第3回:優秀な人から去っていく。「逆選択」が招く組織の壊死

毎日新聞を深堀り

第2回では「資金構造の崩壊」を見ました。

今回は、もっと深刻な問題⇒「人」と「組織の崩落」に焦点を当てます。

パレスサイドビルの売却が“最後の延命策”であるなら、その次に起こるのは、ほぼ確実に 大規模なリストラ です。

売却益が入るということは、その資金で人件費構造を一度リセットするという意味でもあります。

しかし、ここには多くの企業が陥る「逆選択」という罠が待ち受けています。

1. 売却益の“使い道”は最初から決まっている

日本では法律上、解雇は極めて難しいため、大規模な人員削減には「割増退職金」を積んだ早期退職制度が不可欠です。

つまり、売却益が入るということは、数百億円規模の資金が“最初からリストラ原資として確保されている”可能性が高いのです。

さらに、売却後の新オフィスは家賃抑制のために、床面積が現在の半分以下にならざるを得ません。「物理的に座席がない」という現実が、人員削減の強力な推進力になります。

2. 逆選択のメカニズム:「優秀な人ほど先に辞める」

早期退職(希望退職)局面で、社員の心理は綺麗に二つに割れます。

辞める人:市場価値のある“動ける人”

  • 割増退職金をもらえる

  • 転職市場で高い評価を受ける

  • ITスキルがある

  • 若手で柔軟性がある

  • 他業界へ橋渡しできる

こうした人材ほど、「沈む前に船を降りる」という合理的な判断を下します。

とりわけ新聞社は、『デジタル編集』『データ分析』『調査報道』といったスキルを持つ人材の外部価値が高いため、エース級が先に辞める構造 が生まれます。

残る人:外で戦えない“受動メンバー”

  • 他社で通用しない

  • 現年収を維持できない

  • 会社への依存度が高い

  • リスクを避ける志向が強い

こうした層ほど、組織に残り続けます。

⚠️ これが「逆選択(adverse selection)」

改革の中心である“動ける人材”ほど抜け落ち、組織に残るのは“変化を嫌う層”の比率が増えていく。企業再生の場で最も避けるべき構造が、まさにここで起きるのです。

3. 本社による“子会社焦土化”のメカニズム

リストラは本社だけで完結しません。むしろ問題はここからが本番です。

新聞社ではこれまでも、余剰人員の受け皿として子会社への配置転換が繰り返されてきました。しかし、パレスサイドビル売却後の再編では、この“押し込み”がさらに加速します。

売却に伴うリストラが本格化すると、本社に残るのは政治力のある幹部層と、職務が曖昧な層だけ。そして、あふれた本社社員はこれまで以上の規模で子会社へ流れ込むことになります。

これは単なる人事異動ではありません。構造的に起こる“寄生(パラサイト化)”の加速です。

そして最も深刻なのは—

子会社へ配置される人材が、その事業で価値を発揮できるとは限らない という点です。

・子会社が必要とするスキル
・本社から押し出される人材のスキル
この両者が一致しないケースが増えれば増えるほど、

優良子会社の収益力が削られ、本社赤字を補填するための「負のスパイラル」がより強くなる。のです。

これは新しく生まれる問題ではありません。
すでに起きている「見えない崩壊プロセス」が、売却によって一気に加速するということです。

① 優良子会社への「廃棄物処理」化

利益を出している優良子会社ほど、本社は“受け皿”として扱おうとします。

しかし、ここで起きるのは以下の惨劇です:

  • 現場を知らない高給取りが大量流入

  • プライドは高いが実務はできない

  • 給料は子会社社長より高いケースもある

  • 子会社プロパーのモチベーション大幅低下

  • 業績悪化 → 更なる赤字補填

本社を守るために、“金の卵を産む子会社”が破壊されるという最悪の事態すら起こります。

② 不採算子会社への「介錯人」派遣

逆に、利益の出ていない子会社には“整理屋”として本社社員が送られます。

彼らの仕事は

  • 統廃合

  • 組織縮小

  • 事業停止

など、冷徹なコストカットです。

本社にとって子会社は、「本社社員をどう処理するか」という観点でしか見えなくなり、結果として 全体の企業価値が毀損 していくのです。

本当の被害者は、子会社や関連会社で働く人に!

上記に記載したように、売却後の本社は「座席不足」「リストラ圧力」「役職調整」を理由に、過剰な人員の押し出し先として子会社や関連会社を利用せざるを得ません。

  • 本社の余剰社員が一斉に流れ込む

  • 現場の業務フローが破壊される

  • プロパー社員の士気が崩壊する

  • 優良子会社でも赤字化が進む

  • それでも救済されるのは本社だけ

つまり、売却益で“本社は延命できても”、新聞社という巨大なエコシステムの周辺は持たないのです。

本社が生き残るために、最初に切り捨てられるのは、地方拠点・子会社・関連会社・販売網・・・つまり、これまで新聞を支えてきた最前線の人々。

この“周辺部の崩壊”こそ、新聞社の再生可能性をさらに奪う深い構造問題なのです。

最大の被害者は、本社ではなく“子会社と現場”である!

4. 結論:建物とともに「魂」まで解体される

パレスサイドビルの解体は、単なる老朽化した建物の再開発ではありません。これは 「かつて巨大だった新聞社という組織の解体」を象徴する出来事です。

優秀な人材が先に抜け、子会社が疲弊し、本社だけが空虚に生き残る・・・

そうなれば、新しいオフィスに入るのは、形だけ残った“抜け殻の組織” だけかもしれません。

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