はじめに:AI検索が変える「読まれ方」
最近では、Google検索で質問を入力するとAIが自動で答えを要約して表示してくれるのが当たり前になってきました。
これは「Search Generative Experience(SGE)」と呼ばれる新機能で、AIが複数の記事を読み取り、要点をまとめてくれる仕組みです。
つまり、わざわざ記事をクリックしなくても、検索結果の要約だけで“知りたいことが分かる”時代に突入しています。
新聞社にとって、この変化は非常に深刻です。これまでの「キーワードで記事にたどり着き、PVと広告で収益を得る」モデルが、根本から崩れ始めているのです。
AI要約(SGE)が突きつける“構造的リスク”
SGEは医療、教育、ライフスタイルなど幅広い分野で実装が進んでいますが、最も打撃を受けるのが「ニュースサイト」です。
その理由は明確です:
- ニュースは要点をまとめやすい
- 速報性が重視され、深掘りを読みに行く動機が弱い
- 各社の内容が似通いやすく、差別化が難しい
つまり、AIがニュースを要約してしまえば、多くの読者はクリックする必要がなくなります。結果、新聞社のPVは激減し、広告収益も同時に減少します。
これは、せっかく進めてきたデジタル化が“徒労に終わる”リスクを意味します。
紙もデジタルも行き詰まる? 新聞社の現状構図
現状の構図を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 現状 | 問題点 |
|---|---|---|
| 紙媒体 | 部数減、広告減、高コスト構造 | 赤字リスクの拡大 |
| デジタル | PV依存の広告モデル | AI検索(SGE)でリンク減少 |
| 有料会員 | 成長鈍化、差別化不足 | 成功モデルが描けない |
新聞社が信じてきた“デジタルで生き残る”という道は、AI検索によって逆に閉ざされようとしています。
なぜ日経は影響が少ないのか?
ただし、すべての新聞社が同じ打撃を受けるわけではありません。 日本経済新聞のように、専門性が高く、独自分析を持つ媒体はAIに要約されても「もっと知りたい」と思わせる内容を提供しています。
一方で、毎日新聞のようにポジショニングが曖昧で、記事内容が中道的で差別化が難しい媒体は、AI要約によって“読まれないリスク”が高まります。検索流入が途絶えれば、PVも広告も失われる。そんな現実が迫っています。
「要約されても読みたくなる」記事とは?
AIが要約しても、読者が「それでも読みたい」と感じる記事には共通点があります:
- 現場取材・調査報道:AIが拾えない一次情報を持つ
- 独自データ分析・視点:数字や構造の深読み
- ストーリー性:読者が“感情で納得する”文脈の提示
- 専門家・著名人のコメント:AIが生成できない信頼の補強
これからの新聞社に必要なのは、“情報”ではなく“意味”を届ける力でしょう。要約に置き換えられない「人間の解釈」が価値を生む可能性があるのです。
新聞社が取るべき4つの方向性
- 調査報道・長期取材の強化
AIが苦手な「現場の一次情報」を徹底的に掘り下げる。 - コミュニティ型読者関係の構築
読者が“つながりたい”と思うファンベースを作る。 - ライセンス型ビジネスモデルへの転換
AIがどこまで記事を活用するかは不透明な中で、記事使用料モデルを模索する。
ただし、AIは複数社の記事を自動的に要約している現状があり、特定の新聞社が一方的にライセンス料を請求しても受け入れられる可能性は低い。このため、業界全体でのルール形成やプラットフォームとの協議が不可欠でしょう。
実際に、2025年には読売新聞社が米国のAI検索サービスPerplexityを相手取り、約11万9,000件の記事が無断で利用されたとして訴訟を起こした事例もあります。
これは、AIによる記事要約や利用に対し、新聞社が法的手段に踏み切った初のケースであり、今後の著作権ルール形成に大きな影響を与える可能性があります。 - 教育・映像・国際展開などの多角化
記事を“知識資産”として再利用する新たな収益設計。例えば、過去の取材データを再編集して教育教材やドキュメンタリー映像として展開したり、海外メディア向けに翻訳・再配信するなどの方法も考えられます。
まとめ:AI時代の新聞社は「要約に負けない意味」を届ける
AI検索(SGE)は、単にニュースの読み方を変えるだけではありません。新聞社の存在意義そのものを問う技術です。
新聞社は、これまでのように“情報を届ける”だけでは生き残れません。読者の価値観を変え、考えを深めるほどの“意味”を届けられるかどうか。そこにこそ、新聞社の未来があります。
AIが要約しても読みたくなる理由をつくれるか?
それが、新聞社に残された最後の希望まもしれません。
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