本記事は全4回の第2回です。毎日新聞が富山県から撤退した背景を、朝刊336部・普及率0.08%という都道府県別データから検証します。物流コストと販売網の限界が、全国紙撤退を現実のものにしたのです。
2024年、日本の新聞界に大きなニュースが流れました。新聞業界にとっては激震と言っても大袈裟ではありません。
毎日新聞が富山県内での戸別配送網を休止し、事実上の「県単位での撤退」を表明したのです。全国紙が特定の都道府県から姿を消すというこの事態が現実となった節目になるかもしれません。最新のデータを見ると、その断腸の決断を裏付ける衝撃的な数字が並んでいました。
厳密には、デジタル版への移行を推奨し、紙を希望の人には郵送、富山県内の取材体制の維持ということで全国紙の体裁は保っている。と発表しています。
驚愕の普及率 0.08%:1,000世帯に1軒も存在しない読者
最新のABC協会レポートにおいて、富山県の毎日新聞の朝刊部数はわずか336部、普及率は0.08%となっています。
富山県の世帯数は2025年時点で約41.5万世帯。その中で毎日新聞を購読しているのはわずか336人です。街を歩いていても、毎日新聞の読者に遭遇することは「奇跡」に近い確率です。しかもこの数値には「押し紙」を含んでいます。
この数字は、もはや公共インフラとしての新聞の役割を維持できる限界を遥かに下回っていることを示しています。
「物流の壁」と「2024年問題」の直撃
なぜ毎日新聞は撤退せざるを得なかったのか。その最大の理由は、大阪など関西圏の印刷拠点から富山まで新聞を運ぶ「物流コスト」だと推測できます。
調べてみると、毎日新聞の富山・石川エリアは大阪本社の管轄であり、毎日深夜、大阪近郊の工場から300km以上の道のりをトラックで運ばれていました。
他の県も経由しているはずですが、それでも1県を増やすのは大変な距離です。わずか300部強を届けるために、この長距離を毎日往復していたのです。
ドライバーの人手不足や残業規制(物流の2024年問題)によって運送費が高騰する中、1部あたりの配送コストは購読料を数倍、下手をすれば数十倍も上回る「超赤字」状態になっていたと推測されます。
1部の新聞から得られる利益は微々たるものですが、それを運ぶトラックの燃料代と人件費は、部数が減っても安くはなりません。普通の物販ビジネスであれば、とっくの昔に閉鎖されているレベルの損益分岐点を大きく超えていたのです。
富山県の特殊な勢力図:日経にすら負ける現実
富山県における他紙のデータと比較すると、毎日新聞の置かれた孤立無援の状態がより鮮明になります。
- 読売新聞:54,258部(12.51%)
- 日本経済新聞:7,512部(1.73%)
- 朝日新聞:3,923部(0.90%)
- 毎日新聞:336部(0.08%)
富山県は、地元紙「北日本新聞」が圧倒的なシェア(約6割以上)を誇る王国です。全国紙はその隙間を縫う形で争っていますが、毎日新聞は「ビジネス層に特化した」日経新聞の部数にすら大差をつけられてしまいました。
一般紙としての存在意義が薄れ、さらに物流コストという致命傷を負った毎日新聞にとって、撤退は経営判断として「究極の合理化」だったと言わざるを得ません。
【第2回まとめ】
富山県の「336部」という数字は、単なる一地方のデータではありません。それは「紙の新聞」という媒体が全国に届くことの物理的な限界を象徴しています。
では、部数がここまで減った地域で、これまでどのように配送が維持されてきたのか。次回、その舞台裏を調査し、ビジネスモデルの限界を検証していきます。
[次回の記事:全国紙・都道府県別発行部数データ分析【第3回】 普及率1%未満で新聞事業は成立するのか?配送網崩壊の現実こちら]
解説:なぜ撤退は起きたのか?
毎日新聞が直面している全国的な部数激減(前年比-15.5%)の背景については、こちらの全体分析をご覧ください。
👉全国紙の再編成:毎日・産経の地方撤退と発行部数の現状とは!【全体統計版】

