はじめに:テレビは「見る」ものではなく「つける」ものだった
かつて、テレビは“BGM代わり”として多くの家庭で無意識につけられていました。
とくに一人暮らしの若者や高齢者層においては、「とりあえずテレビをつける」という行動が、安心感や習慣として定着していたのです。
しかし2020年代後半に入り、その“当たり前”が少しづつ変わり始めています。
データが示す変化:テレビの“存在感”が薄れつつある
総務省の『令和6年通信利用動向調査』によれば、2020年に96.2%だったテレビ保有率は2024年には91.5%に減少しました。
一見するとまだ高い数字に見えますが、裏を返せば「5%弱の世帯がテレビを持たない」ことを意味し、これは以前には考えられなかった状況です。
さらに、ビデオリサーチ社の調査では、テレビの1日あたり平均接触時間が203分(2000年)→116分(2024年)と約40%も減少。 代わりにインターネット(スマホ含む)の接触時間が117分と逆転しました。

つまり、「テレビが“そこにある”けれど見ていない」「“とりあえず”つける理由がなくなった」という生活者が増えているのです。
若年層の行動変容:テレビの“文法”を共有しない世代
Z世代・α世代を中心に、
- 放送時間に合わせて行動する習慣がない
- 録画文化を知らない
- スマホでTVerやYouTubeを個別に消費。というように、決まった放送枠に縛られず、“見たい映像”があれば再生し、なければそもそもテレビ自体をつけない・・・そんな選択的な視聴スタイルが定着しているということです。
「家族で同じ番組を見る」「放送時間に間に合うように帰宅する」といった昭和〜平成的なテレビの“文法”をそもそも共有していない層が社会の中核になりつつあるのです。
広告主・代理店はどう向き合うべきか?
「テレビ=強力な広告媒体」という構図が揺らぐ中、広告主が向き合うべき現実は次の通りです。
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視聴率の変化ではなく、生活者が“テレビというメディア”に接触しなくなっている
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TVerやABEMAなどのネット経由の視聴は、テレビという感覚ではなく、ネットコンテンツを見ているという感覚であり、視聴者にとっては“テレビ視聴”とはまったく別の体験である
- つまり、生活者は“テレビを見る”のではなく“映像コンテンツを選んで見る”時代に入っている
この変化に気づかず、従来の「枠」「時間帯」「到達率」ベースのテレビプランニングだけに固執していると、 広告は届いていないのに予算だけが消えていく結果になりかねません。
おわりに:静かに終わる“日常のテレビ”という存在
テレビは、突然見られなくなるわけではありません。 ただ、誰にも気づかれないまま、ゆっくりと“生活の中心”から退いているのです。
それは決してネガティブな現象ではなく、 生活者の行動や価値観が変化していることの自然な帰結にすぎません。
広告業界に求められるのは、この変化を恐れずに捉え、 “テレビをどう活用するか”ではなく、“生活者にどう接触するか”という原点に立ち返ることなのです。

