価格戦略が企業の利益とブランドを左右する
2026年の日本企業にとって、最も重要な経営テーマのひとつが「価格戦略」です。
物価上昇・人件費高騰・円安による原価上昇が続くなか、企業は「安売りで生き残る」か「適正価格で利益を確保する」かの岐路に立たされています。
結論から言えば── “値引きは売上を増やしても利益を溶かし、値上げは販売数が減っても利益を守る” という構造が2026年ではより鮮明になります。
本記事では、具体的な数値を使いながら、広告・マーケティングの視点で「値引き」と「値上げ」の本質をわかりやすく解説します。
■1|値引きの本質:売上は増えても利益は消える
まずは、以下の基本条件からシミュレーションします。
- 販売数:100個
- 売価:10,000円
- 仕入:8,000円
- 利益:2,000円/個
→ 売上100万円、利益20万円
この状態から「値引き」と「値上げ」を行った場合を比較します。
▼ 値引き・値上げの比較
| ケース | 売価 | 販売数 | 売上 | 仕入 | 利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現状 | 10,000円 | 100 | 100万円 | 80万円 | 20万円 |
| 値引き(9,000円) | 9,000円 | 120 | 108万円 | 96万円 | 12万円(−40%) |
| 値上げ(12,000円) | 12,000円 | 80 | 96万円 | 64万円 | 32万円(+60%) |
→ 値引きは販売数が増えても利益が激減。
→ 値上げは販売数が減っても利益が増加。
さらに、値引きで利益20万円を取り戻すには──
9,000円 × 200個売らないと元の利益に届かない!
これが“値引きの恐ろしさ”です。
さらに重要なのは、200個売る=労働量が2倍になるという点です。販売数が倍になれば、倉庫作業・事務処理・接客・配送手配など、あらゆるオペレーションが膨らみます。2026年は人件費も上昇しているため、
実際には“2倍売っても利益は追いつかない”のが現実です。
人件費・残業・物流負荷を踏まえると、値引きは“利益だけでなく労働コストまで増やす”構造的に不利な戦略と言えます。
■2|値引きが企業を弱くする理由
値引きは短期的に売れるように見えますが、長期的には企業の競争力を奪います。
●① ブランド価値が下がる
「安い店」「安い会社」というレッテルは一度つくと戻せません。
●② 営業力が育たなくなる(“値引きは麻薬”の正体)
値引き依存は“営業組織の質”を確実に下げます。
一度「値引きで売れた成功体験」を覚えると、営業は付加価値を伝える努力をしなくなります。結果として:
- 「安いですよ」がメインのセールストークになる
- 価値を説明する力が育たない
- 顧客への提案の幅が狭くなる
- 若手が“値引き前提の売り方”しか学べなくなる
つまり、値引きは“売上の麻薬”であると同時に、“営業力を破壊する麻薬”でもあるのです。
本来営業とは、価値を言語化し、顧客課題に向き合い、適正価格で提案する役割。
しかし値引きに依存すると、優秀な営業マンが育たない組織になり、企業は確実に長期的競争力を失います。 値引き依存は“価格以外の魅力”を伝える力を破壊します。
●③ 広告投資ができなくなる
利益が薄い企業ほど、広告投資を削り始め、露出が減り、さらに売れなくなる悪循環に陥ります。
→ 値引きは、中長期では“企業体力を削る仕組み”と言えます。
■3|2026年の値上げは「消費者に受け入れられやすい」
2026年は、値上げに追い風があります。
● 人件費の上昇
● 原材料価格・物流費の高騰
● 円安による輸入コスト増
● 賃上げ基調で「値上げ」が日常化
● Z世代を中心に“安さより意味”へ価値観が転換
消費者は今、価格より“理由”を求めています。
理由のある値上げは受け入れられやすい。
これは企業にとって大きな追い風です。
■4|値上げが成功する企業の共通点
値上げは闇雲に行っても成功しません。成功企業には共通点があります。
① 価格の「根拠」を説明できる
- 原価高騰
- 職人の技術
- 手間や品質
- サステナブルな取り組み
“なぜ高いのか”が語れる企業は強い。
② 顧客を“選別”できている
価格とは、顧客フィルタリングの仕組みでもあります。
→ “価格競争を求める顧客”を捨て、“価値を理解する顧客”を選ぶ。
③ 付加価値の提示が上手い
- デザイン
- 利便性
- 体験価値
- 世界観
▼ インスタ映えは“現代の付加価値”である
2026年の若年層は、商品の本質的価値よりも、“SNSで共有できる価値”に強く反応します。
これは数字でも裏付けられており、Z世代の購買理由の上位に「SNS映え」「共有したい体験」が入っています。
実際、同じ味のパフェでも──
- 500円のパフェ → 特に話題にならない
- 1,000円の“インスタ映えパフェ” → 行列ができる
という現象が全国で起きています。味が普通でも、“写真としての価値”が価格差を正当化する時代になったのです。
また、味が平均点でも毎日行列ができ、高単価を維持し続ける“映えるドーナツ店”も存在します。これが示すのは、
“映える=価値がある”という消費構造の変化 です。
値上げを成功させたい企業は、このSNS心理を無視してはいけません。”見た目の世界観”は、立派な付加価値であり、価格を上げるための強力な武器になっています。
④ 広告・クリエイティブで世界観をつくれる
2025年の値上げ戦略は、広告で成功が決まると言っても過言ではありません。
- 値上げの理由を伝える
- ブランドの物語を再構築する
- “高価格帯にふさわしい文脈”をつくる
広告は、値上げの「説明装置」であり、「価値増幅装置」です。
■5|広告業界から見た値上げの重要性
広告業界にいる人ほど、値上げの本質を理解する必要があります。
✔ 値引き企業は広告投資ができなくなり、長期的に弱くなる ✔ 値上げ企業はブランド投資を進められるため、成長しやすい
つまり、
“値上げ × 広告”が、2026年の最強の成長戦略。
広告とは“価値を伝える行為”。 値上げは“価値を高める行為”。
この両者は本来セットなのです。
■6|まとめ
- 値引きは短期売上を作れても、利益とブランドを削る
- 値上げは販売数が減っても利益が増える構造
- インフレ・賃上げ時代は「理由のある値上げ」が受け入れられる
- 値上げの成功は、広告・ストーリー・ブランド世界観が左右する
2026年以降、企業は「安売りではなく、価値で選ばれる価格戦略」へ進むべき時代に入っています。 価格を下げるのではなく、
“価格を適正化し、価値を語り、ブランドを成長させる”
これこそ、これからの企業に求められる戦略です。

