知っているようで知らないUberのビジネスモデル|広告業界が今注目すべき理由とは

コラム

この記事でわかること:

  • UberとUber Eatsの違いと、Uberの本来の事業
  • コロナ禍から現在までの売上推移と最新業績
  • 世界と日本でのUberの立ち位置の違い
  • 広告業界が今Uberに注目すべき理由:年間1,500億円規模の広告事業の実態

「Uber=Uber Eats」ではない

「Uber(ウーバー)」と聞いて、多くの方が「Uber Eats(フードデリバリー)」をイメージするのではないでしょうか。コロナ禍で急成長したデリバリーサービスのイメージが強く定着していますが、Uberの本来の事業はそれとは異なります。

まず「Uber」と「Uber Eats」の関係を整理しておきましょう。

UberとUber Eatsの違い

Uber(本体): 正式社名は「Uber Technologies, Inc.」。主な事業はライドシェア(配車)サービスです。スマートフォンアプリを使ってドライバーを呼び、目的地まで移動できる仕組みで、アメリカやヨーロッパでは日常的な移動手段として定着しています。

Uber Eats: Uberの事業の一部として展開するフードデリバリーサービスです。つまり、Uber EatsはUberというプラットフォームの「デリバリー部門」にあたります。

日本では規制の影響でライドシェアが普及していないため「Uber=Uber Eats」のイメージが強いですが、グローバルでは本体のライドシェア事業が売上の中心です。

Uberの創業と成長の歴史

Uberは2009年、ギャレット・キャンプ氏とトラビス・カラニック氏によって設立されました。

当初は「UberCab」として、サンフランシスコでライドシェアサービスを提供したことが始まりです。

スマートフォンで車を呼んで目的地まで送ってもらうというシンプルなモデルは、「スマートフォンが世界を変える」という時代の流れを正確に読んだビジネスモデルでした。

コロナ禍での急成長と事業の転換

2020年のパンデミック発生により、世界中で外出が制限されました。外食需要が激減する一方、デリバリー需要が急増。この状況下でUber Eatsが爆発的に成長します。

  • 2019年のUber全体の売上:約190億ドル(約2兆7,500億円)
  • 2020年:デリバリー部門が前年比2.5倍以上に成長
  • 2021年:デリバリー部門の収益は約83億ドル(約1兆2,000億円)に達した

コロナ禍ではライドシェア需要が激減した一方で、デリバリーがその穴を埋め、会社全体としての事業継続を支えました。

コロナ収束後のUber:最新業績(2024〜2025年)

コロナ収束後、事業のバランスは再び変わりました。

2025年12月期の売上高は143億6,600万ドル(約2兆円超)に達しています。

2024年第4四半期は売上高が前年比20%増の120億ドルと好調で、モビリティ部門(+25%)とデリバリー部門(+21%)ともに成長を示しました。

2024年の事業別収益構成

2024年通期のセグメント別売上高比率は、モビリティ(ライドシェア)が56.33%、デリバリー(Uber Eats)が32.75%、貨物運送が10.93%となっています。

つまりコロナ禍で逆転したデリバリー優位の構図は解消され、本来のライドシェアが再び主力に戻っています。

世界と日本:Uberの立ち位置の違い

世界でのUber

アメリカ・ヨーロッパを中心に、ライドシェアは都市部の標準的な移動手段として定着しています。電動自転車・スクーターのシェアリングサービスも展開しており、都市交通のインフラとしての役割を担っています。

2025年に入ってからは自動運転分野での提携を強化し、ドバイでの実証実験開始やフォルクスワーゲンとの協業を発表しています。

日本でのUber

日本国内では道路運送法による規制からライドシェアの展開が大きく制限されており、Uberの主な収益源はUber Eatsです。

規制緩和の議論は続いており、タクシー配車との協業や一部エリアでの試験展開も始まっていますが、欧米と同様のライドシェア普及には時間がかかる見通しです。

広告業界が今Uberに注目すべき理由

ここからが、広告業界の方に特に知っておいていただきたい内容です。

Uberは今、ライドシェアやデリバリーだけでなく、急成長する「広告プラットフォーム」としての顔を持ち始めています。

Uber広告事業の急成長

Uberの広告事業の年間純収入ランレートは2024年に10億ドル(約1,500億円)に達しました。これは2022年のランレートだった5億ドルの2倍であり、わずか2年目の広告ビジネスとしては見事な成果です。

Uberの広告事業は、Uberアプリ・Uber Eatsのアプリ・メール・カートップ・車内タブレットに表示される広告など、さまざまな広告フォーマットを販売しています。

なぜUberの広告は強いのか

Uberが広告プラットフォームとして急成長している理由は、「いつ・どこへ・何をしに行くか」というユーザーの行動データを持っている点にあります。

配車や料理宅配アプリの利用データをもとに消費者の嗜好に合う広告を表示するUberの広告は、「リテールメディア」と呼ばれる分野に位置します。消費者と接点を持つ企業が広告を配信するこの市場は世界で18兆円規模に育っており、GoogleとMetaが牛耳る市場の勢力図を書き換える可能性も秘めています。

例えば「空港に向かっているユーザー」には旅行関連広告、「特定のショッピングモールへ向かうユーザー」にはそのモールのブランド広告というように、移動の「目的」に連動したターゲティングが可能です。これは他の広告プラットフォームにはない強みです。

日本でのUber広告の展開

日本では2024年から広告事業の本格展開が始まりました。Uber Eatsの加盟店であるレストラン向けのリスティング広告が最初のサービスで、ユーザーがUber Eatsアプリを開いた際に広告出稿店舗が上位に表示される仕組みです。

Uber Eatsでは、ユーザーが画面を開いてから閉じるまで平均100店舗以上が表示されます。ユーザーの約70%はフィードに表示された上位10店舗から選ぶ傾向にあるため、広告による表示順位の向上は非常に効果的です。

クッキーレス時代における強み

Uberはファーストパーティデータ(自社が直接収集したユーザーデータ)を活用しており、GoogleのサードパーティCookie廃止の影響をほぼ受けないクローズドループのエコシステムを持っています。

これは、クッキーレス時代に多くの広告プラットフォームが直面している計測・ターゲティングの課題を、Uberは構造的に回避できることを意味します。広告主にとって非常に魅力的な環境です。

広告代理店・マーケター担当者への示唆

Uberの広告事業の台頭は、広告業界にとって以下3点の意味を持ちます。

  1. 新たな出稿先として評価が必要:GoogleやMetaへの集中出稿から、Uberのような「行動連動型リテールメディア」への予算分散が、特に飲食・小売・旅行・エンタメ業界のクライアントにとって有効な選択肢になりつつあります。
  2. 「モーメントマーケティング」の可能性:「移動中」「注文直前」という購買意欲が高いタイミングに広告を届けられるUberの特性は、コンバージョン率の高さという観点から注目に値します。
  3. リテールメディア全体の潮流を把握する:Uber広告の成長は、Amazon広告・楽天広告・コンビニ広告など「プラットフォームが持つ行動データを活用した広告」という大きなトレンドの一部です。この領域への理解は、これからのマーケティング提案において必須の知識になります。

よくある質問(FAQ)

Q. Uber Eatsはコロナ後に需要が落ちているのでは?

A. 日本国内ではコロナ禍ほどの急成長は落ち着いていますが、グローバルでは安定した成長が続いています。2024年通期でもデリバリー部門は前年比21%成長を記録しており、衰退ではなく「コロナ特需からの正常化」と捉えるのが正確です。

Q. 日本でUberのライドシェアは今後普及しますか?

A. 規制緩和の議論は進んでおり、一部地域・条件での試験運用も始まっています。ただし欧米水準の普及には法整備と既存タクシー業界との調整が必要で、短期間での大幅な変化は現時点では見通しにくい状況です。

Q. Uber広告は中小企業・中小飲食店でも使えますか?

A. はい。Uber Eatsに加盟しているレストランであれば、週ごとの予算設定でリスティング広告を出稿できます。少額予算からのスタートも可能で、大企業だけでなく中小飲食店でも活用できる仕組みになっています。

まとめ:UberはプラットフォームからメディアへとUberは進化している

「配車アプリ」として誕生したUberは、デリバリー・モビリティ・そして広告という3つの収益柱を持つ総合プラットフォームへと進化しています。

特に広告事業の急成長は、Uberが単なる「移動・配達の会社」ではなく、消費者の行動データを活用した「次世代のメディア企業」としての顔を持ち始めていることを示しています。

広告業界に携わる方にとって、Uberは「Uber Eatsを使う会社」ではなく、「広告主として、あるいは広告メディアとして、向き合うべき存在」になりつつあります。

 

広田 誠一