全国紙・都道府県別発行部数データ分析【第1回】 全国紙5紙の勢力図「全国紙=全国」を分析します

新聞発行部数

これまで本ブログでは、全国紙の全体的な発行部数やその推移について取り上げてきました。今回の連載では少し視点を変えてみたいと思います。

注目するのは「地域」です。日本ABC協会が発表した最新の「新聞発行社レポート(2024年7〜12月平均)」を基に、都道府県別の詳細な内訳を見てみます。すると、全国の合計数字だけでは分からない実態が浮かび上がってきます。

【本連載のデータ期間と根拠について】 今回の分析では、2024年7月〜12月平均のデータを使用しています。本来であれば2025年の最新データを用いるべきですが、日本ABC協会による「都道府県別」の詳細な内訳データは、現時点でこの期間が最新の公表値となります。 予めご了承ください。

「全国紙」という言葉の響きから、日本全国どこでも同じように読まれているというイメージを持たれがちですが、実はその中身は、地域によって驚くほどの偏りがある「ブロック紙の集合体」に近いものになっていることが見えてきます。

それでは、全国紙5紙それぞれの特徴と、最新データから見えるリアルな勢力図について詳しく見ていきましょう。

読売新聞:北関東・南関東に築いた「鉄壁の城」

全国合計で約570万部という圧倒的シェアを誇る読売新聞ですが、その強さを支えているのは首都圏周辺だと分かります。

  • 茨城県:22.55%(新聞購読者の約4軒に1軒が購読)
  • 埼玉県:19.07%
  • 千葉県:18.15%

これらの地域では、読売の販売網(YC:読売センター)が単なる配達組織を超え、地域インフラとして存在感を持っていることが分かります。

読売の強みは、この巨大な販売店ネットワークにあります。地域イベントへの協賛など、生活に密着することで、他紙が追随できない高い普及率を維持しているのでしょう。

一方、西日本に行くと普及率は10%を切り始め、地域による濃淡がはっきりしているのも読売の大きな特徴です。

朝日新聞:都市部・高所得層に強い「盤石の準主役」

全国2位の朝日新聞は、特に首都圏や近畿圏の都市部で高い存在感を示しています。

  • 神奈川県:9.54%
  • 東京都:7.06%

これらの地域では読売と激しいシェア争いを繰り広げており、知的・リベラル層、あるいは高年収層をターゲットとしたブランドイメージが数値に表れています。

地方部での苦戦は目立ちますが、教育・文化面での信頼度を背景とした都市部での「指名買い」の強さが、経営の基盤となっています。

毎日新聞:奈良での「奇跡」と、首都・東京での「屈辱」

今回のデータで最も注目すべき極端な二面性を持っているのが毎日新聞です。 まず特筆すべきは、奈良県における「奇跡」です。

  • 毎日新聞:14.81%
  • 読売新聞:12.80%
  • 朝日新聞:9.54%

全国で唯一、毎日新聞がシェアトップに立っているのが奈良県です。これは旧大阪毎日新聞時代からの伝統と強固な販売網が現在も機能し続けていることが要因だと推測できます。

しかし、その裏で首都・東京での苦戦は「致命的」なレベルに達しています。

  • 東京都(毎日):100,651部(1.33%)
  • 東京都(産経):122,750部(1.62%)

東京では、なんと産経新聞にも抜かれ、全国紙5紙の中で「最下位」という位置付けなのです。さらに、大阪(約28.6万部)と比べると、東京の部数はその約3分の1しかありません。なぜこれほど東京で受け入れられないのでしょうか?

要因としては、リベラル層の読者が「朝日」に流れ、毎日の立ち位置が曖昧になっていることです。その結果として東京での販売網(専売店)が弱体化しているのです。

現在の毎日新聞は、データ上では「関西を拠点とする有力紙」へと変質しつつある姿が見えてきます。

日本経済新聞:「経済活動」を追うビジネスインフラとしての勝機

日経新聞は普及率こそ他紙に及びませんが、そのターゲットと存在意義は極めて明確です。

  • 東京都:328,465部(4.34%)
  • 神奈川県:132,241部(2.90%)

東京都だけで32万部以上を維持しており、ビジネス界からの支持率の高さが分かります。

日経の場合、デジタル版への移行が最も進んでいるため、紙の新聞は「特定の層に向けたプレミアムなビジネス誌」のような役割を果たしていると推測できます。

「不特定多数に売る一般紙」ではなく「必要な人に確実に届くビジネスインフラ」として、独自のポジションを築いています。

産経新聞:大阪と奈良に全戦力を集中

産経新聞は、もはや全国紙というよりも「近畿圏の有力紙」としての性質が強まっています。

  • 大阪府:6.41%(約29万部)
  • 奈良県:7.66%(約4.6万部)

この2府県以外では、多くの県で1%を切る、あるいは0.1%台という「点」のような存在になっています。青森県(0.24%)や秋田県(0.37%)などでは、もはや一般の読者が目にする機会は極めて稀なレベルです。

【第1回まとめ】

かつての「全国一律」という姿はもうありません。いまや歴史的背景や地域性が要因となり各紙の特徴は大きく異なっています。しかし、この勢力図の均衡が崩れたとき、何が起きるのか。次回は、その衝撃的な最前線となった毎日新聞社の「富山撤退」の真相に迫ります。

[次回の記事:全国紙・都道府県別発行部数データ分析【第2回】 毎日新聞はなぜ富山県から撤退したのか?336部が示す限界こちら]