【値引き】と【値上げ】儲かるのはどっち?

売上をあげる方法

価格戦略が企業の利益を左右する

企業の売上を左右する大きな要因の一つが『価格設定』です。

  • 値引き(ディスカウント): 一時的な売上増加を狙う!
  • 値上げ(プライシングアップ): 利益率向上やブランド価値向上を狙う!

商品やサービスの販売を開始する際、市場調査や競合の価格状況を参考にしながら価格を決めます。しかし、設定した定価が永遠に維持されることはほぼありません。

  • 競合他社の『値引き合戦』
  • 販売店の『割引戦略』
  • 新規顧客獲得のための『フロント価格』(顧客を呼び込むための値引き)

こうした状況の中で、値引きはビジネスの現場で日常的に行われています。

しかし、本当に値引きは売上増加につながるのでしょうか?

 

本記事では『値引き』と『値上げ』の関係を、実際の数字を使って検証し、どちらが利益を最大化できるのかを。検証します!!

 

デフレ脱却とインフレ目標を踏まえた価格戦略

近年、日本経済は長らく続いたデフレからの脱却を目指し、インフレ目標(2%の物価上昇率)を掲げています。
これは、企業が適正な価格設定を行い、持続可能な成長を遂げるために重要な要素となっています。

値上げが求められる理由

  1. 物価上昇(インフレ)の流れ
    エネルギー価格や原材料費の高騰、人件費の上昇などにより、多くの企業がコスト上昇に直面しています。価格を据え置くと利益率が圧迫されるため、適正な値上げが必要です。
  2. 賃金上昇とのバランス
    政府や経済界は「賃上げ」を推奨しており、企業側も従業員の給与を引き上げる動きが出ています。利益を確保し、適正な賃金を支払うためには、無理な値引きを避け、値上げを行うことが重要です。
  3. 付加価値のある商品の需要増加
    「高品質」「サステナブル」「こだわりの逸品」など、消費者は単なる価格の安さよりも、価値の高さを求める傾向が強まっています。値上げを適切に行いながら、サービスや製品の質を向上させることが、ブランドの競争力向上につながります。

このように、単なる「安売り」ではなく、経済の流れを踏まえた「戦略的な価格設定」が企業の成長には不可欠なのです!

 

『値引き』と『値上げ』を数字で検証

分かりやすい例として、以下の条件を設定します。

基本条件(現状)

  • 販売数: 100個
  • 売上単価: 10,000円
  • 仕入単価: 8,000円
  • 利益: 2,000円/個

売上 100万円・仕入 80万円・利益 20万円

 

この数値を踏まえ、定価販売・値引き販売・値上げ販売のそれぞれにおいて、数値がどのように推移するのか?比べてみます!

 

値引きと値上げのケース

ケース 売価 販売数 売上 仕入 利益
現状 10,000円 100個 100万円 80万円 20万円
値引き(9,000円) 9,000円 120個 108万円 96万円 12万円 (-40%)
値上げ(12,000円) 12,000円 80個 96万円 64万円 32万円 (+60%)

→ 値引きにより販売数が1.2倍になっても、利益は40%減少

→ 値上げにより販売数が2割減少しても、利益は1.6倍に増加

このデータから、値引き戦略が利益を圧迫し、値上げ戦略が企業の利益を確保する可能性が高いことがわかります。

つまり、1000円値引いただけで、倍の200個を販売しないと、定価販売に追いつかないということになるのです!
※(売上)9,000円✕200個=¥1,800,000円。(仕入)8,000円✕200個=¥1,600,000円=20万の利益!

値上げ戦略の重要性

「値引きは麻薬」とも言われるように、一度値下げに頼ると、顧客は常に安さを求めるようになり、通常価格での販売が難しくなります。

さらに、値引きを続けることで営業社員の能力が低下するリスクもあります。

値引きばかりに頼ると、価格以外の魅力を伝える営業力が育たず、「値引きでしか売れない社員」を生み出してしまうのです。これが続くと、企業の利益率が低下し、ブランド価値も損なわれるリスクがあります。

このように、値引きは一時的な売上増加につながる可能性はありますが、長期的に見ると利益率を圧迫し、企業の成長を阻害するリスクがあります。

一方、適切な値上げを行うことで、利益を維持しながらブランド価値の向上や競争力の強化が可能になります。

また、現在の日本経済の状況を考えると、デフレ脱却と賃金上昇の流れに乗る形で、企業も適正な価格調整を行い、健全な利益確保を目指すべき時期に来ています。
消費者の価格に対する意識も変化し、「安さ」だけではなく「品質」「サービスの充実」への関心が高まっています。

したがって、単に価格を上げるのではなく、付加価値を提供し、価格以上の満足を顧客に届ける戦略が求められているのです!

 

まとめ

  • デフレ脱却の流れを受け、適正な値上げ戦略が企業に求められる時代
  • 値引きは短期的な売上増には有効だが、利益率低下やブランド価値の低下を招くリスクがある
  • 値上げは販売数が減っても利益を確保しやすく、ブランド価値の向上や優良顧客の獲得につながる
  • 値上げを成功させるには、付加価値の強化、ターゲットの見直し、ブランディングが重要

今後の価格戦略を考える際、安易な値引きではなく、「値上げによる長期的な利益最大化」の視点を取り入れていくのが大切です。

値引きを続けるのではなく、「価格を適正にすることで利益を確保し、ブランドを成長させる」ことが、これからの企業に求められる戦略だと思います。