【導入編】なぜ押し紙はなくならないのか?新聞業界を蝕む“不都合な共依存”の正体

「押し紙」特集

※本記事は、当ブログ「新聞業界の闇:押し紙問題シリーズ」の全体像を俯瞰するプロローグです。

はじめに:「知っているのに、変えられない」という異常

「国会で追及され、裁判で違法性が認められ、ネットでこれほど叩かれている。なのに、なぜ「押し紙」は今日この瞬間も続いているのか?」

この疑問に対する答えは、残念ながら「単なる不正だから」という単純なものではありません。押し紙とは、新聞業界という巨大なシステムが「一気に崩壊(死)するのを防ぐための劇薬」であり、関わる全員が抜け出せなくなった「底なし沼」なのです。

本記事では、この問題を放置し続ける日本社会の「4つの共犯構造」を解き明かします。

1. 「公共性」という名の聖域

新聞社には、他の民間企業にはない強大な「盾」があります。

  • 政治的なタブー:選挙や政策を左右するメディアを、政治家は敵に回したくない。

  • 制度の特例:「新聞特殊指定」などの保護政策により、独禁法のメスが入りにくい。

「報道の自由」「民主主義のインフラ」という建前が、いつの間にか「不正慣行を隠蔽するための聖域」として機能してしまっているのが現実です。

2. 金融と広告が作り出す「虚構の信頼」

新聞社が押し紙を止める(=正しい部数を公表する)ことは、自ら「死」を選択することと同義です。

  • 銀行評価の暴落:公表部数が半分になれば、企業の資産価値は崩壊し、融資は止まる。

  • 広告単価の崩壊:「100万部」という虚構に基づいて設定された広告枠が、適正価格に戻れば収益は維持できない。

つまり、押し紙は経営者にとっての「粉飾」であると同時に、「組織を維持するために打ち続けなければならない延命剤」なのです。

3. ステークホルダーの「沈黙と諦め」

被害者であるはずの広告主も、実はこの構造の一部に組み込まれています。

  • 広告主の怠慢:「新聞という伝統媒体に出している」という社内的なアリバイ作りを優先し、実態調査に踏み込まない。

  • 代理店の忖度:新聞社との取引関係を優先し、不都合な真実をクライアントに突きつけない。

この「誰も本気で怒らない」状況が、押し紙を「グレーな慣習」として生存させ続けています。

結論:押し紙は「原因」ではなく「断末魔」である

私たちが理解すべき最も残酷な事実は、「押し紙を止めることができないのは、新聞社に次のビジネスモデルがないから」という点です。

押し紙は、新聞業界が抱える以下の矛盾が表面化した「結果」にすぎません。

  1. 維持不可能な販売網(販売店を支えるための水増し)

  2. 実態と乖離した広告モデル(収益を維持するための水増し)

  3. 高コストな紙媒体への執着(印刷機を回し続けるための水増し)

「押し紙がなくなる時」——それは、私たちが知っている「新聞社」という形が完全に消滅する時です。

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