1. はじめに:新聞社の次に、“広告主”が直面する問題
前編では、新聞社が生成AI企業Perplexityを提訴した背景と、その背後にある著作権・信用・収益の問題を整理しました。
しかしこの問題は、決して新聞社だけの特殊事例ではありません。
生成AIは、Web上に公開されたあらゆる情報を吸い上げ、要約し、再配信します。
つまり、オウンドメディアを持つすべての企業が、同じリスクにさらされている。のです。
美容・食品・医薬品・不動産・金融・教育・旅行・自動車など。多くの広告主は専門的な情報を自社サイトに掲載し、ブランド価値や検索流入の源泉としています。
しかし、その情報は、AIによって“正確な文脈を失ったまま”要約され、企業名と共に拡散される可能性があるのです。
この続編では、広告主が直面するリスクを整理し、メディア企業だけでなく 企業サイトの情報も守るべき資産である理由を考えていきます。
2. なぜ広告主も他人事ではないのか(構造的理由)
生成AIは次のような動きをします。
- Webページを自動巡回して情報を収集する(スクレイピング)
- 内容を要約し、再構成する
- 出典を示す場合があり、企業名が付くこともある
- ユーザーの質問に対して別の解釈で回答する
これは新聞記事だけに起きることではなく、たとえば以下のような企業も同じ構造に巻き込まれます。
- 資生堂・花王など日焼け対策やスキンケア情報
- 金融機関の資産運用コラム
- 医療機関の症状解説(薬機法リスク)
- 食品メーカーの安全性情報
- 不動産会社のローン説明
- 旅行会社の安全・渡航情報
専門性が高いほど、誤った要約=ブランド毀損のダメージが大きい。
3. 生成AIがもたらす“誤解誘導”のリスク構造
広告主にとって最も重大なのは、AIが誤った要約をし、それが“公式情報のように見える”場合です。
● ケース:日焼け止めの成分解説
例えば、資生堂が公式サイトで「光老化予防には◯◯成分が有効」と掲載しているとします。
Perplexityなどが:
- 成分名を間違える
- 効果を誇張/省略する
- 全く関係ない推奨を混ぜる
そして出典に「資生堂のサイトによると」と表示すれば——
✖ 企業が誤った主張をしているように見える
これは 薬機法リスク すら発生しうる、極めて危険な構造です。
● ケース:医療機関の説明文
症状や治療の誤要約が出回れば、“誤診誘導”につながり社会問題となります。
● ケース:金融機関の投資コラム
「金融庁が禁止する表現」にAIが脚色すれば、広範囲なトラブルが起きます。
AIの誤要約は、企業のブランドリスクそのもの。
4. 新聞社の裁判は「広告主の未来の姿」である
広告主は現在“静か”に見えるだけであり、問題の構造は完全に同じです。
新聞社が提訴に踏み切ったのは:
- 著作権侵害(複製・送信)
- 信用毀損(誤要約+出典表示)
- robots.txt無視(倫理違反)
これらが重なったからであり、広告主も同じ3つの被害に遭う可能性は否定できません。
ではなぜ広告主が提訴しないのか?整理してみましょう。
● 理由①:訴訟費用の負担が大きい
特に中小企業にとっては現実的ではありません。
● 理由②:証拠収集が難しい
ログ取得やスクレイピング監視が専門的で、企業側にノウハウがない。
● 理由③:影響度に気づいていない
しかし、生成AIが検索代わりに使われるほど、企業サイトの流入は減り、 オウンドメディアの価値がAI側に吸われていく。
5. 広告主が今すぐ取るべき対策
しかし、生成AI時代に、企業が“情報資産”を守るためにできることはあります。
● 対策①:公式情報のAI監視
- 自社名でPerplexityを検索し、誤要約を確認
- ChatGPTの「ブラウズ」でブランド名を検索
● 対策②:法律・広報の連携
- 医療・美容・金融などは特に要注意
- 誤情報が出回った場合の“抗議・修正要求プロトコル”を作る
● 対策③:構造化データ(schema.org)の導入
- AIが誤解しないために、公式情報を整理して提供
- Googleが推奨しており、AI対応にも有効
● 対策④:企業間の“オウンドメディア連盟”の可能性
新聞社が“出版社連合”として動いたように、 将来的には企業サイトも連携してAIへのルール整備を共同で求める流れが想定されます。実際にはすでに動いていても不思議ではありません。
6. 新聞社と一般企業──“同じ脅威”だが、被害の形は異なる
生成AIが情報を吸収し、要約して再配信するという構造は、上記の様に、新聞社だけでなく、すべての企業サイトに共通する脅威でする。
しかし“何が奪われるのか”“どのようにダメージが出るのか”は、新聞社と一般企業で大きく異なります。
● 新聞社:商品そのものが奪われる(致命的)
- 記事=商品(直接収益)
- 速報性が命のためAIと完全に競合
- PV減少=広告収入が即死レベルで落ちる
● 一般企業:ブランド・法規制リスクが最大
- 企業サイトは“商品そのもの”ではない
- 誤要約が薬機法・金融規制・炎上につながる
- ブランド評価の低下が長期的に影響
つまり・・・・・
▼ 一目でわかる比較表
| 項目 | 新聞社 | 一般企業 |
| 主な脅威 | 収益が奪われる(記事=商品) | ブランド損傷・薬機法リスク・炎上 |
| AIとの競合 | 100%(速報=AI回答の代替) | 50%(情報の“要約”は補助的) |
| アクセス減の影響 | 即死レベル | 痛いが致命傷には直結しない |
| 訴訟の可否 | 容易(証拠が残りやすい) | 難しい(費用・体力の問題) |
| 提供情報の性質 | 一次情報 | 解説・PR・商品説明 |
● 共通点:AIは“公式情報の代わりになる”
- 新聞社も企業も、AIが回答すればサイト訪問は減る
- AIの誤要約で公式情報と異なる内容が出回る
- 出典表示により企業名・新聞社名が誤情報の“保証人”扱いになる
● 相違点:致命度が異なる
- 新聞社:収益構造が崩壊し「生存問題」
- 企業:炎上・法規制・ブランド失墜という“別の致命傷”
つまり、同じ問題の構造に直面しているが、新聞社は“商品が奪われる”、企業は“ブランドが損なわれる”とダメージの形が異なるのです。
7. 結論:AI時代に「ブランドを守るのは企業自身」
今回の新聞社の提訴は、単なる業界問題ではなく、Web上の情報を持つすべての企業が直面する未来の縮図です。
誤った要約がブランドを傷つけ、 正しい情報がAIに吸われ、 企業のオウンドメディアが“検索されない時代”に入る。可能性があります。
広告主は今、
正確な情報を守る=ブランドを守る
という時代の転換点にいるのかもしれません。
AIと共存する未来は避けられない。しかし“どう共存するか”を決めるのは、企業自身です。
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