ビジネスは大きく『フロービジネス』と『ストックビジネス』に分けられます。
そして、この2つのうち、近年特にその重要性が一層高まっているのが『ストックビジネス』です。
それはなぜか?
本記事では、その理由と、『広告代理店が採用できるストックビジネスの具体例』について、最新のトレンドを交えながら解説していきます。ストックビジネスの導入を検討し、事業をさらに安定・成長させるための一助としてください。
では、最初に『フロービジネス』と『ストックビジネス』の違いや概要について説明します。ビジネスの基本となる重要な部分ですので、しっかりと理解を深めていきましょう!
ストックビジネスの推奨:収益の安定化とビジネスの持続可能性
ビジネスの種類は大別すると、『フロービジネス』と『ストックビジネス』の2つに分けられます。
多くのビジネスは、その名の通り「流れるビジネス」である「フロービジネス」に該当します。
一方で、「ストックビジネス」は、一定期間の売上が見込め、収益の安定化やビジネスの持続性に優れているモデルです。
フロービジネスとは?
私たちが日々接するビジネスの多くは「フロービジネス」です。
コンビニエンスストアやスーパー、飲食店、美容院、クリーニング店など、収入が流動的で固定収入が保証されていないビジネスがこれに当たります。
つまり、売上は常に変動し、過去の経験や統計からある程度の予測は可能ですが、経済状況の急変や新たな競合の出現、パンデミックのような予測不可能な事態によって、売上が大きく減少する、あるいは全くなくなる可能性も否定できません。

近年の社会情勢の変化は、特にこのフロービジネスに大きな影響を与えました。天候や災害、競合他社の影響など、外部要因によって売上が左右されるリスクが常に存在します。
ストックビジネスとは?
一方、「ストックビジネス」は、一度顧客との関係性を構築することで、継続的に収益が期待できるビジネスモデルです。長期契約やリピート購入を前提としたビジネスがこれに該当します。
携帯電話の通信料、電気・ガスなどの公共料金、ジムや塾の月会費、不動産の家賃などが伝統的な例です。新規で契約を結ぶと、解約されない限り一定期間の売上が見込めます。
さらに、近年急速に普及・進化したサブスクリプション(サブスク)モデルもストックビジネスの代表格です。定額料金を支払うことで、動画・音楽配信サービスの視聴、ソフトウェアの利用、化粧品や食品の定期宅配、さらには自動車やファッションアイテムの利用など、多種多様な商品・サービスが提供されるようになりました。
巨大IT企業アマゾンを支える「プライム会員」制度も、このストックビジネスの成功例として広く知られています。(※アマゾンの仕組みについては後半で詳しく解説します)
ストックビジネスの効果
『ストックビジネス』の最大の効果は、『収益の安定化とビジネスの持続可能性の確保』、そして『顧客データの蓄積と活用』と言えるでしょう!。
一度契約を結べば、一定期間の売上が見込めるため、安定した収益基盤を確立できます。これにより、将来の収益予測が立てやすくなり、新たな投資や事業展開といった戦略的な意思決定も行いやすくなります。
また、新規顧客の獲得数や解約率(チャーンレート)を把握・分析することで、ビジネス戦略の精度を高めることができます。
例えば、フィットネスクラブなどはこのモデルの典型です。会員数に基づいて収支を計画しますが、全ての会員が毎日施設を利用するわけではありません。利用頻度の低い会員も含め、月会費という形で安定した収益を得ています。
さらに、顧客との継続的な接点を持つことで、利用状況や嗜好といった貴重な顧客データを蓄積できます。このデータを分析・活用することで、サービスの改善、顧客ロイヤルティの向上、さらには新たなビジネスチャンスの発見にも繋がります。
ストックビジネスへの進化:多様化するモデルとテクノロジーの活用
かつてはフロービジネスが一般的と考えられていましたが、サブスクリプションモデルの爆発的な普及と進化により、ストックビジネスの可能性が広く認識されるようになりました。
現代のストックビジネスは、単に定額制でサービスを提供するだけでなく、以下のような特徴を持ち、進化を続けています。
- パーソナライズ化の進展: AIやビッグデータ解析を活用し、個々の顧客の趣味嗜好や利用状況に合わせたサービスやコンテンツを提供する動きが加速しています。
- 体験型・コミュニティ型へのシフト: 単にモノやサービスを提供するだけでなく、特別な体験や会員限定のコミュニティへの参加といった付加価値を提供するモデルが増えています。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)との連携: 企業全体のDX推進の中で、顧客接点のデジタル化やデータ活用基盤の構築とストックビジネスモデルが密接に結びついています。
- サステナビリティへの貢献: シェアリングエコノミーやリペアサービスなど、環境負荷を低減する持続可能なビジネスモデルとしても注目されています。
これらの進化は、企業にとって精神的な安定感だけでなく、変化の激しい市場環境における競争優位性と持続的な成長をもたらします。

精神的な安定感は、とても大切ですね。
例えば、従来のビジネスモデルでも、以下のようにストック型の要素を取り入れることが可能です。身近な例を4つ程紹介します。
- 美容院: 定額制のトリートメントパス、スタイリングし放題プラン、会員限定の先行予約や割引。
- 飲食店: 月額制のドリンクパス、会員限定の特別メニュー提供、定期的な食材宅配サービス。
- クリーニング店: 月額固定料金での利用回数無制限サービス、季節ごとの保管サービスと組み合わせた年間プラン。
- 喫茶店: コーヒー豆の定期購入サービス(こだわりの豆を毎月お届け)、月額制のコーヒー飲み放題プラン(リモートワーカー向けなど)。
このように、ストックビジネスは安定的な収益を確保する有効な手段なのです。来月の売上が読みにくい、あるいはより安定した事業運営を目指したいと考えるなら、自社のビジネスにストック型の要素をどのように導入できるかを検討することが非常に重要です。
ストックビジネス導入のポイント
では、ストックビジネスを導入し成功させるためには、何が大切でしょうか?下記に5つ紹介いたします。
- サービスの定額化・パッケージ化: 既存のサービスや商品を月額・年額制にしたり、複数回利用できる長期パッケージを提供したりすることで、安定した収益源を確保します。例えば、コンサルティングサービスを単発契約ではなく、月額顧問契約にするなどが考えられます。
- 魅力的な付加価値の提供: 単に料金体系を変更するだけでなく、ストック型モデルの契約者に対して、通常顧客にはない特別な価値を提供することが重要です。限定コンテンツの配信、会員限定イベントへの招待、専門家による個別相談、活発なオンラインコミュニティへのアクセス権などが挙げられます。
- 顧客ロイヤルティの醸成: ストックビジネスは、顧客と長期的な関係を築く絶好の機会を提供します。質の高いサービスを継続的に提供し、顧客の声に耳など定期的なコミュニケーションを通じて信頼関係を深めることで、顧客ロイヤルティを高め、解約率を低減させます。
- 顧客データの分析と活用: 収集した顧客データ(利用頻度、嗜好など)を分析し、サービスの改善、新たなニーズの掘り起こしに繋げます。データに基づいた意思決定が、ストックビジネスの成長を加速させます。
- 柔軟なプラン設定と導入の容易さ: 顧客が気軽に始められるような低価格の入門プランや、ニーズに合わせた複数の料金プランを用意することも有効です。また、契約プロセスや支払い方法を簡便にし、顧客にとっての導入ハードルを下げることが重要です。
では、最後に広告代理店が取り組むことができる具体的な『ストックビジネス』の例を、最新の動向を踏まえて見ていきましょう!
【2025年版】広告代理店のストックビジネス最新事例
変化の激しい広告業界においても、ストックビジネスの導入は事業安定化と競争力強化に不可欠です。従来のプロジェクトベースの収益構造から脱却し、継続的な価値提供を通じて収益を積み上げるモデルへの転換を考えてみるといいでしょう!
継続的な広告運用・コンサルティングサービス:
内容: クライアントのリスティング広告、SNS広告、動画広告などのデジタル広告キャンペーンを継続的に監視、分析、最適化し、パフォーマンスを最大化するサービス。月額固定料金や成果報酬型)で提供します。
コンテンツマーケティング・SEO支援サブスクリプション:
内容: ブログ記事、オウンドメディアコンテンツ、動画コンテンツ(YouTube等)、ポッドキャスト、ホワイトペーパー、メールマガジンなど、質の高いコンテンツを定期的に企画・制作・配信するサービス。SEO(検索エンジン最適化)などの施策も含みます。
デジタルマーケティング教育・トレーニングプログラム:
内容: 広告運用、SEO、コンテンツマーケティング、データ分析など、デジタルマーケティングに関する実践的な知識やスキルを学べるオンライン講座、ウェビナー、ワークショップ、オンラインサロンなどを会員制で提供します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)支援コンサルティング(リテイナー契約):
クライアント企業の中長期的なDX戦略の策定から実行までを、月額固定の顧問契約などで継続的に支援。マーケティング領域のDXに留まらず、営業プロセスのデジタル化、顧客管理システムの導入・活用支援なども含みます。
クリエイターエコノミー連携・インフルエンサーマーケティング運用代行:
企業と親和性の高いインフルエンサーやクリエイターを発掘し、中長期的なパートナーシップ(アンバサダー契約など)の構築を支援。コンテンツの共同制作、タイアップ投稿の企画・実行、効果測定までを継続的にサポートします。
これらのアプローチは、クライアントにとっては専門的で手間のかかる業務をアウトソーシングできるというメリットがあります。
そして、広告代理店にとっては継続的かつ安定的な収入源を確保することが可能になります。クライアントとの信頼関係を深化させ、長期的なパートナーシップを築く上でも極めて有効です。

ストックビジネスの意味を理解し、それを自身のビジネスにどのように応用できるかを絶えず戦略的に考えることで、広告代理店も新たな収入源が確保できるかもしれません。
アマゾンプライム会員とは? – 進化し続けるサブスクリプションの巨人
アマゾンのプライム会員は、アマゾンが提供する多様なサービスを定額料金(月額または年額)で利用できるサブスクリプション型のビジネスモデルの代表例です。数年前と比較しても、そのサービス内容はさらに拡充・進化しています。
プライム会員になることで利用できる主なサービス(2025年5月現在、内容は変更される可能性があります):
- 迅速で便利な配送特典: 対象商品のお急ぎ便、お届け日時指定便が無料で利用可能。
- Prime Video: 数多くの映画、ドラマ、アニメ、オリジナル作品などが見放題のストリーミングサービス。近年はスポーツイベントのライブ配信なども強化。
- Amazon Music Prime: 1億曲以上の楽曲やプレイリスト、ポッドキャストを追加料金なしでシャッフル再生で楽しめる音楽ストリーミングサービス。(一部オンデマンド再生可能なプレイリストあり)
- Prime Reading: 対象のKindle本(書籍、雑誌、漫画など)が読み放題。
- Amazon Photos: 写真を容量無制限でクラウドに保存できるオンラインストレージサービス(動画は5GBまで)。
- Prime Gaming: 毎月無料のPCゲームやゲーム内コンテンツ、Twitchチャンネルの無料サブスクリプションなどを提供。
- 会員限定先行タイムセール: Amazonが実施する大規模セール(例:プライムデー)に通常会員より早くアクセス可能。
- その他多数の特典: Amazonフレッシュ(生鮮食品の宅配)、Prime Try Before You Buy(衣料品の試着サービス)、ベビー用おむつとおしりふきの定期おトク便割引など、ライフスタイルに合わせた多様な特典。
これらのサービスは、個別に利用する場合と比較して非常にコストパフォーマンスが高く設定されています。また、プライム会員限定の割引や特典も多数提供されるため、プライム会員は非会員に比べてアマゾンでの購買頻度や購買金額が高くなる傾向にあります。
このビジネスモデルは、アマゾンにとって極めて重要な要素になっています。
- 顧客ロイヤルティの向上: 多様な特典により顧客の満足度を高め、アマゾン経済圏への囲い込みを強化。
- 顧客生涯価値(LTV)の最大化: 長期的な顧客関係を通じて、一人当たりの顧客が生み出す利益を増大。
- 安定的な収益源の確保: 会費収入が継続的かつ予測可能な収益となり、事業の安定性を高める。
- データ収集と活用: 会員の利用動向データを収集・分析し、さらなるサービス改善や新規事業開発に活用。
アマゾンプライムは、サブスクリプションモデルがいかに強力なビジネスドライバーとなり得るかを示す最良の事例の一つと言えるでしょう。
この記事が、あなたのビジネスにストックビジネスの視点を取り入れ、事業をさらに発展させるための一助となれば幸いです。