はじめに
広告を出すとき、必ず通るのが「広告審査」。
営業マンにとっては売上を作る時間を削る“悩ましい関門”です。
ここでは、新聞・テレビといったマスメディアと、近年注目される“デジタルOOH(DOOH)広告”の審査基準を比較しながら、広告代理店の営業現場で何が起きているのかを整理します。

DOOHの審査で苦労している営業マンが非常に多いので、DOOHを取り上げます。また下記事例は一部のメディアをフォーカスしています。
マスメディアの広告審査基準(整理表)
新聞やテレビは「社会的信頼性」を守るため、長年の運用で確立した審査基準があります。広告代理店や広告主にとっては、これが出稿時の大きな壁となります。
最初にマスメディアの審査基準をまとめてみました。
| 項目 | 新聞 | テレビ | ラジオ | 雑誌 |
|---|---|---|---|---|
| 主たる監督機関・団体 | 日本新聞協会 | 日本民間放送連盟(民放連) | 日本民間放送連盟(民放連) | 日本雑誌広告協会 |
| 基本理念・最優先事項 | 社会的信頼性・報道の品位・真実性 | 公共の福祉・視聴者保護・放送免許維持 | 公共の福祉・聴取者保護・放送免許維持 | 読者層保護・媒体ブランド維持 |
| 審査プロセス | 広告倫理綱領・掲載基準への準拠審査 | 二段階審査: ①業態考査(広告主の事業審査) ②表現考査(CM内容審査) |
二段階審査: ①業態考査 ②表現考査 |
掲載基準への準拠審査、 編集部や広告審査委員会による媒体適合性判断 |
| 主な禁止・制限事項 | 責任所在不明確、虚偽・誤認表示、 医薬品・健康食品の効能断定表現、 社会秩序を乱す表現、権利侵害 |
法令違反、スポンサー不適格(例:反社会的勢力)、 差別的表現、青少年に有害な内容 |
テレビに準ずるが音声特性を考慮、 誤解を招く効果音、虚偽表現、 スポンサー不適格 |
編集記事との誤認、媒体イメージ不適合、 過度なヌードや風俗関連、各種法令違反 |
| 技術的要件 | 常用漢字・現代かなづかい、 画像解像度(350dpi推奨)、 刷版データ形式(PDF/X-1a) |
映像フォーマット、CMコード、 音声ラウドネス規格、納品形態の厳格化 |
音声ファイル形式(WAV等)、 クレジット形式、音量レベル、 納品フォーマットの指定 |
印刷用色基準(JMPAカラー)、 入稿データ形式、トンボ・塗り足し、 カラープロファイル指定 |
従来は「新聞広告の審査が最も厳しい」という認識でしたが、近年は広告収入の減少を背景に、一部の事例では柔軟化の動きも見られるようになってきたと言われています。
DOOH広告の現場実態
一方、DOOH(デジタル屋外広告)は本来「スピード感と柔軟さ」が売りでした。
マスメディアでは審査が通らないようなクリエイティブでも、明らかに基準からそれていなければ審査が通っていたのです。つまり、マスメディアの様に業界で定まった規制がない為に柔軟な広告審査体制が整っていたのです。
しかし最近、一部の媒体では新聞やテレビ並みに厳しい審査が導入され、広告代理店の営業マンの負担が急増しています。
今回は、その実情について検証してみます。
- 担当者依存の審査
明文化された基準ではなく「担当者次第」。
月曜は機嫌が悪いから金曜に出しておいた方がいい、など実際に語られることもある。 - 曖昧な逃げ道ルール
「その他、弊社がNGと判断した場合」という一文が必ずつく。これが最も厄介であり、広告審査をする担当者に必要以上の権限を与えているのです。 - 存在意義アピール化
審査が“担当者の権限を誇示する場”になってしまうケースも多く見られます。
担当者は総じて社内で強い立場にありません。そのためストレスが溜まりやすく、その捌け口が「唯一自分の存在感を誇示できる広告審査の場」になってしまうのです。これが担当者に必要以上の権限を持たせてしまう最大の問題点です。結果、営業現場では「理不尽に振り回されている」との声が絶えません。
コラム:経営不安定=本来は“緩い”はずが?
本来、経営が不安定な企業であれば「売上を取りたい → 審査は緩くなる」傾向が出るのが自然です。経営層が窓口に立つ場合は、実際にそうなります。
ところが現場でよく見られるのは逆の現象。
低賃金で社内で立場の弱い担当者が窓口を担うと、「安い給料で働かされている不満」や「社内での立ち位置の不満」が広告審査権限の乱用につながり、むしろ理不尽に厳しくなるのです。
つまり、
- 経営層が直接対応 → 審査は甘くなる(売上重視・クライアント寄り添い対応が普通)
- 担当者任せ → 審査は厳しくなる(承認欲求+ストレス発散)
この“逆説”が、DOOH審査特有の理不尽さを生んでいます。
追加視点:広告審査の厳しさと会社レベルの関係
広告審査の厳しさは、担当者やその会社の環境レベルと比例する傾向があります。会社の環境が悪いほど、審査を実施する担当者の働く環境も悪化し、結果としてストレス発散の場となり、審査は厳しくなりやすいのです。

その結果、広告代理店の営業マンや広告主に不要な負担を強いることになります。
補足:乱用がエスカレートする心理
さらに厄介なのは、こうした担当者は次第に感覚がマヒしていくことです。
- 営業マンはクライアントのために頭を下げて「お願いします」とペコペコする
- その光景が「自分が偉い」と錯覚させ、調子に乗らせる要因になる
- 最終的には「好き嫌い」で審査基準を変えることすら珍しくなくなる
加えて、実際にある話ですが、担当者が会社の上層部に報告せずに勝手に広告出稿を断ってしまう実例も存在します。
これは会社にとって非常に大きな損失につながりますが、上層部には報告が上がらないため認識されません。こうした隠れた損失が、企業全体の信頼や売上に悪影響を与えることもあります。
もはや基準ではなく、“担当者の機嫌”が広告出稿の可否を左右する。これこそが、一部のDOOH審査の最大の不合理であり、現場が疲弊する原因となっています。
このような傾向は最終的に会社や媒体の評判を下げてしまいます。

避ける方法はシンプルで、担当者の定期的な移動です。これは店舗の仕入れ担当者が傲慢にならないようローテーションを行うのと同じ発想です。
この仕組みを導入するだけで、広告媒体が不要に評判を落とすことを防ぐことができます。
営業マンが取るべき広告審査対策
このような状況で営業マンはどうすればいいでしょうか?下記のような対策が必要になってくるでしょう。
- クライアントに事前説明
「この媒体は広告審査が厳しいので時間がかかる」ことを前もって共有することが重要です。
審査基準に関しても、担当者の対応が理不尽な場合があることを正直に伝えることで、営業マンの責任ではないことを理解してもらい、信頼関係を保てます。 - 広告媒体選定の一要素に
メディアを選定する際には、比較軸に広告審査の柔軟性も加えることで、無駄な調整コストを削減できます。 - 不毛な対応は切る勇気
掲載が見込めない媒体は早めに見切りをつけることも大切です。次回以降の提案から外せば、無駄なストレスから解放されます。
まとめ
- マスメディアは「信頼性のための広告審査」
- DOOHは「担当者依存の広告審査」
- 経営不安定で“緩いはず”が、担当者次第で“逆に厳しくなる”
- 乱用はやがて“好き嫌い審査”にまで発展するリスクがある
この構造を理解しておくことで、広告主やクライアントへの説明に説得力が増し、広告代理店の営業現場の判断もシンプルになります。

