テレビは終わったのか?2025年の放送メディアを再考します!

マスメディア研究・分析

「テレビはもう終わった」「若者は誰も地上波を見ていない」

そんな声を耳にする機会が増えました。しかし、本当にテレビは時代遅れのメディアなのでしょうか?

2025年現在、テレビは大きな転換点を迎えています。

確かにインターネット広告が市場規模でテレビを上回り、若年層のテレビ離れが進む中で、旧来の放送モデルは曲がり角に差しかかっています。しかしその一方で、テレビは“再定義”され、新しい形で生まれ変わろうとしている様子は感じられます。

本日は、「テレビの現状」「テレビの進化」「広告主の視点」「今後の展望」を考えて、“テレビの終焉論”に対して改めて考えてみます。

テレビを取り巻く現在地:数字で見る変化

2025年現在、テレビを取り巻く環境にはさまざまな変化が現れています。以下に挙げる指標は、その構造変化を象徴する代表的なものです。単に“テレビ離れ”と片づけるにはあまりにも多様な状況が広がっていることがわかります。

  • 2024年:TVerの月間再生数が5億回を突破(民放公式配信)
  • インターネット広告費:3年連続でテレビ広告を上回る
  • コネクテッドTVの普及率:家庭の約30%がスマートTVまたはSTBを利用
  • 若年層のリアルタイム視聴:30代以下では“テレビをテレビで見ない”が主流

数字上はテレビ離れが進んでいるように見えます。しかし、それは「地上波という枠組みから離れている」のであって、「映像コンテンツとしてのテレビ」が消えているわけではありません。

リアルタイム放送の価値と再評価

デジタル化の進展はテレビの脅威と見なされがちですが、実はリアルタイム放送(※業界では「リニア放送」とも呼ばれます)に新たな価値をもたらしています。

リアルタイムの放送だからこそ提供できる体験があり、デジタルとの組み合わせによってその力はさらに強まっています。

たとえば、以下のようなコンテンツは地上波の強みとして再評価されています:

  • スポーツの生中継(WBC、オリンピック、サッカーW杯など)
  • 災害・ニュース速報の即時性
  • SNS(X/旧Twitter)との同時体験による共感拡張

これらは、デジタル時代だからこそ“その瞬間”に多くの人と感情を共有することが可能になった典型例です。

テレビは“孤独な視聴”ではなく、“みんなで観るイベント”としての存在感をデジタルと共存しながら発揮しているのです。

 

オンデマンド×テレビ:境界線が消失?

NetflixやAmazon Prime VideoといったVODの浸透により、ユーザーは時間に縛られずコンテンツを楽しむようになりました。一方、TVerやNHKプラスといった「放送局発のオンデマンド」も普及。

特にTVerは、民放各局が横断的に連携し、地上波放送後のコンテンツ配信だけでなく、リアルタイム配信や独自CM挿入などを展開。テレビとデジタルの境界が消え始めています。

コネクテッドTVとCTV広告の台頭

2025年の今、テレビは従来のような“チャンネルを回す機械”としてではなく、インターネットに接続されたデバイスとして捉えられるようになってきました。これがコネクテッドTV(CTV)です。

コネクテッドTVとは、インターネットに接続されたテレビ端末のことで、YouTubeやNetflix、TVerなどのコンテンツをテレビ画面で直接視聴できる仕組みです。

従来の地上波やBS放送とは異なり、視聴者の好みに合わせて配信されるデジタルコンテンツが中心となります。

こうした視聴環境の変化に伴い、広告の形も変わりつつあります。CTV広告とは、コネクテッドTVを通じて配信される動画広告のことで、テレビの大画面とデジタル広告のターゲティング機能を組み合わせた新たな広告手法です。

CTV広告市場は、次のような点で広告主から注目を集めています:

  • デジタルのターゲティング精度×テレビ画面のインパクト
  • リーチだけでなく“視聴完了率”が高い
  • ブランドセーフで、信頼性のあるコンテンツ枠

今や「テレビで流れる広告」も、インターネット広告の一部として扱われるようになってきました。

広告主は何を見ているのか?視聴率だけでは足りない

広告主が注目しているのは、もはや「番組平均視聴率」ではありません。

  • F1層(20〜34歳女性)やZ世代への到達率
  • TVer再生回数・完走率・スキップ率
  • SNSでの波及効果(トレンド化・UGC生成)

つまり、テレビが効いているかどうかは、「数字そのもの」よりも「態度変容」「記憶への残り方」「ネットとの連動」で測られている。

まとめ:テレビは“終わった”のではなく“再定義”?

テレビは「終わったメディア」というのは早計です。

  • 放送と配信が融合する“ハイブリッドメディア”
  • 地上波をベースに、オンデマンド、SNS、IPTVが組み合わさった体験
  • 今もマスにリーチできる数少ないメディアとしての価値

このような価値は、当面あるでしょう。
「テレビは終わった」と切り捨てるにはまだ早い。むしろ今は、「テレビとは何か」が書き換えられている最中だと言えます。

メディアを取り巻く環境の変化は非常に激しい状況です。

その中で、テレビをどう使い、どう見せるか。
広告主・メディア関係者にとって、大切な課題でしょう!

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