2030年の広告クリエイティブーAI量産時代に選ばれる「意志」の価値─シリーズ③

広告業界トレンド・未来予測

はじめに: “作れる”より“選ばれる”が価値になる

2030年、AIは広告制作のコストをゼロに近づけています。

誰もが「完璧な広告」を量産できる世界。 しかし、そこで起きるのは「表現の均質化」です。いわゆる最適解があふれる時代です。

そうなると、人の心を動かす方法に変化が必要になってきます。「効率」ではなく、作り手の「意志」と「物語」が重要になってくるのです。

1. AIがもたらす「最適化の罠」

AIは過去のデータから「正解」を導きますが、それは、。いわゆる「予定調和」でもあります。

  • 表現の均質化:美しいがどれも一緒で、記憶に残らない。
  • 違和感の欠如:AIはエラーを嫌うため、無難になりがち。目を引く「不完全であるからの魅力」が生まれにくい。
  • 物語の不在:「なぜこれを作ったのか」という血の通った物語が欠如する。

2030年、ユーザーは「AI的な最適化」を無意識にスルーするようになっています。

2. “人間クリエイティブ”の核心─不完全さが生む共感

本記事を執筆する過程で明らかになったのは、2030年の消費者はAIが生成する「ノイズのない完璧さ」に対して、無意識に拒絶反応(スルー)を示すようになっているだろう。という事実です。

ここで、ある飲料ブランドの広告制作を例に、「AI単体」「プロンプト・デザイナー(人間)が介在した場合」の差を考えてみました。

【事例】新発売のクラフトコーラのプロモーション

制作手法 クリエイティブの特徴 ユーザーの反応(予測)

AIによる自動生成

 

(過去の成功データ重視)

「完璧なシズル感」

 

黄金比で配置された氷、一滴の狂いもない水滴、非の打ち所がない笑顔のモデル。音響はノイズ一つないクリアな炭酸の音。

「綺麗だが、どこかで見たことがある」と脳が判断。情報の海に埋もれ、CPE(共感単価)は極めて低くなる。

プロンプト・デザイナーによる調整

 

(人間の意志を注入)

「計算された違和感」

 

あえてモデルの表情に「一口目の酸っぱさ」による不細工な歪みを残す。背景には、日常のリアリティを感じさせる「机の上の消しゴムのカス」をあえて映り込ませる。

「あ、これ自分の日常だ」という手触り感。完璧でないからこそ、AIフェイク時代において「実在する信頼」として記憶に刻まれる。

なぜ「不完全さ」が選ばれるのか?

私が本シリーズで提唱しているCPE(共感単価)において、最も高いスコアを叩き出すのは、実はこうした「人間特有の揺らぎ」です。

  • 視覚の揺らぎ:全てが中心に配置された構図ではなく、あえて「余白」や「ピントの外れた物体」を置くことで、視聴者の視線を誘導し、物語を想像させる。

  • 聴覚のノイズ:AIが生成する完璧なナレーションに、あえて「一瞬の言葉の詰まり」や「生活音(遠くの鳥の声など)」をプロンプトで指示して混ぜ込む。

これらは、AIにとっては「排除すべきエラー」ですが、人間にとっては「そこに誰かがいるという気配(信頼)」そのものになるのです。

3. 新職能「プロンプト・デザイナー」の役割

現場では、従来の職種を超えた「プロンプト・デザイナー」が中心に作業が進みます。

※プロンプト・デザイナーとは。今は馴染みが無いかと思いますが、近いうちにメジャーになります。AIへの指示(プロンプト)を高度に言語化・設計し、ブランドの意図した通りの創造性を引き出す専門職を指します。

  • 感情の翻訳:人間の曖昧な想いを、AIが理解できる解像度の高い「感情言語」に変換します。
  • AIとの共創:AIを単なる道具ではなく「相棒」のように使いこなし、人間の想像力を増幅させます。
  • ブランドの守護:AIが生成したものの倫理観や品格をチェックし、ブランドの「最終的な審美眼」を担います。

4. 2030年の役割分担:AI vs 人間

特徴 AI(効率・量) 人間(情緒・質)
役割 大量生成・パターン抽出 意味付け・哲学の定義
源泉 過去の蓄積データ 未来への意志・個人の体験
成果 効率的な「最適解」 記憶に残る「納得解」

まとめ:AI時代こそ「誰が、なぜ作ったか」がブランドになる

AIが量産するほど、「人間の介在」は希少価値となり、信頼の証となります。

2030年のクリエイティブとは、AIが描いた作品に、人間が「意志」という最後の仕上げを加えること。になるでしょう。

「なぜ、その色か」「なぜ、その言葉か」。 自らの言葉で答えられるクリエイターこそが、最も必要とされる存在になると思われます。

 

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