現代のデジタル広告において、「広告が『表示された』だけで効果を果たしたといえるのか?」という疑問は、企業が直面する最も重大な課題の一つです。
ネット広告の世界では、膨大な数の広告が一瞬で配信され、その成果は「表示回数(インプレッション数)」で測られることが一般的です。しかし、「表示された=見られた」ではないという現実があります。ページの下部に露出されても、その広告はユーザーに見られていなくてもインプ数に加算されます。しかし、ユーザーが気づかなければ、その広告は「見られていない」のです。
今回は「インターネット広告の成長はどこまで続くか?」シリーズ第3弾として、表示された広告が本当に“届いている”のか?という本質的な問題を、「ビューアビリティ(視認性)」という切り口から考えます。
1. インプレッションとビューアビリティの決定的な違い
まず基本の用語から解説します。
● インプレッションとは?
インプレッション(Impression)は、広告が表示された回数を意味します。ページを開くと自動でカウントされ、ユーザーが気づいていなくても「1インプレッション」として加算されます。
たとえば、ページの一番下にある広告。ユーザーがそこまでスクロールしなければ見えませんが、それでも「表示された」とみなされます。
● ビューアビリティとは?
一方のビューアビリティ(Viewability)とは、「広告がユーザーの目に入ったかどうか」を示す指標です。単にページに載っていたかどうかではなく、実際に見られる可能性があったかを問う概念です。
この考え方は、広告効果をより正確に評価するために登場し、今では世界的に標準とされる重要指標です。
なぜビューアビリティが注目されているのか?
かつて広告の効果は「何回表示されたか」で判断されていました。しかし近年では、「その広告がちゃんと見られたか?」に注目が集まっています。
なぜなら、表示されていても見られなければ、広告の意味がないからです。
このような問題意識から、広告業界では「視認された広告=価値がある広告」とする考え方が広まり、「ビューアビリティを重視しよう」という動きが進んでいます。
遅れている日本の対応!
日本は、ビューアビリティに関する取り組みが他国に比べて遅れていると指摘されています。その理由は、以下のような“業界構造”と“国民性”が背景にあると考えられます:
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長らく「インプレッション数」が主な評価基準とされてきた慣習
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出稿側(広告主)より媒体側(メディア・代理店)に都合の良いKPIで評価が続いてきた歴史
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広告の見え方より「とにかく予算を使う」ことに重点が置かれていた過去の文化
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日本企業に多い“前例踏襲”の気質により、新しい評価軸への切り替えが進みにくい
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“数字の精緻さ”より“慣習”や“空気”を重視しがちな国民性
そもそも、アドベリフィケーションに関する知識を学ぶ場が少なく、広告主やメディア関係者が体系的にこの分野を理解する機会に乏しいのが現状です。また、日本では「広告は出せば誰かに届くもの」という従来の感覚が根強く残っており、「本当に見られたか?」「安全な場所に出ているか?」といった検証への意識が後回しにされがちです。
このように、日本では「アドベリフィケーション」という言葉の認知は進んできたものの、行動や実装レベルではまだまだ途上段階にあるのが現実です。広告の健全化と投資効率の最大化を図るには、今後この分野での理解と実践が一層求められます。
2. ビューアブルな広告の国際基準(IAB/MRC)
世界では、ビューアビリティの定義が統一されています。広告が「見られた」と判断されるには、以下のような条件を満たす必要があります。
| 広告フォーマット | ビューアブルと定義される基準 |
|---|---|
| ディスプレイ広告 | 広告の50%以上の面積が、ユーザーの画面に1秒以上表示されている状態 |
| 動画広告 | 広告の50%以上の面積が、ユーザーの画面に2秒以上表示されている状態 |
この基準は、広告主にとって最低限の品質保証ラインになります。
ただし、「1秒見られればOK」ではないことも忘れてはいけません。注意を引き、心を動かして、行動に結びついてこそ広告の役割は果たされます。
3. 日本市場におけるビューアビリティの課題
日本の広告は、他国に比べて「見られていない広告」が多いという衝撃的なデータがあります。
たとえばIAS(Integral Ad Science)の調査によれば、2021年時点のビューアビリティは以下の通りです:
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デスクトップ広告:54.8%(世界平均:69.5%)
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モバイルWeb広告:45.4%(世界平均:64.3%)
つまり、日本では、半分近くの広告が「見られていない」ということになるのです。
これは媒体設計・広告枠の設計・広告運用手法など、日本全体の広告品質に課題があることを示しています。
4. アドベリフィケーションとは何か?
こうした問題を防ぐために使われているのが「アドベリフィケーション(Ad Verification)」という仕組みです。
これは、広告が「ちゃんと見られているか」「安全な場所に出ているか」「不正な表示ではないか」をチェックするための技術です。
3つのポイントで広告の品質をチェックします:
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✅ ビューアビリティ:実際に見られているか?
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✅ ブランドセーフティ:変なサイトや記事に出ていないか?
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✅ アドフラウド:機械的な水増しではないか?
広告主にとっては、「ムダな広告費を防ぐ保険」ではなく、「最低限の品質保証」としての導入が必須になっています。
日本市場におけるアドベリフィケーションの浸透度は?
アドベリフィケーションとは、広告の「見られたか?」「安全な環境か?」「不正はないか?」を検証する仕組みです。グローバルではすでに当たり前のように導入されていますが、日本ではまだ発展途上といわれています。
日本の広告業界でも、JAA(日本アドバタイザーズ協会)やJIAA(日本インタラクティブ広告協会)などが、ビューアビリティやブランドセーフティを重視する動きを強めています。しかし、実務レベルでは大手広告主を除いて導入率は高くなく、特に中小企業やローカル案件では“名前は聞いたことがあるが使っていない”という状況です。
その背景には次のような要因が考えられます。
- 広告主が媒体や代理店任せにしてしまう体質
- 表示回数(インプレッション)だけを評価する旧来的なKPI設計
- 教育機会の不足と、全体的なデジタルリテラシーの遅れ
そもそも、アドベリフィケーションに関する知識を学ぶ場が少なく、広告主やメディア関係者が体系的にこの分野を理解する機会に乏しいのが現状です。また、日本では「広告は出せば誰かに届くもの」という従来の感覚が根強く残っており、「本当に見られたか?」「安全な場所に出ているか?」といった検証への意識が後回しにされがちです。
このように、日本では「アドベリフィケーション」という言葉の認知は進んできたものの、行動や実装レベルではまだまだ途上段階にあるのが現実です。広告の健全化と投資効率の最大化を図るには、今後この分野での理解と実践が一層求められます。
まとめ:広告は「表示される」だけでは意味がない
いま、広告は「とにかく出す」ではなく、「どう見られるか」「どう伝わるか」が必要です。
今はインターネット広告でしょ!インターネット広告を実施しておけば間違いない!みたいな考え方が蔓延している感があります。
そして、ビューアビリティという考え方は、それを測る最初の入り口です。
インターネット広告が成長を続けるためには、配信面の充実だけでなく、広告主・代理店・媒体社は、見られる広告=意味のある広告という基本に立ち返る姿勢が必要になるはずです。
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