クライアント提案の質を変える“生活実感インフレ”の読み解き方
【結論】なぜ広告営業に「カレー物価」が必要なのか?
広告提案において最も困難なのは、「消費者はいま、何を感じているか?」を客観的な数字で証明することです。
帝国データバンク(TDB)が公表する「カレーライス物価指数」は、この疑問に対する答えの1つとして有効です。これは単なる食費データではありません。
消費者の不安・節約心理・購買判断の背景を、一皿のカレーに凝縮した「生活実感インフレ指標」と言えます。
広告代理店の営業・マーケティング担当者にとって、この指数は以下の3つの役割を果たすことが予想できます。
- 消費者心理の翻訳:ニュースの裏側にある「買い控え」の理由を説明できる。
- 提案の説得力を上げるエビデンス:「なんとなく」ではない、データに基づいたターゲットに響く「切り口」の選定。
- 価格戦略の判断材料:自炊コストを基準に、「実はこっちの方がお得」と気づかせる「相対的なお得感」のロジック構築。
1. カレーライス物価指数とは何か?
生活者の「買い物の手応え」を可視化する
では、そもそも、カレーライス物価指数とは何なんでしょうか?
この指数は、株式会社帝国データバンク(TDB)が総務省の「小売物価統計調査」を基に独自に試算した指標です。
- 算出対象:米、肉類、野菜(じゃがいも・玉ねぎ・にんじん)、カレールー、食用油、および調理に必要な光熱費(電気・ガス・水道)
- 算出方法:家庭での標準的な調理(6食分)を想定し、1食あたりのコストを算出。
- 基準:2020年平均を「100」として推移を表示。
【CPI(消費者物価指数)との決定的な違い】公式のCPIには家電や家賃などの「購入頻度が低いもの」も含まれますが、カレー物価指数は「頻繁に購入する食材+毎月の光熱費」に特化しています。
だからこそ、広告現場では「公式統計以上に、生活者が毎日スーパーで感じている“値上がり感”をダイレクトに表す数字」としてクライアントに提示できるのです。
2. なぜ今、この指標が重要なのか?
消費者のマインドは「ニュース」と「価格」で動いている
近年、「コメの品薄・高騰」「輸入肉の円安値上げ」などのニュースが連日報じられています。カレー物価指数は、これらの断片的なニュースを「一つの数字」に変換することができます。
広告の営業マンが活用すべき方向は、「物価上昇がもたらす購買行動の変化」が考えられます。
- 節約意識:どの具材を減らし、何で代替しようとしているか?
- タイパ(時間効率):調理コスト(光熱費)高騰により、時短ニーズがどう変化したか?
- 備蓄意識:「高くなる前に買う」というマインドがどこで働くか?
【2026年の大前提:物価は“戻らない”世界へ】 現在のインフレは一時的なものではありません。物流・人件費・エネルギーコストの構造的変化によるものです。政府も「適正な価格形成」を推進しています。
つまり、広告戦略は「安売り訴求(価格)」から「納得・価値・効率訴求(意味)」へのシフトが不可避となってきます。
3. 広告代理店が使える「実践シナリオ」
指数を「消費者心理の数値(レーダー)」として活用する
① 訴求トーンの「スイッチ」として
- 指数上昇局面(高騰時):「節約レシピ」「鶏肉・挽肉活用」「まとめ買い」などの家計防衛コンテンツを提案。
- 指数安定局面:「週末のプチ贅沢」「ハレの日」「こだわりスパイス」など、高付加価値・ご褒美消費へ舵を切る。
② 「タイパ+エネパ」の強力な裏付け
光熱費が指数を押し上げている場合、時短商品は単なる「便利グッズ」ではなく、「調理コストを抑える賢い選択」という家計防衛メッセージにすることができます。
③ 価格戦略のベンチマーク(競合比較)
「自炊カレー1食=約350円〜400円」という具体的な基準があれば、冷凍食品、レトルト、外食チェーンが提供する「タイパ」や「プロの味」の相対的なコストパフォーマンスを論理的に説明できます。
④ モーメント・マーケティングのトリガー
「カレー物価が過去最高を更新」というニュースは、生活者の不安を煽ります。そのタイミングで「ストック買いキャンペーン」や「保存食特集」を提案することで、ニュース連動型のプロモーションが実現します。
【まとめ】1皿のカレーが提案の説得力を変える
カレーライス物価指数の真の価値は、数字そのものではなく、「消費者の不安と期待を言語化できること」です。
クライアントに対し、 「今、生活者はこのレベルの負担を感じています。だからこそ、今このタイミングで、この切り口の訴求が必要なのです」 と語れるかどうか?です。
カレー1皿の値段は、為替、天候、農業、エネルギー政策のすべてが凝縮された「日本経済の縮図」と言えます。これを読み解く営業マンは、クライアントにとって単なる「媒体売り」ではなく、今より頼りになる営業マンにステップアップできます。

