テレビCMが放映されるまで
広告代理店にとって“花形の仕事”といえば『テレビCM』です。
そして、その多くは大手広告代理店(電通、博報堂、ADK、DACグループなど)によって制作されています。
しかし、デジタル技術やAIの発展により、中小広告代理店や企業内のクリエイティブチームでもCM制作が可能になりつつあります。
本日は、AIなどのツールの登場に伴い、テレビCMの制作はどうなってきたのか?
その流れを説明いたします。
『テレビCM』制作の全体像
テレビCMは広告主からの発注によって制作が開始されます。一般的な流れは以下の通りです。
- オリエンテーション(広告主からの説明)
広告主が広告代理店に対し、新商品のプロモーションやブランド戦略について説明します。この段階で目的やターゲット層を明確にします。 - 競合プレゼン(広告代理店による提案)
複数の広告代理店がCM企画を提案し、広告主が最適なものを選定します。最近ではAIを活用したデータ分析をプレゼンに活かすことも増えています。 - 制作コンセプトの決定
広告主が選んだ代理店が、CMのコンセプトを確定させます。映像の方向性やストーリー構成、ターゲット層に響くメッセージを詰めていきます。 - 予算・キャスティング・撮影場所の確定
制作に必要な予算を確定し、出演者(タレント・声優など)の選定、ロケ地やスタジオ撮影の場所を決定します。 - 撮影準備(スタッフ・許可関係の手配)
タレントとの契約や、撮影現場の使用許可、映像スタッフ(監督・カメラマン・照明・美術など)の確保を行います。 - 撮影・編集(仮編集含む)
実際に撮影を行い、仮編集(オフライン編集)を実施。AIを活用して映像の補正やカット割りを自動化する技術も導入されています。 - プレゼン・広告主の確認
仮編集版を広告主に提示し、最終的な内容を確認してもらいます。必要な修正を加えて完成に近づけます。 - 仕上げ編集(最終版の制作)
確定した内容に基づき、映像編集、ナレーションの録音、音楽や効果音の追加を行い、放映可能な状態に仕上げます。 - 完成試写・最終チェック
完成したCMを広告主と関係者に試写し、最終的な調整を行います。この段階でのミスは放映前に修正されます。 - テレビCM放映
確定したCMをテレビ局に納品し、放映スケジュールに沿ってオンエアされます。同時にYouTubeやSNSなどのデジタル媒体への配信も進められます。
デジタル化の進展により、制作プロセスの一部がオンラインで完結することも増えてきています。また、AIを活用したシナリオ制作や動画編集の自動化も進んでいます。
最新のテレビCM制作プロセス
① 企画・コンセプト決定
広告主の要望を整理し、ターゲットや目的を明確化します。
- マーケティング戦略と連携し、CMの方向性を決定します。市場分析を行い、ターゲットとなる消費者のニーズを把握し、効果的な広告手法を選定します。
- AIを活用したターゲット分析や広告効果のシミュレーションを実施し、視聴者の興味関心に最も適したメッセージを作成します。
- 複数の広告代理店が競合プレゼンを行い、広告主が最も適した代理店を選定します。
② キャスティング・ロケーション選定
- AIを活用し、過去の広告データやSNSトレンドを分析して、最適なタレントを選定します。ブランドイメージに合った出演者を選び、広告効果を最大化します。
- 撮影予定のロケーション候補を選び、許可申請を行います。近年は、バーチャルスタジオの活用が増えており、実際のロケ地に行かずにリアルな映像を作成することも可能です。
- CGやバーチャルプロダクションを活用し、実写とデジタル技術を組み合わせた映像制作を計画します。
③ 撮影・編集
- 高画質カメラやドローン撮影を活用し、映像の質を向上させます。特に、ドローンによる空撮は視覚的インパクトを与えるため、CMの訴求力を高める要素のひとつです。
- AIによる自動編集や映像補正を実施し、効率的にクオリティの高い映像を作成します。AI編集ツールを活用することで、複数のパターンを短時間で作成し、最も効果的なものを選定できます。
- バーチャルプロダクションを活用し、リアルタイム合成によって背景や演出を自由に変更しながら撮影を進めることができます。
④ 広告主確認・最終編集
- オンラインでのCMチェックが可能になり、広告主はリアルタイムでフィードバックを提供できます。これにより、修正作業が迅速に行われるため、制作時間の短縮が可能になります。
- AIによる広告効果の予測やA/Bテストを行い、複数のバージョンのCMを比較して最適なものを選定します。
- 編集作業の最終段階では、映像と音楽、ナレーションを調整し、完璧な仕上がりを目指します。
⑤ テレビCM放映とデジタル配信
- テレビだけでなく、YouTube・SNS・デジタルサイネージなど、多媒体での展開を行います。ターゲットごとに適切なプラットフォームを選び、広告のリーチを最大化します。
- AIを活用し、最適な放映時間やチャネルを選定します。視聴データを分析し、最も効果的なタイミングでCMを配信することができます。
- 放映後の広告効果測定を行い、PDCAサイクルを回して次回のCM制作に活かします。広告の反響をリアルタイムで分析し、改善点を明確にすることで、より効果的な広告戦略を実現します。
制作プロセスのまとめ
テレビCM制作は、単なる映像制作ではなく、マーケティング戦略において非常に大切な要素です。そして、今では、AIやバーチャルプロダクションの進化により、より効率的かつ高品質なCMが短期間で制作できるようになっています。
制作の各ステップで最新技術を活用することで、ターゲットに最適なメッセージを届けることが可能となります。
これからも、広告業界はテクノロジーとともに進化し続けるでしょう。