前回(第1話:インターネット広告の成長はどこまで続くか?鍵を握るのは“配信面”という受け皿の供給力!)で取り上げたように、インターネット広告のさらなる成長の鍵を握るのは「配信面の確保」です。
インターネット広告の成長に伴い、良質な配信面の不足だけでなく、生活者がスマホなどの画面に接する時間、いわゆる”可処分画面時間”は飽和に近づきつつあります。
つまり、新たな広告成長のためには“画面の中”ではなく、“画面の外”へと目を向ける必要があるのです。
本日は、
「スマホ画面の次に来る、生活者との新たな接触面(広告インベントリ=広告を配信できる場所)」
について、具体的なメディアや技術を挙げながら、広告主や広告代理店が取るべき次の戦略を考えてみます。
なぜインターネット広告は“スマホ画面の外”が求められるのか?
1. 画面広告の飽和
- YouTube、Instagram、Xなど、良質なスマホ画面上の広告在庫は飽和気味
- インターネット広告の成長に伴うCPM/CPCの高騰、費用対効果の悪化
- 生活者の”視線”や”集中力”は、もはや新規の画面広告に反応しにくい状況に
- ※現代の生活者は、スマホやPCなどから日々大量の広告にさらされています。その結果、いわゆる「広告疲れ」や「バナーブラインドネス(無意識のスルー)」が発生し、新しい広告にも反応しづらい状態です。
- また、SNSや複数アプリを並行して使用する生活スタイルにより、集中力が分散し、広告への注意が向きづらくなっています。
- よって、「目立つ場所に出せば効く」という常識が崩れつつあり、広告主は“目以外の接触点”を模索せざるを得ない状況です。
2. “ながら時間”の拡張
- 通勤中、料理中、家事中、運転中など、画面を見ていないが情報は入る時間
- ここに”聴覚”や”身体感覚”を軸にした広告が入り込む余地あり
3. テクノロジーの進化
- IoT(モノのインターネット化)、スマートスピーカー(音声操作型端末)、XR(AR・VRなどの拡張現実技術)、空間音響(方向性を持った立体音響)、センサー技術など、
- 画面に頼らない情報伝達の手段が急速に進化しており、生活空間のあらゆる場面が広告接点となる可能性を秘めている
注目すべき“画面外”の広告インベントリ(配信面)5選!
これまで第1話ではOOH(屋外広告)など、物理的な空間を活用した“画面の外”の広告について触れました。第2話では、その延長線上として、さらにパーソナルで日常生活に深く溶け込むタイプの広告接点に注目します。
特に、家庭内や身体、仮想空間といった「個人の生活空間・感覚領域」に入り込む広告は、OOHとは異なる文脈で接触が発生します。
では、実際にどのような“画面の外”の広告接点が、すでに現れ始めているのでしょうか? ここでは、広告主が今後注目すべき有望な広告配信面を5つ取り上げてみます。
これらはいずれも「生活空間に溶け込む設計」や「テクノロジーとの融合」が進み、従来の“見る広告”から“感じる広告”への転換を示す象徴的な事例として取り上げています。
1. スマートスピーカー広告(Amazon Echo / Google Nest)
- 家の中にある常設メディアです。声で話しかけ、声で応答するため音声広告との親和性が高いといえます。
- 天気・料理・音楽など生活密着型のトピックと連動しやすい
- 【例】「OK Google, 今日の天気は?」→「今日は晴れ。ついでに…◯◯のキャンペーンも実施中です」
2. IoT家電との連動広告
- スマート冷蔵庫、エアコン、洗濯機などがインターネット接続
- 機器の使用状況に応じた広告メッセージ(通知や音声)を配信可能
- 【例】エアコンの節電モード時に、「この時間帯、電気代が安くなる××プランが人気です」
3. 家庭内サイネージ(冷蔵庫パネル、ミラー型ディスプレイ)
- 韓国・中国では、家庭用ディスプレイ内蔵家電が普及しはじめている。と言われています。
- 日常動作の中で“ながら接触”可能
4. ウェアラブルデバイス
- スマートウォッチやARグラスなど、身に着けるデバイスを活用した通知広告や、ユーザーの視線や動きと連動した体験型広告が可能に
- 【例】ARグラスで視線の先にある商品を認識し、関連するプロモーション情報やクーポンが自動で表示されるといった仕組み
5. XR・メタバース空間
- 特にZ世代・ゲームユーザーにとって新たな生活空間になりつつある
- アバターと連動した体験型広告や、ゲーム空間内の自然な広告設計が可能
- 【例】Fortnite、Roblox内でのブランドイベントや着せ替えアイテム
なお、ここで紹介した5つの“画面外”広告インベントリは、いずれも生活者の深層に入り込む設計が可能で、体験価値の面では非常に注目すべき存在です。
ただし、OOHのように公共空間で一度に多数へリーチする手法とは異なり、どれも「個人に最適化された広告」であるため、現時点では配信インフラの整備やユーザー利用の広がりに時間がかかる領域でもあります。
そのため、すぐに大規模な広告出稿には向かないかもしれませんが、中長期的に「ブランドとユーザーの関係性を深めるチャネル」として育成していく価値があるといえるでしょう。
広告主に求められる“感覚設計”の視点
いままでは「視覚中心」だった広告接触は、これからの時代、
“視覚・聴覚・触覚、さらには空間認知まで含めた「体感設計」”
が求められるようになります。
つまり、生活者が“画面を見ていない時間”に、いかに「違和感なく」「生活動線の中で」広告接点をつくれるかが勝負になります。
また、企業側には次のような設計視点が求められます:
- 単なる音声配信ではなく、文脈に沿ったナチュラルな挿入
- プライバシーや利用シーンへの心理的安全性への配慮
- 長期的なブランド価値の形成につながる体験価値の提供
まとめ:広告は“見る”から“感じる”へ
インターネット広告は、“配信面の飽和”を超えた段階へと突入することになります。
スマホ画面上のインプレッション競争から抜け出し、生活の中に溶け込むような接触設計。それこそが、今以上の成長を続ける為に必要なのです。
広告は、目に見えない場所でも生活者の記憶に残る。
この設計と説得力を構築することが非常に大切になってくるっでしょう。
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第1話:第1話:インターネット広告の成長はどこまで続くか?鍵を握るのは“配信面”という受け皿の供給力!
第3話:「インターネット広告の成長はどこまで続くか?見られていない広告」の正体とは?に続く!

