倒産する広告代理店の共通点―なぜ「真面目な会社」ほど先に消えていくのか

広告代理店の未来

はじめに|努力しているのに、なぜ倒産するのか

広告代理店の倒産というと、どこかで無理な経営をしていた、時代に乗り遅れた、そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。

しかし実際には、

  • 長年クライアントと誠実に向き合ってきた
  • 社員を守り、現場を回し続けてきた
  • 派手な成長はないが、堅実に仕事をしてきた

そうした「真面目な広告代理店」ほど、ある日突然、静かに市場から姿を消している現実もあります。

本記事では、近年の倒産データと現場感をもとに、倒産する広告代理店に共通する構造的な特徴を整理します。これは失敗例を責める話ではありません。むしろ、今も多くの代理店が無自覚に抱えている“危うさ”を可視化する試みです。

共通点① 規模が小さく、体力がない

まず、数字が示している現実があります。

2024年1〜4月期に倒産した広告関連業者のうち、負債額1億円未満の企業が全体の92.5%を占めています。中でも、負債1,000万〜5,000万円未満の層が最も多く、小規模な広告代理店や制作会社が淘汰の矢面に立っていることが分かります。

ここで重要なのは、「経営が雑だったから倒産した」のではないという点です。

広告代理店の多くは、

  • 大きな設備投資を持たない
  • 不動産や特許などの担保資産が少ない
  • 人件費がコストの大半を占める

という構造を持っています。そのため、一度キャッシュフローが崩れると、立て直す余地がほとんどありません。

共通点② 売上はあるが、利益が出ていない

倒産する広告代理店の多くに共通するのが、「売上はそれなりにあるのに、利益が残らない」という状態だと想定できます。

背景には、

  • 受注単価の下落
  • 外注費・制作コストの上昇
  • Adobe等の制作ツールや運用ツールのサブスクリプション費用
  • 人手不足による人件費の上昇

といった複合的な要因があります。

特に問題なのは、

忙しいほど、会社にお金が残らない

という構造です。現場は回っているのに、月末の資金繰りは常に綱渡り。こうした状態が常態化すると、少しの外部ショックで一気に息切れします。

共通点③ 人月型・納品型モデルから抜け出せない

多くの倒産事例に共通するのが、

  • 人が動いた時間で売上を作る
  • 制作物を納品して対価を得る

という、人月型モデル:「人の稼働時間に依存する・納品前提のビジネスモデル」への強い依存です。

このモデルは、需要が右肩上がりの時代には機能しました。しかし現在は、

  • AIによる制作効率の急上昇
  • 制作物のコモディティ化
  • 「それ、AIでできるのでは?」という発注側の認識

によって、単価そのものが維持できなくなっています。

それでも現場は回さなければならないため、

  • 値下げを受け入れる
  • 人を減らして回す
  • 社長や幹部が現場に張り付く

といった“消耗戦”に陥りがちです。

共通点④ デジタル対応が「中途半端」

近年の倒産事例を見ていると、「デジタルをやっていない会社」よりも、

デジタルを“やらなければならないだろう”と考え、とりあえず取り組んだ会社

の方が、むしろ危ういケースが目立つと思われます。

多くの場合、

  • デジタルが重要だと分かっている
  • ただし、何から手を付けるべきかは曖昧
  • 結果として、空いている担当者に任せてスタートする

という流れで施策が始まります。

その結果、

  • Web広告は一応扱っている
  • SNS運用も依頼があれば受けている
  • 動画制作も「できます」とは言っている

ものの、

  • 専門性が育たない
  • 成果の再現性がない
  • 強みとして語れない

という非常に中途半端な状態に陥ります。

市場が高度化した現在、「とりあえずデジタルをやる」という姿勢は、

何もやっていないよりは良いが、競争力にはならない

という位置づけになりつつあります。結果として、「何でもできます」は「何も強くありません」と同義になってしまうのです。

共通点⑤ 危機が見えた瞬間に、人がいなくなる

広告代理店の倒産が、ほぼ例外なく、破産・特別清算といった“消滅型”になる理由は、業界特有の資産構造にあります。

広告代理店の最大の資産は「人」です。

しかし、

  • 経営不安が表面化した瞬間
  • 支払い遅延や案件縮小の噂が出た時点

で、優秀なクリエイターや運用担当者は、比較的容易に次の職場へ移っていきます。

人が抜けた会社には、

  • 引き継ぐノウハウも
  • 引き留める資産も
  • 買収する魅力も

残りません。その結果、再建ではなく「消滅」が選ばれるのです。

倒産より深刻な「静かな退出」

もう一つ見逃してはならないのが、倒産件数以上に多い休廃業・解散です。

2024年度、広告関連業では、

  • 倒産:69件
  • 休廃業・解散:399社

と、実に約6倍の企業が“倒産という形を取らずに”市場から退出しています。

これは、

  • これ以上続けても先が見えない
  • 借金を抱える前に畳もう

という、経営者の現実的な判断でもあります。

まとめ|倒産は失敗ではなく「構造の結果」

倒産する広告代理店には、確かに共通点があります。しかしそれは、怠慢や無能の結果ではありません。

  • 小規模で体力がなく
  • 利益が出にくい構造を抱え
  • 人月型モデルから抜け出せず
  • 人が資産であるがゆえに再建できない

こうした業界構造の中で、誰にでも起こり得る結末です。

重要なのは、この現実を知った上で、

  • どの立ち位置を選ぶのか
  • どのモデルに依存し続けるのか

を、早めに選び直すことです。

 

本記事は、【2026年版】広告代理店の未来はどうなる?という連載シリーズの第2話です。

次章では、淘汰が進む中で、生き残る広告代理店は何が違うのかを整理します。

👉生き残る広告代理店は何が違うのか
― 倒産しない会社に共通する条件【2026年版】