBIとの連携に関心のある方へ
SBIグループと連携・協業を希望する地方メディア関係者の方は、以下のようなアクションを検討してみてはいかがでしょうか?
- SBIホールディングス問い合わせ窓口:
→ 「メディア戦略担当部署の紹介を希望」と伝えるのがスムーズです。 - SBIネオメディアホールディングス:
同グループのメディア・マーケティング戦略の中核企業。
→ 中長期的なパートナーとしての可能性を模索するのも一案です。
※本情報は筆者の個人的見解および推測に基づいており、実際の連絡は自己責任でお願いします。
地方メディアは、“選ばれる存在”になれるか
メディア状況がデジタル化で混沌としている時代において、メディアに大切なのは「過去の延長」ではなく、「次の成長戦略」です。その答えの一端が、SBIによるM&Aの動きに表れているのかもしれません。

