広告代理店の組織は、多岐にわたる業務を担うために多様な部署で構成されています。
本記事では、広告代理店における主要な組織構成と、その役割について詳しく説明します。
大手広告代理店の主な組織構成
大手広告代理店では、以下のような部門が存在します:
- アカウント(営業)部門:クライアントとの窓口として売上を担う部署。
- メディア部門:テレビ・新聞・雑誌・デジタルなどの媒体を管理。
- クリエイティブ部門:広告の企画・制作を担当。
- マーケティング部門:市場調査や分析を行い、戦略を立案。
- プロモーション部門:イベントや販促活動などを展開。
- コーポレート部門:総務・経理・人事・広報など、企業運営を支える基幹部門。
- 直轄組織(経営企画・海外統括など):経営陣に近い立場から組織を支える部門。
経営企画や直轄部門の役割とは?
大手広告代理店では、経営戦略の中枢を担う「経営企画室」や、グローバル展開を見据えた「海外統括部」などが設置されています。
特に経営企画室は、全社の方向性やリソース配分に関する意思決定支援を行います。中小規模の代理店においては、役員直下の立場で幅広い業務をこなすこともあり、実務面の柔軟性が求められます。
また、海外統括部は、日本市場の成熟化に伴い重要性を増しています。広告主のグローバル進出に呼応し、海外の現地法人や提携先との調整、戦略立案を行う部門です。
日本と海外で異なる「アカウント局」の仕組み
広告代理店において「アカウント」は、一般企業でいうところの営業部にあたります。
海外の代理店では「1業種1社制」が基本であり、例えばある代理店がGMの仕事をしていれば、フォードの案件を受けることはありません。
しかし日本では、同一代理店内で複数の競合企業(例:トヨタ・日産・ホンダなど)と契約しているケースもあります。
この背景には、日本の広告業界がメディア主導で形成された歴史があり、メディア枠を広く流通させるために「1業種複数社」の形が一般化した事情があります。
近年では、グローバルクライアントとの取引が増える中で、日本でも1業種1社制が浸透していく可能性があります。
メディア部門は広告代理店の心臓部
広告代理店の売上の多くは、メディアバイイング(媒体購入)により成り立っています。メディア部門は以下のような部署で構成されます:
- テレビ局
- ラジオ局
- 新聞局
- 雑誌局
- インタラクティブメディア(Web・SNS広告)
- OOH局(交通広告・屋外広告など)
メディア部門は、営業部門と連携してクライアントニーズに応える広告枠を設計・提案するほか、媒体社との折衝や情報収集も担います。
特に、インタラクティブメディアの成長により、デジタル系専門部署の重要性は年々高まっています。
進化するデジタル・インタラクティブ部門
インターネット広告の急成長により、多くの広告代理店がインタラクティブメディア部門を新設・拡大しています。
Web広告、SNS運用、アドテクノロジー領域の専門知識が必要となるため、大手では関連会社を設立したり、社内カンパニー制で独立運用しているケースもあります。
中小代理店では、限られたリソースの中で「どの領域に集中投資するか」が競争力の鍵となるでしょう。
クリエイティブ/プロモーション部門の現在と未来
クリエイティブ部門は、広告表現の中核を担います。
- コピーライター:言葉でブランドの魅力を伝える。
- CMプランナー:映像表現を企画立案。
- アートディレクター・デザイナー:ビジュアル全般を設計。
プロモーション部門は、体験価値を通じて商品認知・購買を促進する役割を果たします。
店頭販促・サンプリング・イベントなどの施策が中心でしたが、現在はOtoO(Online to Offline)施策やデジタル連携も重視されており、今後も進化が期待されます。
中小広告代理店における「選択と集中」の重要性
大手代理店がフルラインの組織体制を構える一方で、中小代理店では選択と集中が欠かせません。
たとえば「デジタル特化型」「プロモーション専業」「メディアに強い代理店」など、自社の強みを明確化し、専門性を磨く戦略が重要です。
限られた人材・資源の中で、どの部門に注力するかが経営の成否を分けるといっても過言ではありません。
まとめ:広告代理店組織はこう変わる
広告代理店の組織は、社会やテクノロジーの変化に応じて進化を続けています。
今後は、インタラクティブメディア部門をはじめとしたデジタル領域の比重がさらに高まり、組織体制そのものが再構築される流れが続くでしょう。
中小代理店ほど「強みの明確化」と「選択と集中」が生き残り戦略の鍵になります。

広告代理店の組織構造は一見複雑に見えますが、それぞれの部門が明確な役割を担い、全体としてクライアントの課題解決に貢献しています。今後は、その柔軟性と専門性のバランスが求められる時代へと突入していくでしょう。