広告には多くのノウハウやテクニックがありますが、本質的にもっとも大切なことは「生活者との信頼関係の構築」です。
安価に広告が出せる時代となり、誰でも簡単にランディングページを作成し、広告を打つことが可能になりました。しかし、その結果「一方的に言いたいことだけを伝える広告」が増え、生活者からの信頼を得られないケースが多発しています。
広告で忘れてはいけない前提
広告を実施するうえで、最も大切な前提として、下記3点が考えられます。
- 生活者は広告を信じていません。
- 広告を見るとき、すでに他の競合製品の情報や口コミも確認しています。
- 特に健康食品や美容商品では「過去に裏切られた経験」があるため、広告を見る目が非常にシビアです。
広告が疑われる理由
そして、現代の生活者は、次のような疑念を抱いて広告を見ています。
- 「またこの手の宣伝か」
- 「口コミと全然違う」
- 「初回だけ安くて、結局高くつくんでしょ?」
- 「これって大袈裟すぎない?」
このように、“広告を見た瞬間から疑われている”という前提に立つことが必要です。
広告に必要な視点:信頼性の獲得
では、どうすれば信頼を得られる広告になるのでしょうか?
A. 具体的な数値
- 「93.2%のユーザーが効果を実感」
- 「30日で平均2.1kgの減量が確認」
など、根拠ある具体的数値を明記すること。 また、そのデータを「誰が調査したのか」まで明記することが信頼性向上に繋がります。
例:花王の「ビオレ」ブランドでは、自社の肌測定データを活用し、広告内で具体的な皮膚水分量の変化をグラフで提示。信頼性が高く、購買につながった。と言われています。花王のような大手優良企業の手法は大いに参考にすべきです。
B. 小さな約束
- 「1週間で10キロ減」など大きな約束よりも、
- 「毎日続けて3ヶ月後に体質改善が期待できます」
のような実現可能な小さな約束のほうが信頼されます。
例:ファンケルの広告では「まずは1週間試してみてください」と明示。小さなゴールを提示することで、初回購入のハードルを下げ、実際の定着率も向上したとされる。
C. マイナス面の告知
- 「香りが強いため、苦手な方もいるかもしれません」
- 「効果には個人差があります」
など、あえてマイナス情報を提示することで、信頼感は大きく高まります。
例:あるサプリメント広告では「服用後に一時的にお腹が緩くなる可能性があります」と正直に記載。それが「誠実な企業姿勢」として好感され、購入に結びついたケースがある。
補足:証拠の種類別マップ
広告で使用される”証拠”の信頼性と説得力は、形式と出典によって大きく異なります。以下は代表的な証拠の種類をマッピングしたものです。
証拠の種類別マップ(信頼性 × 説得力)
広告において「信頼性のある証拠を示すこと」は極めて重要です。しかし、証拠といってもその種類はさまざまで、信頼性や説得力に大きな差があります。
ここでは、代表的な6種類の証拠を「信頼度」と「説得力」の2軸でマッピングし、どのような使い分けが適切かを可視化しました。広告設計時の判断基準として活用してください。
※マップ上で信頼度と説得力のバランスを確認することで、訴求内容に応じた「証拠の組み合わせ」が可能になります。
広告で使用される”証拠”の信頼性と説得力は、形式と出典によって大きく異なります。以下は代表的な証拠の種類をマッピングしたものと思ってください。
証拠の種類 | 信頼度 | 説得力 | 説明 |
---|---|---|---|
第三者機関による試験結果 | ◎ | ◎ | 大学・医療機関・研究機関などの評価付きデータ。最も信頼度が高い。 |
公的機関の認証・許可 | ◎ | ○ | 厚労省やFDAなどの認証。効果そのものより安全性の担保が強み。 |
実測データ(社内検証含む) | ○ | ◎ | 数値・グラフなどの提示があれば説得力が高い。ただし出典の明記が必須。 |
利用者レビュー・体験談 | △ | ○ | 共感を得やすいが、信頼性には注意が必要。ステマと誤解されない配慮が重要。 |
メディア掲載実績・受賞歴 | ○ | △ | ブランディングには有効だが、効果の裏付けにはならないことも多い。 |
社長のコメント・開発者の思い | △ | △ | 情緒的要素が強く、エビデンスとしては弱い。補足資料として活用するのが適切。 |
このマップを元に、どの証拠をどう組み合わせるかが広告設計の肝となります。
よくある失敗パターン
- 自社商品の魅力を語るだけ(=自慢話)
- 価格訴求だけで終わっている
- 使用者の声が曖昧で説得力に欠ける
こういった広告では、一時的に売れても継続しない=リピーターが生まれないという問題が発生します。
リピーター獲得と広告の本質
信頼性のある広告は、単発の販売だけでなく、継続利用=LTV(顧客生涯価値)の最大化にもつながります。
- 信頼を獲得すれば、再購入・クチコミ・紹介が自然に発生
- 自社のブランディング価値も高まる
そのため広告設計においては、”売り切り型”ではなく、“信頼をベースにした関係構築型“へとシフトすべきです。
具体的には、初回購入後のフォロー体制や、購入者向けの限定情報提供、改善要望の受付、さらにはコミュニティ形成までを含む設計を行い、”信頼”を軸にした関係を深めていく手法です。
このようなスタンスが、結果としてLTV(顧客生涯価値)の最大化や、ブランドのファン化につながるのです。
結論:広告は「信頼の設計」から始めるべき
- 生活者は広告を疑っています。
- 疑惑を解くには、証拠(数値・実証)と誠実さ(小さな約束・マイナス情報)が不可欠です。
- 信頼を得た広告は、長期的なファンとビジネスの成長を生みます。
最後に、自分の広告が「自慢話」になっていないか、今一度見直してみましょう。
信頼される広告には、生活者との共感と誠意がしっかりと込められています。
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