【第1話】インターネット広告の成長はどこまで続くか?鍵を握るのは“配信面”という受け皿の供給力!

広告業界トレンド・未来予測

インターネット広告は、2024年度時点で、3兆6,517億円(前年比109.6%)に達し、日本の総広告費に占める割合も47.6%となり、過去最高額を更新しました。

50%を超えるのも時間の問題です。今の成長率が続けば広告費に占める割合は60%、70%となっていく計算になります。

しかし、そんな単純な話ではありません。

なぜなら、インターネット広告の成長と比例して“配信面(広告掲載枠)”の供給も追いついていかなければ成長はできないからです。

このような疑問を持つ広告主や担当者も少なくありません。本日は、そのような疑問を持たれる方向けに、インターネット広告の成長と配信面の供給について考えてみます。

インターネット広告が配信される仕組み

広告主がまず活用するのは、Google(検索・YouTube)やMeta(Instagram・Facebook)、LINE、X(旧Twitter)といった巨大プラットフォームです。

広告需要はこれらのメジャーなメディアに集中し、掲載枠は埋まっていきます。実際、オークション単価は上昇し続けています。

その後、配信面はメジャーでない広告面へと移行していきます。

ここで劣悪な配信面への広告掲載という問題が発生しています。

ちょっとしたスキャンダルでテレビCMや提供をキャンセルする企業が、このような掲載を見逃しているのはあり得ないからです。

 

実際、広告主は“配信先”を把握できているのか?

1. 広告の“配信先の見えづらさ”がブランドセーフティ問題を引き起こす

現代のプログラマティック広告では、複雑なサプライチェーンの中で、広告がどこに表示されているかを広告主が正確に把握できないケースは少なくありません。実際、GoogleやAmazonの広告が児童向けの不適切投稿に表示されていたという報道もあります。業界の無神経さへの批判も起きているのです。一方で、現行のキーワードブロックやブラックリスト方式では誤検知や過剰回避も避けられず、普通のニュース媒体をも締め出す。ことへの懸念も指摘されています。

つまり、多くの広告主は看過しているのではなく、「見えづらく、制御しづらい」というシステム上の限界によって、結果として問題が放置されている結果になっているのです。これはインターネット広告業界全体の課題とも言えるでしょう。

このような背景から、業界では以下のような問題意識が浮上しています。

成長限界が近づく中で見えてきた課題

  • 可処分“画面”時間はすでに飽和状態…生活者の1日の中でスマホ・PC・TVなどの画面を見る時間には限界がある。
  • 広告在庫(配信面)の限界が見え始めている…メジャー媒体の広告枠はすでに埋まりやすく、供給が追いつかない状況。
  • レベルの低い配信面にまで広告が流れるようになっている…質の悪いサイトやコンテンツにも広告が表示され、ブランド棄損のリスクも。
  • 単価の高騰によって成果が出にくくなっている…CPCやCPMが高騰し、広告ROIが悪化している企業も増加。

いずれも「良質な広告の受け皿」が足りないことで生じている課題です。

ここで改めて「可処分時間」の概念を見直してみましょう。

従来、インターネット広告の主戦場は「画面上」の広告でした。スマホの画面、パソコンの画面、テレビのサブスク画面など、“目”に訴えかけるビジュアルメディアが中心です。

しかし、人々の1日24時間という時間の中で、“画面を見る時間”には限界があります。いわば「可処分画面時間」が飽和状態に近づいているのです。

 

すると、インターネット広告がこのまま順調に成長を続けていくためには、新たな広告配信面を良質な形で拡張していく必要があるという課題が浮かび上がってきます。

2024年度時点でインターネット広告費は、3兆6,517億円、前年比109.6%と過去最高を更新しましたが、その成長は「可処分画面時間」の限界により、今後鈍化する懸念が出てくるのです。

そこで注目すべきなのが、

“第二の可処分時間”としての“聴覚空間”

です。

音声広告が担う“第二の可処分空間”とは?

広告主が新たな配信面として注目すべきなのが「音声メディア」です。

とりわけSpotifyのような音楽ストリーミングサービスでしょう。

このようなメディアは、、以下のような点から、今までとは異なる形での“広告接触機会”を提供可能です。

  • 可処分画面時間とは別の「可処分聴覚時間」にアクセスできる
  • 移動中や作業中など、“ながら時間”での接触が可能
  • 若年層を中心にサブスク(課金)ではなく広告付き無料プラン利用者も多い
  • テレビやYouTubeと異なり、“ながら再生”されても広告が音声で届く

つまり、Spotifyは「画面を見ていなくても広告が届く新たな配信面」としての価値があるのです。

Spotifyは現在でも無料プラン利用者に向けて広告配信を行っており、音楽と音声コンテンツ(ポッドキャストなど)の両方に広告が挿入されます。これにより、従来のインターネット広告とは異なる文脈でのリーチが可能となっています。

さらに重要なのは、こうした音声広告が“ながら時間”つまり「移動中」「作業中」「運転中」といった、従来の広告接触が難しかった時間帯に、違和感なく届けられるという点です。

その意味で音声広告は、

インターネット広告の配信面不足という課題を補完する“第二の可処分空間”

として、考えられるのです。

Connected Car(コネクテッドカー)広告の可能性と課題とは?

音声広告の延長線上で注目すべきは「コネクテッドカー(Connected Car)」です。

コネクテッドカーとは、インターネットに常時接続され、車内ディスプレイや音声アシスタントを通じて情報や広告を提供できる車のことです。

将来的には、以下のような広告体験が想定されています:

  • 目的地に応じた位置連動型の音声広告(例:「近くに◯◯カフェがあります。クーポンはこちら」)
  • 停車中にナビ画面に表示される地元店舗のCM動画
  • 後部座席ディスプレイでの映像広告

こうした“移動空間を広告メディア化”することは、音声広告やラジオとの親和性も高く、業界でも注目されるでしょう。

ただし、安全面への配慮が不可欠

一方で、走行中のドライバーに視覚的・聴覚的な刺激を与えることは、安全性への懸念も伴います。広告によって注意を逸らされた結果、万が一事故が発生すれば、社会的・法的な責任問題に発展する恐れもあります。

そのため、実用化には以下のような慎重な対応が求められます:

  • 駐車中や停車時限定の広告表示
  • 音声のボリュームや頻度に配慮した設計
  • 運転者ではなく同乗者への限定配信
  • 個人情報や走行履歴の透明な取り扱い

広告配信面の技術が進化しても、最後は生活者との接点における「信頼」と「安全性」が重要であることを忘れてはなりません。

 

【実際の事例】 アメリカでは、車載インフォテインメントシステムに道路看板をリアルタイムで表示する技術が、ドライバーの注意を逸らし、事故リスクを高めるとして批判を受けたことがあります。こうした先進技術であっても、安全性を無視した配信設計は現実的な危険につながる可能性があるため、広告設計においては慎重な配慮が不可欠です。

今後に向けた提案とまとめ

上記の様に、今後、インターネット広告が持続的に成長していくためには、「可処分画面時間」の限界を超えた新たな配信面の開拓が不可欠です。

その有力候補として、

  • Spotifyなど音声メディアによる“聴覚空間”
  • Connected Carによる“移動空間”

がすでに登場しており、注目すべき存在です。

さらに今後は、スマートスピーカーや家電、デジタルサイネージ、XR/メタバース空間なども含めた「非・画面型の配信面」(=生活者の視覚以外の感覚や行動シーンに訴求できる新たな広告接点)の拡張が期待されます。

広告主や代理店が意識すべきは、単なる“枠の拡張”ではなく、生活者の時間・空間との自然な接点をどう設計するかという視点なのです。

“接触設計”こそが、インターネット広告の次なる成長を支える鍵となるでしょう。

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