毎日新聞社は黒字転換でも安心できるのか|決算が示す構造課題

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本記事は「全国紙5紙の決算シリーズ」の一部です。

まず全体像を知りたい方は、こちらのまとめ記事をご覧ください。
全国紙5紙の決算比較【2026年版】

毎日新聞社の2024年度決算は、見方を間違えると実態を読み誤りやすい数字です。

単体では、売上高560.72億円、営業利益9.25億円、経常利益12.46億円、純利益52.32億円。2023年度の赤字から見ると、かなり改善したように見えます。特に純利益は前年比で約60億円改善しており、この数字だけを見れば「毎日新聞社は底を打ち、回復軌道に入ったのではないか」と感じる人もいるでしょう。

ただし、ここで立ち止まる必要があります。

毎日新聞社の単体売上は、2020年度800.31億円から2024年度560.72億円へ、約239億円、率にして約30%縮小しています。普通の事業会社の感覚で言えば、5年で売上が3割落ちて、会社が大きく形を変えずに残っていること自体がかなり異例です。しかも、連結では2023年度に営業赤字・経常赤字・最終赤字でした。

つまり、2024年度単体の黒字化は確かに重要ですが、それをそのまま「本業が回復した」と読んでしまうと危険です。毎日の決算は、黒字化そのものよりも、どうやって黒字化したのか、そしてなぜ利益が段階的に増えているのかを見た方が本質に近づきます。

この記事では、毎日新聞社の決算を単体・連結の両面から見ながら、2024年度の黒字化をどう読むべきかを整理します。公開資料や業界報道を土台にしつつ、広告業界で30年近く現場を見てきた視点から、数字の意味を実務的に読み解いていきます。

この記事の結論

先に結論をまとめると、毎日新聞社の決算から見えるポイントは3つです。

  1. 2024年度単体は黒字化したが、それだけで回復とは言い切れない
    営業利益9.25億円、経常利益12.46億円、純利益52.32億円は重要な改善です。ただし、売上が伸びて好転したというより、売上縮小の中で利益を作りにいった黒字と読む方が自然です。
  2. 本体の売上縮小はかなり深刻な水準にある
    単体売上は2020年度800.31億円から2024年度560.72億円へ、約239億円、率にして約30%落ちています。これは一般的な事業会社の感覚では、かなり異例の縮小率です。
  3. 毎日を読むなら、不動産や資産活用まで含めて見る必要がある
    連結の弱さ、本体縮小、パレスサイドビルを含む資産活用の論点を踏まえると、2024年度の黒字は「好調」ではなく、「構造課題の中でどう持ちこたえているか」を映した数字だと考える方が実態に近いでしょう。

前提|毎日新聞社は「黒字か赤字か」だけで見ると誤読しやすい

毎日新聞社の2024年度単体は、営業利益9.25億円、経常利益12.46億円、純利益52.32億円。2023年度の赤字から見ると、かなり持ち直したように見えます。特に純利益は前年比で約60億円改善しており、ここだけ見ると「底を打った」と感じる人もいるでしょう。

ただし、同じ2024年度の売上高は560.72億円で、前年度579.66億円からさらに減っています。つまり、売上が伸びて黒字になったわけではありません。毎日新聞社の2024年度単体決算は、売上減の中でコストを削って黒字化した決算と捉えた方が自然です。

毎日新聞社の主要数値

単位:億円 ※マイナス(▲)は赤字・損失

毎日新聞社の主要数値(単体)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
売上高 800.31 624.43 595.23 579.66 560.72
営業利益 ▲28.00 0.24 ▲11.96 ▲14.06 9.25
経常利益 ▲26.74 1.06 ▲10.96 ▲9.15 12.46
純利益 1.91 ▲4.07 30.01 ▲7.36 52.32

毎日新聞社の主要数値(連結)

指標 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
売上高 1,537.40 1,304.56 1,285.45 1,267.21
営業利益 ▲18.37 15.06 0.20 ▲12.07
経常利益 ▲12.88 21.48 5.70 ▲5.18
純利益 7.33 8.21 37.59 ▲14.79

単体でも連結でも、毎日新聞社の売上は縮小基調です。つまり、2024年度単体の黒字をそのまま「成長」と読むのではなく、縮小する事業規模の中でどう利益を残したかを見る必要があります。

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2024年度単体黒字はどう読むべきか|コスト圧縮+営業外収益+特別利益の三層構造

今回の決算で最も重要なのは、何を削って黒字化したのか です。

2024年度単体は、売上高が前年度比で減少したにもかかわらず、営業利益・経常利益・純利益がそろって黒字化しました。これは、売上増で立て直したというより、コストを強く絞り込んだ結果と見るのが自然です。

報道ベースでは、2024年度の黒字化は売上原価を約33億円圧縮し、さらに販管費も抑えたことが大きな要因とされています。つまり、毎日新聞社の黒字化は、新聞の販売や広告が回復したからというより、原価と経費を削ったことで損益分岐点を下げた結果です。

ここで重要なのは、コスト圧縮には必ず中身があるということです。新聞社で売上原価や販管費を大きく圧縮するとなれば、一般的には次のような項目が候補になります。

  • 印刷・用紙・配送などの製造・流通コスト
  • 外注費や業務委託費
  • 取材・編集・制作まわりの体制費
  • 管理部門の固定費
  • 人件費や人員構成の見直し

もちろん、今回の毎日新聞社がそのどれをどこまで削ったのか、内訳を公式に細かく開示しているわけではありません。ただ、売上原価を33億円圧縮したという事実だけでも、単なる小さな経費節約ではなく、かなり踏み込んだ見直しが行われたと見るべきでしょう。

コスト削減で黒字になることの意味|改善でもあるが、同時に「戻らないコスト」でもある

ここが2024年度毎日決算の核心です。

コストを削って黒字化すること自体は、経営として正しい判断です。赤字を放置するよりははるかに良いですし、実際に毎日新聞社は2023年度の赤字から損益を大きく改善しました。

ただし、コスト削減には別の意味もあります。

削ったコストの中に、もし人件費や制作体制、取材体制、流通体制の見直しが含まれているなら、それは単に支出を減らしただけではありません。将来の売上を支える力そのものを細らせている可能性もあります。

特に新聞社は、製造業のように原材料だけ減らせば済む会社ではありません。記事を作る人、届ける仕組み、営業する体制、ブランドを維持する編集力が、そのまま商品力です。だから、人件費や現場のコストを削ると、短期的には利益が改善しても、中長期では商品力や営業力が弱ることがあります。

つまり、2024年度の毎日新聞社単体決算は、こう読むのが自然です。

短期的には損益改善に成功した。だが、その改善が将来の回復力まで強めるものかは別問題である。

なぜ利益が段階的に増えているのか|営業→経常→純利益の読み方

2024年度は、

  • 営業利益:9.25億円
  • 経常利益:12.46億円
  • 純利益:52.32億円

と、段階的に利益が大きくなっています。この構造は「コスト削減だけ」では説明できません。ポイントは3層です。

① 営業利益(本業)

売上減の中で黒字化しているため、主因は原価・販管費の圧縮です。印刷・用紙・配送、外注、人件費・体制の見直しなどで損益分岐点を下げたと読むのが自然です。

② 経常利益(営業外)

営業利益からさらに約3億円上乗せされています。ここは営業外収益で、新聞社の場合は

  • 不動産関連収益
  • グループ会社からの配当
  • 投資収益

などが寄与している可能性があります。本業以外での底上げです。

③ 純利益(特別項目)

経常利益から純利益で大きく跳ねています。ここは通常、

– 不動産や資産の売却益
– 投資有価証券の売却益
– 事業再編に伴う特別利益

といった一時的な利益(特別利益)の影響が強い領域です。

特に毎日新聞社の場合、不動産戦略の影響は無視できません。
パレスサイドビルの扱いは、単なる資産活用ではなく、経営の存続に直結する可能性があります。

この点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
毎日新聞、パレスサイドビル売却における2000億円の罠|生存か消滅か、解体の真実

重要な結論|この黒字は「持続力」と「一時要因」を分けて読む

この三層を踏まえると、2024年度の黒字は次のように分解できます。

  • 営業利益:コスト圧縮による継続力(ただし将来影響あり)
  • 経常利益:不動産・配当などによる補強
  • 純利益:特別利益による一時的な上振れ

つまり、見かけの純利益ほどには本業は回復していない可能性がある、という読みが重要です。

ここを分けて考えないと、黒字化を過大評価してしまいます。

単体で見る毎日|売上は5年で約30%縮小した

単体ベースで見ると、毎日新聞社の本体はかなり縮小しています。

売上高は2020年度800.31億円から2024年度560.72億円へ減少しました。4年間で約239億円、率にして約30%の縮小です。これは一般的な事業会社の感覚ではかなり大きい数字です。

営業利益も安定して黒字を続けてきたわけではありません。

  • 2020年度:▲28.00億円
  • 2021年度:0.24億円
  • 2022年度:▲11.96億円
  • 2023年度:▲14.06億円
  • 2024年度:9.25億円

2024年度だけを切り取れば改善ですが、5年推移で見れば、本体事業がかなり細っていることは明らかです。

普通の事業会社なら、5年で売上が3割落ちる前後で、リストラ、資産売却、事業再編が本格化していてもおかしくありません。新聞社がそれでも残り続けるのは、ブランド、資産、不動産、グループ構造といった“新聞社特有の延命余地”があるからだと考える方が自然です。

連結で見る毎日|グループ全体ではまだ弱さが残る

単体だけを見ると改善が見えますが、連結まで広げると印象はかなり変わります。

連結売上は2020年度1,537.40億円から2023年度1,267.21億円まで縮小しています。2023年度は営業赤字12.07億円、経常赤字5.18億円、純損失14.79億円でした。

つまり、グループ全体として見ると、まだかなり不安定です。

本体ではコスト圧縮で黒字を作れても、グループ全体ではまだ弱さが残る。だから毎日新聞社は、2024年度単体黒字だけで“回復企業”のように語ると危険なのです。

毎日の決算で最も重要な論点|不動産・資産活用

毎日新聞社を考えるうえで、避けて通れないのが不動産や資産活用です。

毎日新聞グループでは、以前から不動産や資産の活用余地が経営上の大きな論点になってきました。特に東京本社のあるパレスサイドビルは象徴的です。

この不動産の扱いは、単なる資産活用ではなく、会社の存続戦略そのものに関わる可能性があります。

この点は非常に重要なので、別記事で詳しく解説しています。
毎日新聞、パレスサイドビル売却における2000億円の罠|生存か消滅か、解体の真実

再開発や売却を含む活用策の検討が報じられていること自体が、毎日新聞社の経営を本業だけでは語れないことを示しています。

もし本業だけで十分に回っている会社なら、不動産活用や資産処分がここまで大きな論点にはなりにくいでしょう。もちろん、不動産活用そのものが悪いわけではありません。ただし、それが「余裕ある資産運用」なのか、「本業の弱さを補う安全弁」なのかで意味は大きく変わります。

毎日の場合、この問いを避けて決算を読むことはできません。

まとめ|毎日の黒字は「回復」ではなく「圧縮して作った黒字」と読むべき

毎日新聞社の2024年度単体決算は、確かに大きく改善しました。営業利益・経常利益・純利益がそろって黒字化し、純利益は前年比で約60億円改善しています。これは軽く見てよい数字ではありません。

ただし、その改善の中身を見ると、売上回復ではなく、売上原価と販管費の圧縮によって作った黒字という色合いが強いです。

ここで重要なのは、コスト削減は短期的には正しい一方で、削ったものが人や体制に及ぶほど、中長期では商品力や回復力を弱める可能性があることです。

だから、毎日の2024年度黒字はこう読むべきでしょう。

安心できる回復ではなく、縮小の中で圧縮して作った黒字。

そして本当の論点は、その黒字が一時的な整え方なのか、それとも会社の再設計につながるのかです。不動産や資産活用まで含めて見なければ、毎日新聞社の現在地はつかめません。

FAQ

Q1. 毎日新聞社は2024年度に回復したのですか?

単体では黒字化しており改善は見えます。ただし売上縮小は続いており、黒字化の主因は売上回復よりコスト圧縮と見る方が自然です。

Q2. 毎日の黒字は本業の強さを示していますか?

そう言い切るのは難しいです。利益改善は重要ですが、売上は減っており、原価・販管費の圧縮で作った黒字の面が強いと考えられます。

Q3. コスト削減の中身は何だと考えられますか?

公式な詳細内訳は確認できませんが、一般的には印刷・用紙・配送などの原価、人件費、外注費、管理部門コストなどの見直しが考えられます。

Q4. パレスサイドビルの話はなぜ重要なのですか?

毎日新聞グループにとって重要な経営資源だからです。再開発や売却を含む活用策が検討されていること自体が、本業だけでは語れない経営局面にあることを示しています。

Q5. 毎日新聞社は今後、何を見ればよいですか?

本体売上の減少がどこまで続くか、コスト削減の反動が出ないか、連結で黒字を維持できるか、不動産・資産活用をどう位置づけるか。この4点が特に重要です。

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広田 誠一