はじめに|「生き残る」から「どう進化するか」へ
ここまでの章では、
- 倒産する広告代理店に共通する構造
- 生き残っている広告代理店の条件
を整理してきました。では、その先にある問いは何でしょうか。
それは、
広告代理店という業種は、これからどこへ向かうのか
という疑問です。
本章では、「生き残るかどうか」を超えて、広告代理店がどのような役割へ進化していくのかを、現実的な視点で整理します。
方向性① 「広告を売る会社」から「意思決定を支える会社」へ
かつて広告代理店の主な役割は、
- 広告枠を確保する
- 制作物を手配する
- 出稿を管理する
といったものでした。しかし現在、これらの機能は
- プラットフォーム
- ツール
- 内製チーム
によって代替されつつあります。その中で、今後も価値を持ち続ける代理店は、
「何をやるか」ではなく「なぜそれをやるか」を言語化できる存在
へと役割を変えています。
方向性② 戦略・構造設計に価値を置く
生き残っている広告代理店は、
- 施策単体
- 媒体単体
ではなく、
- 事業全体の構造
- 売上が生まれる仕組み
- 顧客との関係設計
といった、上流の設計に価値を置いています。広告は、その設計を実行するための手段の一つに過ぎません。
方向性③ 「全部できる」から「翻訳できる」存在へ
今後の広告代理店に求められるのは、
- 企画・制作・運用・調整までを少人数で全て抱え込むこと
ではなく、
- クライアントの状況を整理し、最適な打ち手を選べる状態にすること
です。具体的には、
- 媒体・制作・データ・AIなどの情報を整理する
- それぞれの専門家の意見をそのまま伝えるのではなく
- 「今、この会社は何を優先すべきか」という判断軸に落とし込む
という役割です。つまり広告代理店がやるべきことは、
専門家の意見を並べることではなく、意思決定できる形にまとめること
この「判断を助ける仕事」こそが、これからの代理店に残る価値だと言えるでしょう。
方向性④ 固定費を増やさず、価値を積み上げる
これからの代理店経営において重要なのは、
- 規模拡大
- 人員増加
そのものではありません。むしろ、
- 小さく保つ
- 外部と組む
- 強みが活きる部分に集中する
という設計の方が、変化に強くなります。
方向性⑤ 「代理」ではなく「共創」へ
これからの広告代理店は、
- 依頼されたものを実行する存在
ではなく、
- 一緒に考え
- 一緒に選び
- 一緒に責任を持つ
共創パートナーとしての役割が強まっていきます。これは、仕事が楽になるという意味ではありません。むしろ、より高度な理解と覚悟が求められます。
現実的なアドバイス|人材がいなくても、何から始めればいいのか
中小の広告代理店がこの章を読んで、
「言っていることは分かる。でも、そんな人材はいない」
と感じるのは、ごく自然な反応です。
多くの中小代理店では、
- 戦略を考えられる人
- データやAIに強い人
- クライアントの意思決定を整理できる人
を新たに採用する余力はありません。
だからこそ重要なのは、いきなり理想形を目指さないことです。
① 人を増やす前に「役割」を絞る
まずやるべきは、
- 全部を自分たちでやろうとする
状態から抜け出すことです。中小代理店が最初にやるべきなのは、
「自分たちは、どこまで責任を持つ会社なのか」
を明確にすることです。制作・運用・分析・改善のすべてを担う必要はありません。
- 判断の整理
- 優先順位の提示
- 実行パートの切り分け
このうち、どこを自社の役割とするかを決めるだけで、負担は大きく減ります。
② 専門人材は「雇う」のではなく「使う」
今の時代、専門性は必ずしも社内に抱える必要はありません。
- フリーランス
- 外部パートナー
- ツール・AI
を前提に設計し、
- 何を外に出すか
- 何を中で判断するか
を分けることが現実的です。ここで多くの中小代理店がつまずくのが、
「その外部人材を、どうやって探せばいいのか分からない」
という点でしょう。現実的な探し方は、次のような方法です。
- すでに取引のある制作会社・個人に「この領域、詳しい人を知りませんか?」と聞く
- クライアント側の担当者に、過去に一緒に仕事をした外部パートナーを教えてもらう
- まずは紹介を軸に考えつつ、その後の手段としてSNSやポートフォリオサイトで探すのも有効です。ただし、不特定多数に声をかけるのではなく、実績や発信内容を確認した上で個別にコンタクトする形が現実的です。
重要なのは、
- いきなり完璧な人材を探さないこと
- 1案件・1テーマ限定で試すこと
です。最初から長期契約や常駐を考える必要はありません。
「この部分だけ、少し助けてもらえませんか?」
というレベルで十分です。重要なのは、
外注を使うことではなく、外注を使いこなせる立場に立つこと
であり、その第一歩は
探すことよりも、頼み方を決めること
だと言えるでしょう。
③ 最初の一歩は「提案資料」を変えること
最も取り組みやすく、効果が出やすいのは、
- 提案資料
- 定例報告
- 打ち合わせの進め方
を変えることです。
- 施策の羅列をやめる
- 数字の説明だけで終わらせない
- 「次に何を決めるか」を必ず示す
これだけで、代理店の役割は
作業を説明する会社 → 判断を助ける会社
へと変わり始めます。
④ すべてのクライアントでやろうとしない
変化は、
- 1社
- 1案件
からで十分です。まずは小さくても構いません。1社で実績をつくり、その成功体験を言語化し、少しずつ横に広げていくことが重要です。
全クライアントに同じレベルの対応を最初から求める必要はありません。
- 考え方を共有できるクライアント
- 関係性が比較的フラットな案件
を起点に、再現できる形を整えながら、徐々に広げていく方が現実的です。
まとめ|未来は決まっていないが、選択肢はある
広告代理店の未来は、誰かに決められているわけではありません。
- 旧来型の代理業に留まるのか
- 価値の源泉を再定義するのか
その分岐は、すでに始まっています。
重要なのは、
才能ではなく、どの立ち位置を選ぶか
です。広告代理店という業種は、形を変えながら進化していくことが重要です。
本記事は、【2026年版】広告代理店の未来はどうなる?という連載シリーズの第4話です。
最終章では、広告代理店の未来は本当に暗いのかという問いに対して、2026年時点での現実的な結論を提示します。

