はじめに:なぜ今、あらためて「押し紙」問題に注目すべきか?
新聞広告に関わる方であれば一度は耳にしたことのある「押し紙(残紙)」問題。
これは過去の話ではなく、今なお業界に根深く残る構造的な課題です。かつて話題となったキャンペーンを振り返るとともに、現代における広告主のリスクや対策について解説します。
押し紙とは?──“部数水増し”の構造とその影響
押し紙とは、新聞社が実際の販売部数を上回る部数を販売店に押し付けて買い取らせる行為です。
例えば、実売が100万部であるにも関わらず、販売店に200万部を買い取らせ、「200万部の新聞」として広告主に提示する──これが押し紙の典型的な手口です。
主な問題点:
- 広告主に対する不当請求:実際には届いていない部数に対して広告費を支払う構造。
- 税金の無駄遣い:政府広報などの公的広告が“ゴミ”になる。
- 販売店への圧力:販売店が不要な新聞を買い取らされ、経営を圧迫される。
「NO!残紙キャンペーン」の登場
2016年頃、弁護士や議員を中心に、「NO!残紙キャンペーンサイト」が立ち上がりました。
【なくそう、残紙】をキャッチフレーズに、公正取引委員会へ実態調査を求めるキャンペーンを展開しており、現在もサイト(http://no-zanshi.com/)が継続して公開されています。
このサイトは、新聞業界の残紙問題を広く周知し、是正を促すことを目的としていました。ネットを中心に共感が広がり、議員らによる働きかけも見られました。
押し紙の“証拠”?──Amazonで売られる新品新聞紙
一般人が新聞紙を大量に出品することはできません。にも関わらず、Amazonでは新品の同日付の新聞紙がペットシートなどの用途で販売されています。
このような現象は、販売店が過剰在庫(=押し紙)を横流ししていると見る向きもあります。

一般の生活者が大量の新品の新聞を出品することは考えられませんので、販売店による『押し紙』の処分と考えるのが普通です。
現代の押し紙問題──今なお続く「透明性のなさ」
新聞社の発行部数は年々減少し、実売との乖離が問題視されてきました。近年では、デジタル版を含めた“水増し”表示や、実態の不透明さがより複雑化しています。
広告主や代理店にとっては、実際に届く部数と広告料の妥当性を照合することが困難であり、リスクを内包しています。
広告主・代理店が取るべき対応
- 媒体選定時に「実売部数の開示」を求める
- ABC協会など第三者によるデータの活用
- 公的広告出稿における審査体制の強化
広告費の健全な運用と、媒体価値の透明性確保のためには、広告主側のチェック機能も必要です。
まとめ:押し紙問題は、新聞の未来と広告主の信頼に関わる問題
「押し紙」は、新聞業界の根深い構造的問題です。
広告主、代理店、そして読者がこの問題を正しく理解し、透明性ある広告活動を意識することが、メディアの信頼性を支える第一歩となります。
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