動画を作りたいと思ったとき、最初に気になるのはやはり費用です。
「1本いくらですか?」
広告代理店でも、かなりよく聞かれる質問です。
ただ、動画制作には定価がありません。
10万円台で作れるものもあれば、100万円を超えるものもあります。
テレビCMや大規模なブランディング動画なら、数百万円、場合によってはそれ以上になることもあります。
なぜ、ここまで差が出るのでしょうか。
理由は単純です。
動画の長さではなく、「どこまで人と手間をかけるか」で費用が変わるからです。
撮影するのか。
既存素材だけで作るのか。
出演者を使うのか。
スタジオを借りるのか。
企画から任せるのか。
編集だけ依頼するのか。
ここで金額は大きく変わります。
今回は、2026年時点の動画制作費について、予算別に「何ができるのか」を整理します。
動画制作の相場は50〜100万円前後がひとつの中心
まず、現在の相場感から見てみます。
動画制作の発注データを公開している「動画幹事」によると、プロモーション動画の平均発注金額は103.5万円、中央値は75万円でした。
最も多かった価格帯は50〜100万円で、全体の36%を占めています。
| 制作費 | 割合 |
|---|---|
| 〜10万円 | 9% |
| 10〜30万円 | 18% |
| 30〜50万円 | 9% |
| 50〜100万円 | 36% |
| 100〜200万円 | 20% |
| 200万円以上 | 8% |
もちろん、この数字だけで「動画は75万円あれば作れる」と考えるのは危険です。
動画の種類によって必要な費用が大きく違うからです。
ただ、企業のプロモーション動画を外注する場合、
50〜100万円前後がひとつの現実的な中心価格帯
と考えるとイメージしやすいでしょう。
10〜30万円|既存素材を使ったシンプルな動画
比較的低予算で作りやすいのが、既存素材を活用する動画です。
例えば、
- 商品写真
- 過去に撮影した動画
- 会社案内の素材
- ストック映像
などを使い、テロップやBGMを加えて編集します。
新しく大規模な撮影をしなければ、制作費をかなり抑えられます。
向いているのは、
- SNS用短尺動画
- 簡単な商品紹介
- 営業資料用動画
- Webサイト掲載動画
などです。
一方で、映像のオリジナリティやブランド感を強く出したい場合には限界があります。
安く作る場合は、基本的に「新しく撮るものを減らす」と考えると分かりやすいです。
30〜70万円|簡単な撮影を入れた企業動画
30〜70万円くらいになると、撮影を含めた制作が現実的になります。
例えば、
- 社員インタビュー
- オフィス撮影
- 店舗紹介
- 簡単な商品撮影
- 採用動画
などです。
1日程度の撮影で、カメラマンやディレクターを入れ、編集まで行うイメージです。
会社紹介や採用動画など、企業が最初に作る映像としてはこの価格帯も多いでしょう。
ただし、出演者を増やしたり、複数ロケ地を使ったりすると、すぐに100万円を超えてきます。
70〜150万円|企画・撮影・演出までしっかり作る
一般的な企業プロモーション動画で、しっかり作り込むなら、このあたりがひとつの目安になります。
企画を作る。
絵コンテや構成を考える。
撮影場所を選ぶ。
カメラ、照明、音声スタッフを入れる。
ナレーションを収録する。
編集やカラー調整を行う。
こうした工程が増えてきます。
商品・サービス紹介やWeb広告、展示会映像などにも使いやすい価格帯です。
プロモーション動画の平均発注額が約100万円というデータとも重なります。
150〜300万円|ブランド表現や演出までこだわる
150万円を超えてくると、単なる説明動画ではなく、表現そのものに力を入れやすくなります。
例えば、
- 複数日の撮影
- 複数のロケ地
- モデルや役者の起用
- スタジオ撮影
- 美術セット
- CGや高度なモーショングラフィックス
などです。
ブランドムービーや企業CMなど、「見た人に強い印象を残すこと」が目的なら、この価格帯以上になるケースも珍しくありません。
制作会社だけでなく、プロデューサー、ディレクター、撮影監督、美術、照明、ヘアメイクなど、関わるスタッフが増えるほど費用も上がります。
300万円以上|CMや大規模なブランド動画
テレビCMや大規模なブランディング映像では、300万円以上になることも珍しくありません。
ここから先は上限を決めにくい世界です。
有名タレント。
大規模セット。
海外撮影。
特殊撮影。
CG。
複数日のロケ。
これらが加われば、制作費は数千万円規模になることもあります。
ただし、ここで注意したいのは、
テレビCMだから必ず高額になるわけではない
ということです。
シンプルな撮影や既存素材中心のCMなら、制作費を抑えることもできます。
逆にWeb動画でも、有名タレントや大規模ロケを使えば高額になります。
費用を決めるのは媒体ではなく、制作内容です。
動画制作費は何にかかっているのか
見積書を見ると、さまざまな項目が並びます。
主なものは次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企画・構成 | 企画、構成、シナリオ、絵コンテ |
| ディレクション | 制作全体の進行・品質管理 |
| 撮影 | カメラ、照明、音声、機材 |
| ロケーション | スタジオ、施設使用料、撮影許可 |
| 出演者 | モデル、役者、タレント |
| 編集 | 映像編集、テロップ、CG、カラー調整 |
| 音 | BGM、ナレーション、MA |
ここを理解すると、見積もりが高い理由も分かりやすくなります。
費用を大きく左右するのは「尺」より撮影と演出
動画制作について、
「15秒なら安く、3分なら高い」
と思われることがあります。
しかし、必ずしもそうではありません。
15秒のCMでも、大規模なセットを作り、タレントを起用して3日間撮影すれば高額です。
一方、5分のインタビュー動画でも、1か所で撮影し、シンプルに編集するだけならそれほど高額にはなりません。
動画の長さより、撮影規模と演出の作り込みの方が費用への影響は大きいです。
撮影許可や安全管理にも費用がかかる
映像制作で意外と見落とされるのが、撮影そのもの以外の作業です。
例えば街中で撮影する場合。
好きな場所へ行って、そのまま撮影できるとは限りません。
施設管理者との調整。
道路使用・占用など必要な許可の確認。
通行人の映り込み。
撮影場所の安全管理。
場合によっては警備員やエキストラも必要になります。
こうした部分は完成映像には映りません。
しかし、広告として正式に使用する映像だからこそ必要になる仕事です。
制作会社の費用には「映像を撮る技術」だけでなく、「問題なく撮影を成立させるノウハウ」も含まれています。
安い制作会社と高い制作会社は何が違う?
同じような動画を依頼しても、制作会社によって見積もりがかなり違うことがあります。
高い会社だから必ず良いとは限りません。
逆に、安い会社だから悪いとも限りません。
ただし、価格差には理由があります。
例えば、
- 企画をどこまで考えるか
- 撮影スタッフの人数
- 使用する機材
- 撮影前の準備
- 修正対応の範囲
- 著作権・肖像権の管理
- 進行管理
などです。
単純に金額だけ比較すると、必要な工程まで削ってしまう可能性があります。
AIで動画制作費は安くなる?
2026年の動画制作では、AIも大きな変化です。
画像生成。
動画生成。
ナレーション。
字幕。
編集。
こうした作業の一部はAIでかなり効率化できます。
そのため、以前なら撮影や制作が必要だった動画を、素材とAIだけで作れるケースも増えています。
特に、
- SNS用短尺動画
- 説明動画
- 大量にパターンを作る広告
などは制作コストを下げやすいでしょう。
一方で、ブランドムービーやタレント撮影、商品の質感を正確に見せる映像など、実写撮影そのものに価値がある仕事は残ります。
今後は「全部AI」か「全部プロ撮影」ではなく、必要な部分だけプロに頼む使い分けが増えると思います。
見積もりで必ず確認したいこと
複数社から見積もりを取る場合、合計金額だけを比べない方がいいです。
特に確認したいのは、
- 企画・構成は含まれているか
- 撮影日数は何日か
- 出演者費用は含まれているか
- スタジオやロケ地費用は含まれているか
- ナレーションやBGMは含まれているか
- 修正は何回までか
- 縦型・短尺など別バージョン制作は含まれるか
- 二次利用の範囲に制限がないか
です。
例えば100万円と70万円の見積もりでも、100万円の方にはSNS用の短尺版まで含まれているかもしれません。
「何が含まれている100万円なのか」を比較する必要があります。
予算を抑えるなら「目的」を先に決める
動画制作費を抑える一番良い方法は、安い制作会社を探すことではありません。
何のために動画を作るのかを先に決めることです。
例えば、展示会のブースで流すだけなら、映画のような映像は必要ありません。
SNS広告で3秒以内に興味を持ってもらうのが目的なら、3分の企業紹介動画を作る必要もありません。
逆に企業ブランドを長期間支える動画なら、少し予算をかけても丁寧に作った方がいいでしょう。
目的が決まれば、削っていいところと削れないところが分かります。
まとめ|動画制作費は「いくら」より「どこまで作るか」で決まる
動画制作費には定価がありません。
10万円台で作れる動画もあります。
企業プロモーション動画なら50〜100万円前後がひとつの中心です。
撮影や演出を本格的にすれば100万円を超えます。
タレント、大規模ロケ、CGなどを使えば数百万円以上になることもあります。
だから、
「動画1本はいくらですか?」
だけでは答えが出ません。
どんな目的で、誰に見せ、どこまで作り込むのか。
ここを決める必要があります。
そして2026年は、AIによって安く作れる部分も増えています。
その一方で、企画、撮影、演出、現場管理など、プロへ頼む意味がある仕事も残っています。
安く作ることが正解なのではなく、必要な部分にだけお金をかける。
動画制作では、その考え方が一番重要だと思います。

